コラム

 公開日: 2015-04-07  最終更新日: 2015-04-11

マタニティ・ハラスメントによる解雇について

最近、「○○ハラスメント」という言葉をよく聞くようになりました。

略してセクハラ・パワハラ・モラハラ等ですが、妊娠・出産に関係したものを一般に「マタニティ・ハラスメント」略して「マタ・ハラ」と言っているようです。

よく裁判になっている、妊娠を契機に、降格や退職強要ではなく、前回ご紹介したようなケースで、私たち士業の事務所において、ボス(所長・事業主)が一人なら、事務員さんも一人という形態の場合に、こんなことがあったとします。

さて、解決方法はあるのでしょうか?


ある事務所のボスが、事務員さんを募集しました。

ところが、前回のようなことがあると困るので、採用のときに次のような約束を持ち出しました。

「妊娠したら退職してもらいます」


これに対し:
応募者Aさんは既婚者だったため、「それは承諾できません」として、内定を断りました。

次に:
応募者Bさんは既婚者だったのですが、「2~3年くらい勤めて、妊娠したら辞めてもいいか」と考え「分かりました」として、採用されました。


Aさんの場合、実際には後日問題になる場合は少ないかもしれません。

そこで、Bさんの場合について考えてみます。

Bさんは、3年くらい経って妊娠しました。事業主は、当初の約束だから、これで退職してください、となりました。


この場合:

前回ご紹介した「雇用機会均等法」の9条によれば:
「事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。」
また、「妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。」と規定されています。

これに照らせば、二重の意味で無効となりそうです。


法で「無効」と規定されていることが、Bさんが異議を唱えなければ、有効になるのでしょうか?

この条文に反する行為は「無効」であるのです。
そして一般に、無効の行為は、本人が了解しても「有効」にはならないはずです。


実務的な問題として、離職票には離職理由を書かなくてなりません。

たとえば、ここに「妊娠したため、当初の契約どおり解雇した」と書いたら、どうなるのでしょうか?


本人が了解していても「無効なものは無効だ」とハローワークが判断して、解雇が出来ないのでしょうか?


でも実際には退職しています。

退職理由は、大きく「自己」か「解雇」しかないので、消去法によって、「解雇」でなければ「自己」になるのでしょうか?

そんなはずはありません。

ハローワークは、「解雇の有効・無効」を判断する立場にないので、単に解雇による離職として処理します。

有効・無効は、後日当事者で決着してください、ということです。


さて、この法律の「無効」とは、どういう意味に捉えればよいのでしょう?

Bさんが不服を申し出て、裁判にでもなれば、解雇は無効となって、法の予定した結果が出ますが、そうでなければ、「有効」になってしまうのです。


「妊娠したら退職してもらいます」との条件は、上記の条文に照らし無効でしょう。

でも、そうであれば、ボス一人で、事務員さん一人を雇用しようとする零細企業は、怖くて若い既婚女性を雇用できないことになりませんか?

もし、裁判で「解雇無効」になったとしたら、戻って来た事務員さんと、解雇した後に雇った事務員さんとの2人を雇用しないといけないのでしょうか?

その出産した事務員さんは、事務所に戻って気持ちよく働けるのでしょうか?


裁判で「解雇無効」とされた労働者に対して、企業が一定額を支払うことで解雇できるようにする「解決金制度」(金銭解雇)の導入が考えられています。

結局「解雇無効」、つまり当初の就業状態に戻す、となったところで、その会社には勤め辛いものがあると思います。

そうすると落ち着くところは、退職は受け入れて金銭で納得するとなっているのが実情です。

そうして今年3月30日、
厚生労働省は、マタニティーハラスメントをめぐり、育児休業の終了などから原則1年以内の降格などの不利益な取扱いは、直ちに違法と判断することを決め、全国の労働局に通知しました。

企業が業務上の必要性を主張する場合には説明責任を課されます。

これについての詳細は、下記のpdfへ(厚生労働省です)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/070330-1.pdf


いずれにしても、読者諸兄。

人を雇うというのは、かなりリスキーなことだと、ご承知置きください。

どうも最近知識の提供よりも、意見の方が多くなってきました。


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充分注意はしていますが、思わぬ勘違い、書き間違い、記憶違いなどがあるかも知れません。お気づきになりましたらご一報頂ければ幸いです。

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