コラム

 公開日: 2017-06-08  最終更新日: 2017-06-19

未払い残業代の請求について

未払い残業代の請求

日々、会社経営者の労務相談を受けていると年に何回かは「辞めた従業員から未払い残業代の請求がきました」という相談を受けることがある。請求の方法は内容証明で来たり、FAXできたりと様々だが、100万、200万のなかなかの高額な請求でくることも珍しくない。

その際、必ず訊くのが「残業代を支払っていないということについては身に覚えがあるか?」ということだ。概ね次のような回答が返ってくる。「正確な時間数、金額はわからないが、いくらか支払っていないものもあると思う」私の印象では多くの場合において、正当な権利に基づいての請求で、有りもしない残業代を架空請求してくるようなケースは稀ではないかと感じている。しかし、その請求の細かな中身即ち実際に未払いとなっている具体的な残業時間についてとなると、お互いの目線の違いから、なかなか一筋縄には合意に至らない。問題となる場面をいくつか挙げると以下のケースが考えられる。

未払い残業代請求での争点

①始業時刻前から行われた作業時間の算定
②手待ち時間
③申請なく行う残業
④残業時間の頭打ち
⑤残業時間端数の切り捨て
⑥含み残業
 もちろん上記以外にも争点は多々あると思うが、とりあえず思いついたものを並べてみた。
①については、その作業が会社から義務付けられていた又はこれを余儀なくされた状態であるときは労働時間と評価される余地がある。また、これ以外でも黙示の指示とみられる状況などがあると労働時間と評価される余地がある。

②についても、具体的な作業に従事していなくても、業務が発生した場合に備えて待機している時間は労働時間と評価される余地がある。

③については残業命令が無い時に従業員さんが自主的に作業をしている場合だが、勝手にやっているんだから支払わなくていいということには必ずしもならない。この場合、会社は残業での作業が必要でないことを従業員さんに伝え、作業を終えるよう指示すべきだ。それにも関わらず残業禁止を明示しないような場合は会社が残業による作業の処理を暗に指示し期待しているのではないかととられなくもなく、黙示の残業命令と評価される余地がある。

④は会社では一定の時間までしか残業代を支払わないということを明示し、実際それ以上の時間の残業に対して支払わないというケースだが、一定の時間以上の不払いを明示しているのだから従業員が不払いに合意してやっているとの主張、もしくは一定の時間で十分終る作業なのでそれ以上の残業は生産性の低さにより生じるものだからこれを担保しないという主張等がその真意かと思える。しかし、労働時間は使用者の指揮命令下におかれたものと評価された時間をいうので、客観的にそのような常態であったと評価されれば労働時間と算定され、このような主張についても認められる余地は少ないかと思う。

⑤残業時間の端数の切り捨てについては通達により一カ月のトータルにおいて残業代の30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げる取扱いについては賃金の全額払い違反とならないとあり、そのルールに沿った範囲でのみ切り捨てられる。

⑥については、その制度の態様によって残業代を支払ったと評価されるものもあれば、否定されるものもある。ポイントとしては、給与の中のどの部分が残業代相当分かという明示をして労働契約上の合意が得られているかという点が重要だ。具体的には給与中の残業代相当分の金額、その相当する金額に充てられる時間、含み残業での設定時間を超えての残業時間が発生した場合の追加払い等についての明示が必要条件となってくる。また、最近の裁判例では45時間を超える残業時間を設定した含み残業は無効とするものもあるので、その点も考慮すへきかと思う。

通常より講ずべきこと

以上、労働時間について述べてきたが、やはり日々の労働時間管理をいかに几帳面にやっていくかということが肝心だと感じる。従業員さんが残業代の不払いを請求してきたときに、その未払い時間および金額が正当なものか否かを会社が判断するには、タイムカード、日報などがきっちりと正確に記されている必要がある。その点について何ら不安の無い状態なら、ここまで述べてきたポイントなども考慮し、請求額が妥当であるかの当否が検討できるかと思う。

労務に関するページはこちらをクリック

この記事を書いたプロ

原田労務事務所 [ホームページ]

社会保険労務士 原田篤浩

大阪府富田林市向陽台4-1-7-105 駐車場有り [地図]
TEL:050-1082-0638

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
労働トラブルの解決・予防のプロ 原田篤浩さん

心的負担を軽減し、解決までしっかりサポートします(1/3)

 「労働問題は抱えると精神的にしんどいので、出来るだけ早く解決に向けて動きましょう。電話相談をいただいた日に会ってお話しすることも可能ですよ」と、多くの企業経営者の力になってくれるのは、社会保険労務士(以下社労士)の原田篤浩さんです。労働保...

原田篤浩プロに相談してみよう!

読売新聞 マイベストプロ

精神的負担の大きい労働トラブルに最後まで根気よく向き合います

事務所名 : 原田労務事務所
住所 : 大阪府富田林市向陽台4-1-7-105 [地図]
駐車場有り
TEL : 050-1082-0638

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

050-1082-0638

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

原田篤浩(はらだあつひろ)

原田労務事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
解雇の予告

 解雇とその制限  解雇とは使用者からの労働契約の解約だ。有期契約の場合は期間到来で契約が終了するまでに...

社長も入れる?!労災保険の特別加入とは

 労災保険は労働者の保険!  労災保険での保険給付は仕事中、もしくは、通勤途上での負傷・疾病・障害・死亡等...

算定基礎届と年金事務所の調査
イメージ

  算定基礎届 毎年6月になると日本年金機構から算定基礎届の封筒が届きます。健康保険、厚生年金の保険料は従...

労働保険年度更新
イメージ

  労働基準監督署 最近のニュースを見ると大手企業で残業代未払いや、三六協定を超えた違法な時間外労働を労...

あっせんによる解雇事案の解決について

 解雇予告手当・未払い残業代  当事務所では企業の方から様々な労務の相談を受ける機会があります。ビジネス...

コラム一覧を見る

人気のコラムTOP5
スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ