コラム

 公開日: 2015-08-07 

どんな相手であれ対等な相手として交渉に臨む

お客さまに分け隔てなく敬意を払って

交渉をするにあたって、まず重要なのは、相手は誰であれ対等な交渉相手として敬意を払うことです。会社間の交渉などで、肩書きが自分よりも下だと分かると横柄な対応をする人がいますが、それはいけません。

私のアテンダント時代の話をしましょう。ご承知のとおり、飛行機にはファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスがあります。

ファーストクラスでは帝国ホテルのサービスを規範としており、料金もエコノミークラスとは10倍以上の差がある路線もあります。

ファーストクラスでは、帝国ホテルのフレンチか和食のフルコースを提供するため、サービスに約2時間かかります。エコノミークラスでは、トレーにセッティングされた料理を提供するので、サービスは1時間ほどで終了します。

お客さまの満足を得るための重要な要素は、ハードウエア(充分な設備)、ソフトウエア(充分なシステム)、ヒューマンウエア(卓越した接遇力)の3つです。これらが重なっている部分が大きければ大きいほど、お客さまの満足度は高まります。

ファーストクラスでは、ハードウエアもソフトウエアも充実しています。
しかし、エコノミークラスでは料金相当とはいえ、ハードとソフトの両方にご満足いただけるかどうかは、アテンダントにかかっていると言っても過言ではありません。

人を肩書きやクラスによって判断しない

エコノミークラスのお客さまにも満足していただくためには、やはりヒューマンウエアで勝負するしかありませんでした。
アテンダント一人ひとりの応対力にかかっているのです。

ミールサービスが早く終了する分、お客さまと積極的に会話をしたり、雑誌を回収してまだ読んでいないお客さまに持っていったりなど、お客さまおひとりおひとりが求めているモノやコトを丁寧に観察します。

以前のコラムでお話しした「おもてなしの心」を持って接すれば、エコノミークラスのお客さまにも空の旅を満足していただけると思って接遇していました。最も大切なことは、人をクラスや外見で判断しないことです。

私は、「お客さまを肩書きやクラスによって判断しがちなので、絶対にクラスでは差別はしないようにしましょう」とアテンダントたちに指導していました。
「ファーストクラスのお客さまは会社の経費などで乗られているかもしれないけれど、エコノミークラスのお客さまは自腹で、こつこつと貯めたお金で乗っていらっしゃる方がほとんどですよ」と。

目的地まで快適に過ごしていただくことに、クラスで差が生じてはなりません。どのクラスであっても大切なお客さまに変わりありません。

クラスに変わりなく、差別することなく、いい想い出をつくってもらう最高のおもてなしをするのが大切です。

外見への偏見は、最も恥ずべきこと

肩書きとともに、人をそれだけで判断してはいけないのが外見です。世の中には生まれつきや事故によってハンディキャップのある人がいます。
そういった方々に対して、偏見を持つことほど人として恥ずかしいことはないでしょう。偏った意識で、交渉を優位に進めようとするのは、人としてフェアではありません。

アテンダント時代の印象深いエピソードをご紹介します。ロサンジェルス発の成田便でのことです。

ハンディキャップのあるお客さまは一般のお客さまの前に搭乗し、着陸後は最後に降機します。搭乗口では私を含め4人のアテンダントがお出迎えをしました。

車椅子を操作しながら来られたお客さまは、機内入り口で、懸垂をするような格好で両腕で体を支えながらスッと立たれました。するとお客さまの下半身はありませんでした。
その後、担当のアテンダントが私に「お客さまがパーサーに担当して欲しいとおっしゃっています」と言ってきたのです。

私はお客さまの元へうかがい希望理由を尋ねると、「私が車椅子を降りたとき、表情を変えなかったのはあなただけです。いつも奇異な目でばかり見られて、普通に接してもらったのは初めてなのです。ぜひあなたに担当して欲しいです」とうれしいお言葉をいただいたのです。私は、どのようなお客さまに対しても平等に、平常心で接することをモットーにしていました。

外見で判断せず、心情や問題点を聴いてから判断することが大切

他人の外見に対して動じないのは、私自身も子供の頃、解熱剤の副作用で筋力が萎縮し、寝たきりで歩けなかった経験があるからです。

トレーニングを受けて歩けるようになったのですが、一緒にトレーニングをした、四肢が不自由なみなさんから教えてもらったことがありました。「人間は、無いものを悔やんで求めるのではないよ、あるものに感謝して大切に使わせてもらうんだよ」と。

そう言って自身の外見も気にせず、底抜けに明るくパワフルに生きる彼らを見て、人は外見で判断するものではないということを学びました。器がどのような形であってもそれはその方の個性であり、どう心を表現するかが、その人の特徴なのです。

お客さまの外見について瞬時に判断せず、必ず心情や問題点をよく聴いてから判断することが大切です。交渉や商談も同じ心がけで行いましょう。

この記事を書いたプロ

株式会社 K.BLOOM [ホームページ]

マナー講師 葛西久仁子

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