コラム

2012-01-13

後縦靭帯骨化症を巡る裁判 公平の原理

東京地裁八王子支部 平成10年8月28日判決


 直進乗用車同士の交差点の事故、原告徐行・被告20キロ程度、により自賠責等級12級12号相当の後遺障害を残した事案。

被害者女性年齢不明。

「被告らは、原告が本件事故で被った頸椎捻挫は極めて軽度なものであり、事故後三ないし4週間でほぼ消失する程度であった。治療が長期化したのは頸部椎間板症、後縦靭帯骨化症及び第五~第六頸椎間孔の矮小化という既存疾患によるものであると主張し、その根拠として、原告が頸部痛をちゅうしんとする上肢のしびれ感を訴えていたのは事故の10日後であること、その後、頸椎捻挫の治療を受けているのに症状が悪化していることを挙げ、原告の症状は外傷以外の原因によるものであると主張する。http://mbp-osaka.com/houmujimusho/column/9842/

しかし、各証拠によれば、原告には頸部椎間板症、後縦靭帯骨化症及び第五~第六頸椎椎間孔の矮小化という既存疾患があったが、本件事故前は発症していず、首や肩の痛みはなかったこと、本件事故後には頚部痛、顔、頸部、右上肢のしびれ感があること、原告は、本件事故当日の平成4年6月13日に山口外科医院において、右肘と右膝に痛みがある旨訴えていること、原告は、同月15日の西村医院での初診時に、6月13日から、車と車でぶつかったことが原因で、頚、右腕疼痛、しびれ、左腕しびれ感、右下肢疼痛があることを訴えていること。西村医院のカルテには、原告が平成4年6月15日以降頻繁に頭痛、頸部通を訴えていることが記載されていること、同カルテの同年6月24日、同月29日、同年7月3日、同月16日、同月24日、同年8月29日、同年9月8日、同月21日、同月29日、同年11月7日、同月19日、同年12月25日、平成5年4月1日、同月21日、同月22日には、原告が上肢又は手指のしびれ感を訴えていることが記載されていること(どこにしびれ感があるのか記載されていないものもある)、西村邦康医師作成の平成5年2月9日づけ診断書には、原告が平成4年6月15日来、頭、肩、肘、腕、膝部の痛みと上下肢のしびれ感を訴えていたことが記載されていること、原告は国立療養所村山病院の初診時にも、ほほから下の顔面がしびれる、右手足がしびれる旨訴えていること、国立療養所村山病院での治療を通じて握力が改善し、肩の動きがよくなるなど西村医院に通っていた頃よりはよくなったことが認められる。右認定事実によれば、原告は本件事故の二日後には上肢のしびれ感を訴えていること、原告の症状は国立療養所村山病院での治療を通じて西村医院に通っていたころよりはよくなったことが認められるから、被告らが原告の症状は本件事故によるものではないとする根拠としてあげられる事実はいずれも認めることができない。


そして前記認定事実によれば、原告には頸部椎間板症、後縦靭帯骨化症及び第5~第6頸椎椎間孔の矮小化という既存疾患があったが、本件事故前は発症していなかったこと、しかし、本件事故による頸椎捻挫が引き金となって、既存疾患と相まって前記の後遺症を発生させている解するのが相当である。このように、原告の損害がその既存疾患の存在と相まって発生又は拡大した場合には、加害者に損害の全部を賠償させることは公平を失するから、裁判所は、損害賠償の額を定めるにあたり。民法722条2項を類推適用して、被害者の疾患を斟酌することができると解されるところ、本件交通事故の原告の稼動状況、衝突の態様、衝突時の衝撃の程度、傷害の部位、程度、治療内容や治療期間などを総合考慮すると原告の損害のうち50%は既存症によるものと認めるのが相当である。




 上記判例の争点は、もともとあった症状が事故によって強く感じる状態になってしまった際に、

もともと悪かったから事故のせいじゃないとするのか、結局事故がなければ痛みもなかったと捉えるのかという点にあります。

 事故のせいだとするならば、加害者がその分の責任をとらなければいけないですし、事故のせいでないならば、責任をとる必要はないことになります。

 この責任は、損害賠償であり民法709条にもとづくものです。709条は722条の適用をうけます。これは、被害者に疾患があればそれを考慮することができるというものです。つまり、もともと素養があった部分まですべて損害の責任を負担しなくていいよということです。

 民法709条は公平の原理ですから、どのように責任を負わせるのが妥当かを検討し、上記判例においては50%はもともと被害者には痛みがでるような身体的な素養があったのだから半分は加害者に責任はないよ、としたというわけです。
 

素因減額にいての判例 http://mbp-osaka.com/houmujimusho/column/9834/



この判例からわかることは、通院をするときに自覚症状をきちんと部位を特定して医師に訴えることの重要性です。本人が訴えている症状がこの裁判のようにカルテに記載されているかどうかで大きな違いを生むわけです。
まず、自覚症状はしっかりと伝えることをすすめます。
治療における症状の改善がみられる点も重要です。適切な治療を行い、症状の改善が見られることを理由の一つとして事故と後遺障害との因果関係を肯定しています。
治療をして楽になったのは、事故によって痛みがでていたからだろうと推測が成り立つということです。
この判例は、もともと事故の前に症状が発現する素養があった方に対する判断ですが、カルテへの記載と適切な治療を積極的にうけることは、当たり前のことですが妥当な後遺障害認定を受けるためにも重要なことになります。


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