労基署・年金事務所などの調査対策のプロ
コラム
公開日: 2012-11-30 最終更新日: 2014-05-23
もっと高い残業代
前々回に、未払い賃金のことを書きました。
その中で、最も高額な未払いが出るケースとして、正社員の場合を書きましたが、これは一般の正社員の例です。
しかし、この中でも、もっと高額になる職階の人がいます。
それは管理職という職階です。
労働基準法では「監督または管理の地位にある者」は、時間外・休憩・休日の規定は適用しないとあります。
これらの人を「管理監督者」といいます。
つまり「管理監督者」なら、いくら時間外になろうが、休日出勤させようが、手当を払わなくても良いということです。
これを知っている、または昔からの慣例で「課長以上の管理職には残業手当は支給しない」としている企業が多数あります。
しかし、この法において「管理監督者」とは、一般的に使われている「管理職」とイコールではありません。まあ「管理職」という言葉の定義も曖昧ですが…。
では「管理監督者」とは、どういう人でしょうか?
条文に、きちんと定義を書いておけば、こんなことにならなかったはずなのに…。
裁判例などからすると、「管理監督者」とは、労働条件の決定や労務管理などで「経営側と一体の立場の人」をいいます。
役員でなければ、課長や部長・支店長・工場長・店長・チーフその他どんな名称を用いようと、名称とは関係がありません。
また、給与の面でも、役職手当などという低い額ではなく、かなり高額(残業手当を払った方が安いほど)の報酬が必要とされています。
それに加えて、出勤時間・休憩時間・休日など時間の裁量権などもあります。中小企業で言えば役員クラスです。
部長であっても、時間の裁量権がなければ、ここに言う「管理監督者」とは言えない場合が多いのです。
これらの点から、世間でいう「管理職」の大部分は、「管理監督者」ではないと思われます。
一時、テレビなどでも取り上げられた大手ファーストフード店の「名ばかり店長」もこれに当たります。
こんな人たちが、時間外労働をしたら、一般社員より給料が高いし労働時間が長いので、割増賃金が高くなるのは当たり前です。
管理職には手当を払っているから大丈夫だ、とは思わない方がよいと思います。
場合によっては、その管理職手当が、割増賃金の算定基礎に含まれるリスクもあるのです。
当社の管理職は、そんなことで文句を言ったりしない、と思っておられるかも知れません。
もちろんそんな人だから管理職にしているのでしょう。
業績が順調なときは、それでもいいでしょう。
でも、いつ何時企業の危機が来るかも知れません。
賃金の減額をしなければいけない事態もあります。
今まで、どんなことを言っていても、こと賃金に関しては、誰一人100%の満足はしていないのです。
未払い賃金の請求は、ほとんどの場合退職後です。つまり社長と話し合う機会がなくなってからです。
在職中は、将来の地位なども考えますから、あまり強く言えなくても、退職後、または退職を前提にしている場合は、請求しやすくなります。
未払い賃金の請求訴訟では、ほぼ100%会社の負けです。和解になっても、必ずいくらかは払わなくてはなりません。ゼロという結論はありません。
会社がこれを回避できる方法は「未払いを作らないこと」しかありません。
社内の環境または社員との関係が良いときにこそ、就業規則なり賃金規定を見直し、万一の場合に備えることも大事なことだと思います。
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充分注意はしておりますが、思わぬ勘違い、書き間違い、記憶違いなどがあるかも知れません。お気づきになりましたらご一報頂ければ幸いです。
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年金事務所・監督署などの調査対策のプロ
社会保険労務士 廣 岡 保 彦(ヒロオカ ヤスヒコ)
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