育ちの空間を考える保育園設計のプロ
コラム
公開日: 2012-12-18
日々の雑感:美しい表現
わたしの娘「おんちゃん」は美しい2歳児である。言うまでもなく容姿はかなり美しいのだが、その言動はさらに美しい。
「おんちゃん」は、私と風呂に入るのが大好きである。彼女にとって風呂は水遊び用のプールであると考えられている(であるから、なかなか湯を使わせてくれず、シャワーからは冷水のみが出される。はっきり言って困っている。冬も間近に迫りどうすればいいのか悩んでいる)。彼女の愛用品は黄色い樹脂製の柄杓である。湯船の湯をたくさん掬いたいときには、口や鼻が浸かる寸前まで柄杓を持った手を底の方へ伸ばし、渾身の力を込めて、できる限り深いところから掬い上げようとする。当然のことながら、深く掬おうが、浅く掬おうが、柄杓に入る湯量は物理的には同じなのだが、そうすると、たくさん掬えるような気になるのだろう。実に美しい。垢の浮いた水を掬っているだけで、それだけで彼女は美しい。
また「おんちゃん」は、いくつかの言葉の意味を誤って理解している。その中でも特に美しいのは、「高い」という言葉の意味を「遠い」ということだと誤解していることだ。『○○高いな』と言えば、それは『○○は遠いところにあるな』というほどの意味になる。彼女の眼の高さから見れば、地面以外の多くの物体は、自分より高いところにあって、遠いも高いも同じなのかもしれない。実に美しい。言葉の意味を間違っているだけなのである。その間違い方が美しい。この先夢見るであろう彼女の将来は、たぶん「遠く」にあるのではなく、「高く」にあるのだろう。
人の成長とは、この美しさを失っていくことなのかもしれないが、それでも夢だけはいつまでも失わず、「高く」に登っていってほしいと願う。
子どもたちは、彼らが存在すること自体、ただそれだけで美しい。わたしは、そんな美しい子どもたちに係わる仕事をさせてもらっていることを誇りに思う。そして同時に重い責任を感じる。彼らのためにもっとがんばろうと思う。
(大塚謙太郎)
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