労基署・年金事務所などの調査対策のプロ
コラム
公開日: 2013-03-05 最終更新日: 2014-05-23
10年で年金がもらえる。
長らくご無沙汰をしてしまいました。
先日、建設業者の方々に来て頂き、「社会保険に加入しなければならない企業は、どんな企業か?」というような内容で、お話しをさせて頂きました。
国土交通省は、建設業界の社保未加入の率が高いので、今後は元請が下請の社員についてまでも監督して加入させなさい、という指導になってきています。
社会保険の加入については、法人経営は例外なく加入すべき義務がありますが、個人経営は雇用している人が5人以上であれば、加入しなければなりません。つまり4人の事業所は加入させなくてもいいということです。
では、この4人なり5人とはどういう人たちなのか、です。
年金事務所などの見解では、「常態として雇用されている」という言葉で表現されています。
微妙な言葉です。
建設業は、他の業種と異なり、その現場のみの「請負」のような労働形態もあります。次の現場での雇用が保証されていない人もいます。
そんな人たちも「常態として雇用されている」のか?なかなか判断に迷うような例がありそうです。
国土交通省と厚生労働省とでは、統一された基準があるのでしょうか? 国土交通省で加入すべきと判断されたが、厚生労働省の判断では加入しなくてもよい、ということにはならないのでしょうか?
それは今後の課題として、今日の話題は、年金制度の改正です。
なんと、そのセミナーの質疑応答の場で、最も関心を持たれたのは年金制度でした。
集まって頂いた経営者の方は、ほとんどが個人経営の方でした。
成り行き上、人を雇用した時にはどのような法律があるのか、という社会保険制度の概略も説明し、「年金も10年掛けたら貰えるようになった…。」と話したので、質疑応答に入って、最も関心を持たれたのは、年金制度の改正でした。
給料から保険料を天引きされているサラリーマンの方には、何の関係もないのでしょうが、建設業を自営している人たちにとっては、重大な関心事だったようです。
彼らも、若いときはサラリーマンで、勤めていた何年かは納めていたのではないかと思います。ところが経営側になるとなかなか納められずに、未納期間があるようです。
折角なら、このサラリーマン時代の納付を生かしたいと思ったようです。
また、今まで掛けてなかったが、これから10年、いやサラリーマンが5年くらいあるから、あと5年くらいなら払えるのでは…と思われたのか?
今回の改正(平成24年8月)では、大きく2本の柱が出来ました。
そしてどちらも「10年」というキーワードで表すことができます。
ごく簡単に説明をいたします。
(1) 一つ目の柱は、未納期間のうち10年間分の保険料を納付できるということ(後納制度)。
(2) もう一つの柱は、今まで25年間の保険料納付が必要だったのが、10年間の納付で受給権が得られるようになったこと(平成27年10月以降)。
最初の後納制度は、今まで時効があって2年間に限られていた後納(過去の未納分を納めること)が、10年間に延長されたということです。
これによって、例えば45歳の人が、今まで未納であっても、過去の10年間分(35歳から)を納めることが出来るようになったのです。
その結果この人は、これから60歳までの15年間もきちんと納めれば、合計25年になって、受給権が得られるというわけです。
二つ目の柱の「10年分の納付で受給権が得られる」というのは、この例で説明すると、今までは45歳の人が60歳まで納めても15年しかないので受給権は得られなかったところ、今から納めれば55歳で10年の納付になるので、受給権が得られるということになったのです。
とは言うものの、55歳から払わなくてもいいと言うわけではありません。60歳までは払わなくてはいけませんが…。
また、55歳から年金を貰えるという訳でもありません。支給開始は原則65歳からです。
ついでに、満額を貰える訳でもありません。国民年金は、20歳から60歳までの40年間納めて満額の支給です。
ですから、今までの25年が必要な時でも、25年納付なら40分の25しか貰えなかった訳です。32年納付なら40分の32、24年納付ならゼロ(年金としては)だったのです。
つまり、10年ならまったく貰えなかったところ、今度の改正で、貰えるようにはなった、しかし金額は40分の10ですよ。ということです。
ですから、さっきの45歳の人は、これから60歳まで払えば、15年納付になって、40分の15は貰えますよ。
もしくは、もう5年待って(未納?)、50歳から10年間払えば、最低限のものはもらえるようになったということです。
わかりにくくてすみません。
上の(1)と(2)は、次のような関係です。
今までずっと未納だった人が、これから10年分を納めることが出来(1)、これを納めることによって、いきなり受給権を得る(2)ことになります。
過去の保険料には、利息のようなものがつきます。当時より少し多く払う必要があります。
雑な計算ですが、年間およそ18万円くらいになりそうです。10年分払うとすると約180万円くらいでしょうか。
これによって増える年金額、または新たにもらえるようになる年金額は、一年につき19,656円くらいだそうです。
10年分納めると年額で196,560円くらい増えます。
それを10年(65歳から75歳まで)もらえば、196万円ですから、元が取れる計算です。
さあどうします?
詳しくは、日本年金機構のホームページへ
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=6221
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
充分注意はしておりますが、思わぬ勘違い、書き間違い、記憶違いなどがあるかも知れません。お気づきになりましたらご一報頂ければ幸いです。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
年金事務所・監督署などの調査対策のプロ
社会保険労務士 廣 岡 保 彦(ヒロオカ ヤスヒコ)
大阪市中央区淡路町2-1-10 ユニ船場605号
電話:06-6231-2245(平日10時~18時)
FAX:06-6231-2200
ホームページ:http://www.hirooka-consul.com/ (一部工事中ですが、なんとかリニューアルしました。)
ブ ロ グ: http://ameblo.jp/hirooka-consul/
メ ー ル: hirm@nifty.com
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
こちらの関連するコラムもお読みください。
- パートを厚生年金に加入させようって?2012-05-25
- 10年年金は、消費税とともに1年延びる?2014-11-14
- 遠距離通勤者は、年金を多くもらえる!2012-04-02
- 消える年金2012-07-13
- 払いすぎた年金返せ!の後半2013-07-23
最近投稿されたコラムを読む
- 法定福利費は払ってくれるのか? 2017-01-13
- 10年で年金 2016-11-01
- 厚生年金の保険料とは? 2016-05-30
- 国民健康保険は意外に高い。 2016-04-14
- 特別条項にご注意! 2016-04-04
プロへのみんなの声
このプロの紹介記事

困っている中小企業の社長さんの<防波堤>になります(1/3)
法律事務所に14年在籍した廣岡保彦さんが、社会保険労務士として40歳で独立し、今年で17年目になります。労働基準監督署(以下労基署)や労働局、年金事務所などの調査対策に「特化」した取り組みで、<プロ中のプロ>との評価を受けています。顧問会...
プロのおすすめコラム
› 新着記事一覧
10年で年金
やっと、10年で年金が貰えるようになりました。来年の9月の時点で、10年以上保険料を払った人にも老齢年金が支給...
社会保険の強制加入
2月23日の讀賣新聞によりますと:『厚生年金への加入をしていない中小企業のうち、加入を違法に逃れている疑い...
国民健康保険は意外に高い。
建設業の方々にちょっと考えて頂きたいのです。建設業の監督機関である国土交通省は、来年の3月末までに、すべ...
人気のコラムTOP5
-
- 1位
- 10年で年金がもらえる。 11よかった
-
- 2位
- 法定福利費は払ってくれるのか? 10よかった
-
- 3位
- こんな法律が成立しました - - - パート労働者の無期限雇用について 4よかった
-
- 4位
- 社会保険事務の調査についてのQ&A 2よかった
-
- 5位
- 還暦同窓会のお知らせ(大阪市立平野中学校) 2よかった
スマホで見る
このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。
バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。