コラム

 公開日: 2016-03-17 

女子プロゴルファーが試合中に人命救助!

ロサンゼルスタイムズにも掲載された実話です。

月曜日の予選会に参加していたメアリープロ

1988年5月16日月曜日、アリゾナ州フェニックスにあるムーンバレー・カントリークラブでは、おだやかな天気とは裏腹に熾烈な女の闘いが繰り広げられていた。
週末に開催される高額賞金試合「サマリタン・ターコイズ・クラシック」の本選出場に向けて117人が、わずか20の椅子取り合戦にしのぎを削っていた。

賞金ランキング100位にも手の届かないメアリー・ベア・ポーター選手もその中の一人。
13番ホールまでのメアリーは、可もなく不可もなくという2オーバーの成績だった。
メアリー・ベア・ポーター
すでにメアリーは30歳を超え、バージニア州ネルソン郡の小さなコースに所属プロとして就職していたが、ツアー参加の夢は捨てがたく、機会を見てはマンデーゲーム(ツアー予選会)に挑戦してきた。

さて、13番ホールのティーショット。
ボールは少し曲がって左のラフに飛び込んだ。

ピンまで160ヤード。7番アイアンに持ち替えて構えたそのとき、正面の彼方に黒い帽子で黒い服の男が、着の身着のまま、今まさに庭にある屋外プールめがけて飛び込む姿が見えた。

「あら、アーミッシュの男が泳いでいるわ。へんなの、アーミッシュは洋服のまま泳ぐのかしら」とメアリーは思った。
アーミッシュ
「アーミッシュ」とはドイツ系移民の宗教集団で、移民当時の生活様式を保持し、農耕や牧畜によって自給自足生活をしていることで知られる。原則として現代の技術による機器を生活に導入することを拒み、電気を使用せず、電話など現代の一般的な通信機器も家庭内にはない。服装は極めて質素。子供は多少色のあるものを着るが、成人は決められた色のものしか着ないと言われている。

コース沿いにある家のプールで子供が溺れている!

そして次の瞬間、飛び込んだ男の前方に3歳ぐらいの男の子が背中を見せて浮かんでいるのにメアリーは気づいた。
「なんてこと!」
7番アイアンを持ったまま、プールめがけて走り出した。
後ろからキャディーのウェインも追いかけてくる。

黒い服の男は子供をプールから引き上げ、何か叫びながら激しく体を揺さぶったが、首がぐらぐらするだけで生きているように見えなかった。
ムーンバレーカンツリークラブ 13番ホール
コースから飛び出した彼女は、2メートルもの鉄線でできたフェンスにしがみつき乗り越えようとしたが、気ばかり焦って体が動かない。
ウェインが足を押し上げ、ようやく向こう側へ乗り越えることができた。腕と足から血がにじみ出ていたが、彼女はプールサイドまで走り続けて叫んだ。
「早く!CPR(心肺蘇生法)を!」

男は焦点の合わない顔でつぶやいた。
「CPR?」
「いいから、どいて!それから、そこのテラスにある電話で救急車を!」

やはりアーミッシュの黒い服を着た母親がおろおろしながら受話器を取り上げると、メアリーに尋ねた。
「どうすればいいの?」
「911を回せ!」
キャディーのウェインが叫んだ。

しかし、電話も含めて文明の利器の一切に触れない信徒は当惑するだけだった。
ウェインは電話をひったくり救急車を呼んだ。

心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す!

メアリーは心肺蘇生法の講習を受けていたので方法は承知していた。
しかし、実際の経験がない悲しさ、息絶えている子供の蒼白な顔と直面した狼狽を隠せないまま、とりあえず両手で口を大きく開けると、片側に舌を寄せ、鼻を持ち上げてから強く息を吹き込んだ。それから心臓に定期的に圧迫を加えた。
「焦るな、焦るな」
自分に言い聞かせながら、息を吹き込み、心臓にリズムを与え続けた。

そのころになると、プールサイドにはギャラリーが集まってきて人垣が出来ていた。

中には事情もわからずに、
「どうしたの。お前さんのボールが命中したのかね?」などと尋ねる者もいた。

一方、コースでも混乱が発生していた。後続組が次第に停滞をはじめたので、役員たちは13番に集結してきた。そこでようやくメアリーたち4選手の姿がないことに気づいた。
「一体この組の選手はどこに行ったのかね!?」
「そこのプールにいるらしいよ」
後続組のキャディーがのんびり答えた。

「何!試合放棄して泳いでるのかっ!」
役員は激怒した。

奇跡!!息を吹き返した!

メアリーは、心臓に圧力を加えながら、悲痛な声で語り続けた。
「死んじゃダメよ!頑張って!」

彼女には5歳になる自分の息子のように思えてならなかった。
「人生は今始まったばかりなのに、もう終わりにするつもりなの?私は許さない!絶対に死なせない!」
心肺蘇生
そのとき、小さな体が微妙に痙攣すると、まるで噴水のようにプールの水を吹き上げた。
コトン、コトンと脈も伝わってくる。
「この子ったら」
メアリーは手放しで泣き、大声でわめいた。
口に手を入れて吐かせながら、彼女はさらに激しく泣き続けた。
「神様。ああ神様、本当にありがとう!」

取り囲んでいたギャラリーも大騒ぎだった。見知らぬ者同士抱き合って喜び、キャディーのウェインはアーミッシュの両親を両手で抱き寄せて祝福のキスに忙しかった。
両親は子供を懐に抱いて名前を呼び続けた。すると、子どもは弱々しく泣き始めた。
「もう大丈夫よ」

メアリーはプールの水で手を洗うと、髪をかき上げながら微笑んだ。
「こんなに上手くいくなんて、ウソみたい」
人々は彼女のまわりに集まって口々に賞賛したり、肩を叩いたりした。

「その子の名前は?」
メアリーは母親に尋ねた。
「ジョナサン・スマッカー。3歳と6か月です」
「初めまして、ジョナサン。私はプロゴルファーのメアリーよ。あなたが生き返ってくれて、どんなにうれしいことか」

停滞はしたものの、当然スロープレーに該当せず!

遠くから救急車のサイレンが近づいてくる。
キャディーのウェインが言った。
「そろそろゲームに戻らないと。ほら、向こうから役員連中がやって来たぞ」
3人の役員は、現場に来ていた他の選手から事情を聴いて感動したものの、どう処理していいかわからなかった。

「もし、彼女の行為がスロープレーに該当するというなら、俺は関係者全員を告訴するぞ!」
ウェインが息巻いた。

「処分などするものか。逆に表彰すべきだと思っているよ。ところでメアリー、救急隊も来たことだし、ゲームに戻らないかね?」

役員に促されて、彼女は13番ホールの第2打地点に歩き始めた。
「ウェイン、私のスコアを覚えてる?」
ラフに立った彼女は、グローブをはめながら聞いた。

「人命救助のご褒美に、神様が10ストロークほど引き算してくれりゃ別だが。多分、2オーバーのまま変わっちゃいないと思うよ」

ようやくゲームは再開され、長かった13番のスコアはボギーだった。
そのあとも、先ほどの出来事が頭から離れず、集中力が湧かないままにボギーが続いた。しかし、その日コースに来ていた人すべてが美談を聞くなり駆け集まって、歩くメアリーに盛大な拍手を送り続けた。

「まるで優勝したみたい!」
照れる彼女に、ウェインが胸を張って誇らしげに言った。
「それ以上だよ、メアリー。君は最高の女性だ!」

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現在のゴルフでは、ラウンド中におけるゴルファーの安心、安全がとても重要となっています。高齢ゴルファーの熱中症や心疾患などによる急な体調不良が増えています。
多くのゴルフ場では、すでにAED(自動体外式除細動器)が設置されていたり、当然消防署と連携して救急救命講習も何度となく開催されていることでしょう。
救急救命講習
有馬カンツリー倶楽部でも5年前にAEDを使用する緊急事態が起こりました。連絡を受けて2分後に到着し、AEDの指示の元でCPRを行い、蘇生に成功し人命を救助をすることができました。現在では、1分でも早く現場に急行できるようにAEDを2台常備しています。

心肺停止状態になってからは一刻を争います。
プレー中は、同伴者同士の体調にも目配りするように心掛けてください。
またプレー中、いつでもマスター室やゴルフ場フロント、もしくは119に連絡できるようにしておきましょう。
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◆参考文献
「ゴルフの処方箋」夏坂健著:幻冬舎文庫
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ぜひご覧ください。
「今からでも遅くないゴルフマナー&ルール」
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『なぜ、ゴルフ場でジーパンはNGなのか? ~もう迷わない。ゴルフ場での服装選び』
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URL:http://www.arimacc.jp/
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