コラム

 公開日: 2016-03-03 

海外進出における公的機関支援の限界

新しくマイベストプロに登録させていただきましたリープブリッジVJ中小企業診断士の杉浦です。
中小企業の海外展開支援に特化した中小企業診断士として、企業にハンズオンで寄り添うきめの細かい支援を提供させていただいております。これからは一般情報では知ることのできない様々な海外展開支援におけるエピソードや気づきという点から情報を発信してまいりたいと思います。よろしくお願いします。

公的機関による海外進出支援の視点


私は、ジェトロはじめ多くの公的機関の中小企業の海外進出支援のアドバイザーとして、多くの企業の海外進出のお手伝いをさせていただきました。その活動を通じ、改めて強く感じますのが、公的機関自身の支援の限界です。
公的機関の支援には、大きく分けて、①資金面からの支援、②相談・アドバイスや人的支援、③情報提供、があります。
①の資金面では、投資に対する助成金や展示会出展費用の一部助成、金融機関とも連携した融資制度などがあり、②の相談・アドバイスや人的支援では、典型的な例としては公的機関での窓口相談や商談会の開催、そして専門家の派遣があります。また、③の情報提供では、調査報告や一般概況情報、海外での投資情報を提供は、進出国や業界分野ごとの投資セミナーの開催などが一般的です。

ただ、企業側の立場に立てば、本当に悩みに応えてくれる有益な支援でしょうか。当然、これらの支援は全く無駄ではなく、役に立っているものが多いと思います。しかし、私自身の企業の海外進出支援の仕事を通じ、必ずしも企業の声には応えていないということを痛切に感じます。いわゆる痒いところに手の届く支援ではなく、どちらかというと公的機関の自己満足という側面も否定できず、公的機関ごとに同じような重複した支援制度が、乱立している感があります。中には公的機関内の部門ごとによく似た別々の支援制度が出され、企業自身も迷ってしまうことが多いのが実態かと思います。

特に、公的機関による支援制度の最大の欠点は、進出する(または輸出する)という実績づくりが、その自身の評価ゴールであるところがほとんどであるため、進出するまでの支援は幾重にも関与する制度があるのに対し、最も重要なその海外法人が海外に根を下ろし、着実に発展していく事業の継続性という視点が全く欠けていることです。しかも、年度ごとに予算消化型で多くの制度が4月、5月あたりに集中し、逆に1月から3月あたりは、全く支援が途切れてしまうという笑えない現象が起きているのが現状です。

海外進出前・進出時・進出後の重大課題


企業が海外進出を検討し実践していく過程で、何が最も頭を悩ませる課題でしょうか。 ここに近畿経済産業局が企業のアンケートでまとめたものがあります。進出前、進出時、進出後という3つの段階に分けたとき、それぞれで何が一番課題かという企業の声の上位3位をリストアップしてみますと、

<進出前> 1位 : 市場の特性や消費者ニーズの情報収集(22.1%)
         2位 : 現地での労務管理や労働事情の情報収集(13.0%)
         3位 : 現地での税制や規制、投資優遇策の情報収集(12.6%)

<進出時> 1位 : 投資規制や環境規制への対応(11.8%)
         2位 : 生産委託先、事業パートナーの発掘(8.0%)
        3位 : 現地でのマネージャー人材の育成、確保(7.3%)

<進出後> 1位 : 現地でのマネージャー人材の育成、確保(17.6%)
         2位 : 現地でのワーカーの確保、定着(11.8%)
          3位 : 部材調達先の確保、発掘(7.3%)

というように、進出段階によって企業が抱える課題が変化していくことがわかります。 つまり、海外進出支援には、各段階ごとにきめ細かな対応が求められるわけです。しかし、実際には公的機関の関与は進出までの段階にほぼ特化しており、企業にとってはむしろ進出後が一番大事なわけですが、その段階になると公的機関の支援制度には全く反映されていないのが現状です。もっとも窓口相談ではこのようなことに対応するのは無理ですし、専門家派遣も法人設立までは活動を続けるものの、それ以降についてはあまり活動の重点が置かれておらず、年度ごとの予算対応型支援での限界かと言えます。

進出後の支援が大きな課題


海外、特に新興国では法規制が流動的であり、特に情報や人材の質、量ともに脆弱な中小企業にとっては、進出後の支援がまさに死活問題です。また、日本の親元経営と一体になった視点でのマネジメントが重要であり、いわゆる一気通貫での支援が求められているにもかかわらず、実際には公的支援の枠組みでは限界があります。
海外では会計税務コンサルや人事コンサルなどを活用するのが一般的ですが、日本を含めた経営全体を支援するには、グローバル対応できる中小企業診断士のような経営アドバイザーがますます求められることになるでしょう。

この記事を書いたプロ

リープブリッジVJ中小企業診断士事務所 [ホームページ]

中小企業診断士 杉浦直樹

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TEL:06-7878-6531

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