大塚謙太郎

おおつかけんたろう

ちびっこ計画・大塚謙太郎一級建築士事務所

[ 大阪市生野区 ]

職種

コラム

 公開日: 2013-04-25  最終更新日: 2014-05-23

日々の雑感:変わらないもの

先日、仕事の都合で斑鳩方面へ出かけた折、法隆寺に立ち寄り、遠足の中学生にまじって久しぶりに参詣した。言うまでもない世界最古の木造建築群である。推古天皇の世に聖徳太子の発願で建立されて以来、1400年の月日が流れた。「五重塔」や「夢殿」も素晴らしいが、私は西院伽藍の「廻廊」が大好きである。シルクロードを通じてギリシアより伝わったとされる中央部にふくらみを持たせた「エンタシス」の列柱と、大きな連子窓が、抱擁感と開放感との間で絶妙なバランスを保っている。突然話が変わるが、私は抱き枕が好きである。そのせいもあってか、丸太の柱も好きで、見るとつい抱きついてしまう。中学生がバスガイドのお姉さんの話を聞いている隙に、こっそり抱きついてきた。


 木と土でできた建物を、高温多湿の風土で1400年もの間まもり続けてきた日本人の心に、ただ感嘆する。身太い柱は、良く見ると根元などに「接ぎ木」のあとがあまた見受けられる。傷んだ部分をその都度切り取って、新しい材料に入れ替えているのである。スクラップアンドビルドを否定するためにメンテナンスフリーを考えだした現代の思想では、とても真似のできない所作である。法隆寺は1400年ものあいだ、それぞれの時代の人たちの手によって守られ、その美しい姿を変えることなく存在し続けてきた。
 このところ、木造の保育所を設計させていただく機会が増えてきた。国が、木造の公共建築を推進しているという事情もある。木造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べ、傷みやすいことは否定できない。しかし法隆寺を見ればわかるように、適切なメンテナンスを施せば、1400年とはいかないが寿命を延ばすことができる。
 私が法隆寺を訪れたのはこれで3度目である。1度目はやはり中学校の遠足で、2度目は建築学生時代の仲間とだった。たとえば、小説が読む時期々々で印象が変わるように、建築もまた同じである。それ自身が何も変わらないからこそ、変わっていく自分に違った言葉を投げかけてくれる。
 変わらないものを大切にしていきたい。
(大塚謙太郎)

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