コラム

2012-12-03

ITコンピタンシーをもつ経営者

●情報技術の進展は、留まるところがないように思えます。インターネットの技術も単純な電子メールから、革新的なウェブブラウザの技術、そして最近では、Web2.0やクラウドコンピューティングという新しい言葉が出現し、その実態を理解するのに苦労するこの頃です。しかし、このような急激な情報技術革新の流れに追いつかなければ、企業の優位性を保てない世界になりつつあることも、現実ではないでしょうか。情報技術、すなわちIT技術は、企業経営にとって非常に重要な位置を占めてきていると思います。

●先日、ある調査の目的で資本金7000万円、従業員120名程のものつくり企業の経営者にお会いする機会がありました。この会社は、いわゆる日本のお家芸であるプレス金型のトップメーカーの地位を築いており、早い時期から、顧客の製造拠点の海外移転に対応して、海外工場を構築していった企業です。業績も優秀で、経営者の強いリーダーシップのもと、ものつくり企業として素晴らしい経営が行われています。

●経営者の考え方を拝聴すると、とにかく「新しい技術に挑戦すること」「あらゆる部分を徹底して差別化すること」をしないかぎり、中堅・中小企業の生き残りはない、とおっしゃいます。そのような徹底した経営者の考え方が、金型産業のような、近年とみに国際競争環境が激しくなってきた業界においても、ニッチ・トップの位置を確保し、生き残ることができる所以なのでしょう。

●通常のものつくり企業の場合、大抵はそのコアコンピタンスとして、現場の職人技、すなわち技能の優秀さと蓄積をあげますが、この企業の場合、そのような技能に加えて、早い時期からのIT技術の活用があることが特徴です。

●手元に、この経営者からいただいた、この企業のIT化の歴史を記した文書がありますが、それを見ると、1980代の比較的早い時期から業務用のコンピュータが導入され、それが現在の企業内の情報システムに進化した様子が見て取れます。初期には、市場に出始めたパソコン(PC9801)で、自社における金型の見積もり計算、加工費の実績計算という単純な機能を自社開発しています。その経験をもとに、オフコンを導入し経理などのバックオフィスのIT化を実施。また、同時期に生産管理システム、販売管理システムを導入しています。

●1990年代半ばには、オフコンを捨て、Windowsの出現を機にパソコンにシステムをリニューアル。また企業内の情報共有化を推進するために、SQL-Serverの導入によるデータベースの整備やグループウエアを導入しています。そして、本社、工場間を専用線にてネットワーク化を実施。最近はインターネット回線に変更し、全社のより高度な情報化を積極的に推進しています。また、金型メーカとして自社CADシステムを開発し、設計のデジタル化にも積極的に取り組んでいます。

●社長さんの言では、「社内のITインフラを整え、情報の共有化やスピード化に早い時期から力をいれている」とのこと。特に、情報共有化の面では、役員・幹部の行動予定、営業の打合せ記録、会議の議事録、掲示板、出張伺いなどが各自のパソコンで見ることができ、ペーパレス化を促進しているといいます。また、自社のホームページ、ホームページを用いたインターネットビジネスなども行っているようです。このような取り組みは、大企業では、早い段階から実施されてきましたが、この企業のような規模の会社が技術の出現とともにかなり早い時期から取り組んできたことに、驚きを感じます。

●なぜ、そのような取り組みができたのか。それは、経営者がIT技術に造詣が深く、トップダウン的にITインフラ整備が行われたのが理由のようです。すなわち、経営者のITコンピタンシー(能力)が高く、絶えず新しい技術を社内に導入し、自社のものに出来たことが、金型製造企業の中でも、他社を制して、トップ企業になれた要因の一つといえましょう。

●「あらゆる観点から競合する他社と差別化をおこなう」とは社長さんの言葉です。IT技術は、差別化の重要な要因であり、それを実現するのが経営者のITコンピタンシーとすれば、この企業の例は、「IT技術を制するものが、他社を制する、」とのベスト・プラクティスだと言えましょう。

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 馬塲孝夫  BAMBA takao
 ティーベイション株式会社 代表取締役社長
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