大塚謙太郎

おおつかけんたろう

ちびっこ計画・大塚謙太郎一級建築士事務所

[ 大阪市生野区 ]

職種

コラム

 公開日: 2013-06-25 

日々の雑感:保育園は迷惑か

 ある児童公園の隣に住む高齢者が、公園で遊ぶこどもたちの声が喧しいと、市役所に再三にわたって訴えたところ、役所は「声を出して遊ばないように」との立札を建てた。やがてその場所では誰も遊ばなくなった。公園で黙って遊べというのは、かなり無理な注文である。喋らずに電話しろと言うのに近い。
 ある保育学の大家が、その高齢者にインタビューしたところ、「昔はこどもの声は気にならなかった。」そうで、その理由は、「誰が遊んでいるかが声でわかったから」だという。ここに大きなヒントがある。
 声の主が誰であるのかがわかれば、こどもの声は騒音ではなくなるのだ。大きな声ではあるのかもしれないが、声の主を想像して孫を思いやるような気持ちになれるのだという。先日開催された、こども環境学会東京大会のシンポジウムで耳にした話である。

 こういった苦情の話は、保育園を設計すれば必ずついてまわるので、私たちはそれを予測して設計する。臭いが気になりそうな場合は、調理室の排気の位置はできるだけ園庭側や屋上へ持っていき、それができない場合は消臭装置を取り付ける。音が気になりそうな部分には、防音サッシを取り付ける。近隣のプライバシーが気にりそうな場合は、目線を外して窓をあける。路上駐車対策で、時には保育面積を犠牲にして駐車場や駐輪場を確保することもある。
 先日竣工した保育園では、建物の配置をロの字型にして中央に中庭型の園庭を配し、あらゆるものを中庭に向けた。園舎が園庭を囲んでいるので、臭気や声、砂埃等も敷地外へは漏れにくい構造である。そして屋外遊戯場をギリギリまで切り詰めて、駐車場を確保した。ここまでやっても不十分だと言われるのが、こどもたちが置かれている現状なのである。とても悲しい事実だが、多くの場所においてこどもたちは歓迎されていない。
 前述の高齢者が、常軌を逸しているのは明らかなのだが、それを言っても解決にはならない。
 私たち設計者ができるのはハードだけである。そして不十分なハードを補うのはやはりソフトである。餅つきに近隣住民を招待したり、週末に近隣の高齢者を招いて給食会を開いたり、園で作った焼き芋を配ったりと、多くの保育園が、それぞれのやり方で丁寧な近隣への気配りを行っておられる。

 保育園と近隣との濃密なコミュニケーションが、やはり一番の近道ということか。

(大塚謙太郎)

この記事を書いたプロ

ちびっこ計画・大塚謙太郎一級建築士事務所 [ホームページ]

一級建築士 大塚謙太郎

大阪府大阪市生野区勝山北3-2-25 いたやビル303号室 [地図]
TEL:06-4965-4365

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
実績(新築)
東喜連保育園

土間スペースのある玄関や、コーナー保育向けの大広間などの大面積のお部屋と、スヌーズレンや押入下や階段下のかくれがコーナーなどの小部屋を設け、気持ちに応じて居...

実績(改修)
てしま保育園

床面積を増やさずに保育室を拡張し、定員を増やしたプロジェクトです。こどもたちが生活しながらの改修となりましたので、騒音・振動・塵埃等などに留意しながらの慎重...

 
このプロの紹介記事
大塚 謙太郎(おおつか けんたろう)さん

こどもたちの育ちの空間を保育士の先生方とともに考えます(1/3)

 JR環状線の「桃谷駅」の東約500mにあるビルの3階が「ちびっこ計画・大塚謙太郎一級建築士事務所」です。杉やヒノキ、漆喰(しっくい)など天然素材を多用したロフト風のオフィス。そこで代表の大塚謙太郎さんは「私たち、ちびっ子計画は保育園の設計...

大塚謙太郎プロに相談してみよう!

読売新聞 マイベストプロ

先生方との対話を通して保育方針に沿った保育園を設計する

事務所名 : ちびっこ計画・大塚謙太郎一級建築士事務所
住所 : 大阪府大阪市生野区勝山北3-2-25 いたやビル303号室 [地図]
TEL : 06-4965-4365

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

06-4965-4365

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

大塚謙太郎(おおつかけんたろう)

ちびっこ計画・大塚謙太郎一級建築士事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
「保育園設計者の挑戦」
イメージ

 保育園をはじめとする、こどもたちのための建築を手掛ける全国の有志で結成したチーム「わいわい子ども広場」が...

[ 保育園設計の考え方 ]

『あたらしい働く理由をみつけよう What is your salary?』
あたらしい働く理由をみつけよう

『あたらしい働く理由をみつけよう What is your salary?』というタイトルの本が16日、いろは出版から発売されます...

[ お知らせ ]

おすすめの本: 『あなたが変える室内遊び』
イメージ

 筆者は、都内の区立保育所の保育士として、様々な遊具の研究と実践を行い、退職後、遊びの環境づくりアドバイザ...

[ おすすめの本 ]

おすすめの本:『虫眼とアニ眼』
イメージ

 本文もさることながら、巻頭口絵がおもしろい。「養老さんと話してぼくが思ったこと」と題した宮崎氏の絵が...

[ おすすめの本 ]

日々の雑感:プラッチックトロンボーン
イメージ

私のトロンボーン歴は26年で、実は建築歴より長い。ここ2年ほど、忙しさに感けて御無沙汰しているところに先日発見...

[ 日々の雑感 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ