コラム

2015-03-13

アカペラコラム7〜音域と音量の話〜

 モーリス・ラヴェル作曲の「ボレロ」という曲があります。「ボレロ」とは元々はスペイン発祥のダンス音楽ですが、今日ではこのラヴェルの「ボレロ」の方が有名かも知れません。題名は知らずとも誰もが一度は聴いたことがあると思いますが、この曲にはいくつかの特徴があります。まず、最後の僅かな部分を除いて、たった2つのメロディがひたすら繰り返されること、そして曲全体がひとつの大きなクレッシェンド(徐々に大きくなること)で出来ている、などです。
 冒頭、ほとんど聴き取れないほど小さな小太鼓と弦楽器のリズムから始まって、それが次第に大きくなり、終局ではあらん限りの大音量で曲を閉じます。例えばカーステレオや歩きながらイヤホンなどで聴こうものなら、最初は全く聴こえず最後は鼓膜が破れる(かもしれない)という、全くもってBGMには不向きな曲といえましょう。

 さて、この「ボレロ」ほどではないにせよ、一般にクラシック音楽はダイナミック・レンジ(音量の幅)が大きいものです。それに対してポップス、特に近年のものはダイナミック・レンジが非常に狭い範囲に設定されています。ごく端的に言えば「小さな音がない」ということですね。たとえ歌手がささやくように歌っていても、それは耳元で(更に言うなら鼓膜のすぐ前で)ささやいているような作りになっています。無音〜最大音量を0〜10とすると、現在耳にするポップスの多くはおよそ8〜10の範囲で作られているそうです。非常に狭い。こうなるともう「ダイナミック・レンジ」とはいえないような気もしますね。どちらが良い悪いというより、現代のライフスタイルでは、部屋の大きなステレオよりも携帯端末やカーステレオなどで聴く機会の方が多いだろうということで、このように作るわけです。

 音量と同じく、音域というものにも幅があります。上はいわゆる「超音波」から、下は「超低周波」までということですが、これについても、ある音域を削ったり足したりということが可能です。近年すっかり見かけなくなりましたがMD(ミニディスク)というものがありました。CDに比べて随分コンパクトでしたが、あれはあのサイズに情報を収めるために、人間に聴こえない音域を省いてあるそうです。イヤホンなどで聴く分にはあまりわかりませんが、大きなスピーカーで聴き比べると確かにCDよりも音が「薄っぺらい」感じがします。聴こえない音域とはいうものの、認識できないというだけで、実はけっこう聴こえているのかも知れませんね。

 逆にこの「聴こえない音域」を意識的に利用した怖い例もあります。大戦前のナチスです。
 ヒトラーの演説は夕方にされることが多かったそうですが、この時演壇の下部に仕込んだスピーカーから耳には殆ど聴こえない「超低周波」を流しながら演説したといいます。
 極端に低い音には、人を一種の催眠状態にする効果があります。ハードロック系のライヴなどでは限界まで増幅されたベースやドラムの低音を体に受け続けることで「音に酔う」ということもあります。アルコールと同じく悪酔いするわけです。日本の盆踊りでも櫓の上で大太鼓を叩きますが、延々と続く踊りの列や、皮膚に直接響いてくる大太鼓の振動、これらは「集団催眠」のための条件を満たすことになります。踊り続けるとハイになってくるというのは、一種の催眠状態になっているわけですね。
 ヒトラーの話に戻れば、時間帯は人々が仕事を終えて疲れている(判断力が落ちている)夕方、そこに密かに流される超低音、知らず知らずの内に誘導されてゆく群衆・・・・想像すると怖いですね。「音」の利用法にも色々ありますが、やはり平和や幸福につながるものであってほしいものです。

 では今回はこの辺りで。

 Be in Voices リーダー  泉かずしげ

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