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コラム
公開日: 2013-11-14 最終更新日: 2014-05-23
長野の厚生年金基金の事務長逮捕される
さて今日は、以前にこの欄でご紹介した厚生年金基金の件です。
昨年の8月のコラムです。
長野県建設業厚生年金基金の事務長が、基金から24億円を横領して行方不明になっていたところ、タイに潜伏しているのを発見し、逮捕したとの報道がなされています。
報道によると、彼はほとんど無一文の状態だそうです。
また一方では、警察は、6000万円の横領容疑で逮捕する予定だとも伝えられています。
ワイドショー的興味で物事を見ると、基金の使途不明金24億円に対し「6000万円の横領?」となります。
しかしこれは、よくあるケースです。「6000万円の横領」を証明することが比較的易しいということかも知れません。横領やら詐欺やらには、ありがちです。
ですが、実際に横領額は6000万円かも知れません。
基金の使途不明金は24億円です。でも彼は無一文です。
本当に24億円も持ってタイへ行ったら、少々豪遊したところで、1年や2年で無くなったりしないでしょうから…。
残り23億4000万円の使途不明金は、誰が使ったのでしょう?
誰の手に渡ったのでしょう?
日本に着いたら、彼の身の安全を万全にしないと、ケネディ暗殺事件のオズワルドのように、口封じをされてしまいますよ。
さて、どうなることでしょう?
そんなことは、別にどうでもいいことなのですが、この建設業基金の現状は、どうなのでしょうか?
裁判にまで発展したのは、こういう内容です。
基金を脱退したいと希望した企業が、定款で定められた脱退条件2つのうち、『積立金の不足を補う補填金』を払ったあと、残りの条件である『代議員会での議決』を求めたところ、否決され、脱退できなかったというケースです。
裁判では、基金に対して「脱退を認める議決をせよ」とは法理上無理がありそうなので、「議決は不要である」ことを求めたようです。
長野地裁の判決は、「脱退の申し出に『やむを得ない理由』がある場合は、議決は不要である」と認定しました。
以前にも書きましたが、『やむを得ない理由』とは、基金の使途不明金が24億円もあり、その一部を事務長が横領したらしい、という管理不行き届きの基金にお金は預けられないという理由で、もっともな理由です。
その後、控訴審の東京高裁で和解が成立したそうです。和解の内容は、明らかにされていませんが、原告企業側がいくらかの上乗せを支払うのではないかとも言われています。
今さら、この事務長の逮捕で、かりに24億円が戻ったとしても、こんな大金を横領されて分からなかった、もしくは分かっていたけどバレないと思っていたような基金は、信頼に値しないことは明白です。
事務長が逮捕されたことで基金は、お金が戻った訳でもなく、信頼が回復した訳でもないのです。
現在はどうなっているのでしょう?
今年5月の信濃毎日新聞のニュースでは、
「基金は、代議員会を開き、厚年基金制度見直しを柱とする年金制度改正法案が成立し次第、基金解散への手続きを進めると議決した。」
「同基金の2011年度決算では、国から預かって運用している年金資産に積立金不足が食い込む「代行割れ」額が約180億円に上る。」
とのことです。
最終的には、最後まで残った加入企業が、この180億円を頭割りして支払うことになりそうです。
一人あたり、いくらになるのでしょう?
それによって、加入企業が破綻したら、従業員はどうなるのでしょうか?
こんなオッサン一人捕まえるより、その方が重大事なのでは…。
と考えてしまう今日この頃です。
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充分注意はしていますが、思わぬ勘違い、書き間違い、記憶違いなどがあるかも知れません。お気づきになりましたらご一報頂ければ幸いです。
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