コラム

 公開日: 2018-06-20 

2016年に施行されたブラック企業公表の法令について

「ブラック企業」が社会的問題として取り上げられるようになって、ずいぶんと時間が流れました。この間、厚生労働省は、「ブラック企業」に対し、社会的制裁を与えるために、「ブラック企業」を公表する取り組みを始めました。この記事では、この取り組みの内容について詳しく解説します。

厚生労働省が「ブラック企業」への是正指導と公表を行う

「ブラック企業」とは、どのようなものか今一度振り返っておきましょう。

厚生労働省は「ブラック企業」にある一般的な特徴を次のように記述しています。

「①労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す」
「②賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い」
「③このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う」

要するに、違法労働が常態化しているだけでなく、過度なプレッシャーを日常的に受ける環境にある職場が「ブラック企業」と言えるでしょう。

「ブラック企業」が社会問題化するなかで、この事態を重く見た厚生労働省は、違法な長時間労働や過労死などが複数の事業場で認められた企業名を公表する制度を、2016年に設けました。

これは、2016年12月26日に開催された「第4回長時間労働削減推進本部」において、「過労死等ゼロ」緊急対策として新たに決定されたものです。

これにより、違法な長時間労働などを複数の事業場で行う企業に対する全社的な是正指導や2015年5月から実施されている是正指導段階での企業名公表制度の強化などが行われることになりました。

労働基準諸法令に違反した企業の経営トップを直接指導

さて、この取り組みはどのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。

これは、各都道府県労働局長または労働基準監督署によって行われており、複数の事業場を有する社会的に影響力の大きい企業に対して、労働環境の改善を積極的に働きかけていくものです。

とはいえ、指導による強制力だけでは、長期的な労働環境の改善は見込めません。労働環境を抜本的に変えるためには、経営トップが自社の状況をしっかりと理解して自ら率先して全社的な早期是正に取り組むことが大切です。

そこで、取り組みの内容となっているのが「署長による企業の経営幹部に対する指導」と「局長による企業の経営トップに対する指導及び企業名の公表」です。

「署長による企業の経営幹部に対する指導」において、対象となるのは、概ね1年程度の期間に2箇所以上の事業場で、下記のいずれかに該当する実態が認められる企業です。少し長くなりますが、重要なので厚生労働省の資料から引用して紹介します。

1.監督指導において、1事業場で10人以上または当該事業場の4分の1以上の労働者について、①1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められること、かつ、②労働基準法第32・40条(労働時間)、35条(休日労働)または37条(割増賃金)の違反であるとして是正勧告を受けていること。

2.監督指導において、過労死等に係る労災保険給付の支給決定事案の被災動労社について、①1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められ、かつ、②労働時間関係違反の是正勧告または労働時間に関する指導を受けていること。

3.上記1または2と同程度に重大・悪質である労働時間関係違反等が認められること。

公表されたときの悪影響は計り知れない

違法労働が見受けられる場合、上記で解説した署長による指導が行われ、それでも改善されないときに「局長による企業の経営トップに対する指導及び企業名の公表」が行われます。

この対象となると、違反企業の代表取締役などの経営トップは本社管轄の労働局へ呼び出され、局長による指導を受けます。その後、企業名のほか、長時間労働を伴う労働時間関係違反の実態や局長から指導書を交付したこと、当該企業の早期是正に向けた取り組み方針が公表されます。

この取り組みにより、2016年10月から2017年3月の間に「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として公表された企業は334社。違反法条は、労働基準法のほか、労働安全衛生法や最低賃金法、クレーン等安全規則など、多種多様です。業種も建設、広告代理店、運輸など、多岐にわたっています。ここで公表された企業のなかに過労死事件を起こした電通の名前も含まれています。

公表による社会的影響はかなり大きいと見られます。取引先の信用失墜につながることはもちろん、従業員の定着や新規採用にも悪影響を与えかねません。

また、従業員のモチベーションが落ちる恐れもあるでしょう。掲載期間は、公表日から概ね1年間。厚生労働省のホームページに掲載を続ける必要性がなくなったと認められる場合は、速やかに企業名が削除されることになっていますが、このような状況に陥らないよう、日頃から労務管理に注意しておきたいものです。

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