コラム

 公開日: 2016-03-12 

法人立ち上げ時に留意するべき点


ベトナムに法人を設立する際の立地や形態の検討は、全体のごく一部の課題です。海外展開F/Sでは入り口の検討を一生懸命やっておられるところがありますが、実際には運営上の課題をできる限り綿密に検討する必要があります。立上げ後の様々な問題は、立地や法人形態よりもオペレーションなどマネジメントにまつわることがほとんどだからです。ベトナム進出で少なくとも押さえておいていただきたいポイントについてお伝えします。

物流に関するチェックポイント


ベトナムの物流インフラは相当遅れています。輸出入手続きも煩雑で問題が日々発生します。特に製造業においては、オペレーション上のボトルネックとの認識を持ち、しっかりとした日系物流パートナーを選ぶことをお奨めします。

① 進出先と港、空港の位置関係とアクセス
原材料の調達や販売先が海外の場合、港や空港との距離、アクセス道路などの物流インフラ環境をチェックし物流コストや通関手続き後の輸送時間なども押さえておくべきポイントです。

② 関係諸外国とのアクセス
現在、ベトナムでは日本のODAなどで港湾設備の整備が進められています。しかし、今のハノイ近郊のハイフォン港やホーチミンの港は、喫水線が低いため、大型コンテナ船が入ってこれません。そのため欧米などの長距離コンテナでの直行物流ではなく、中小型のフィーダー船により香港やシンガポールで積み替えていくケースが多いので、結果的に配船数が限られて、物流リードタイムが長かったりコストが高いということもあります。関係諸国とのアクセスを事前に調べ、適正在庫や生産計画を設定する必要があります。  

➂ 物流コストの確認
物流インフラが発達していないということは、その分物流コストが高いという意味にもなります。特に、ベトナムは南北に長い国ですので、在庫をどこに置くのかという検討も必要ですし、ハノイからホーチミンに輸送する場合、トラックよりも海運輸送を利用することも多いです。また、タイから原材料や完成品を移動させる際、最近では東西経済回廊や南部経済回廊などが脚光を浴びていますが、実際には3か国を跨る物流ルートであるため、コスト面や手続き面からも、まだまだ海運による物流が主流です。事前に物流業者と綿密に確認し、高い物流コスト率を踏まえた製造コスト計算が必要です。

④ 刻々と変わる物流インフラ状況の確認
遅れているベトナムの物流ですが、高速道路もどんどん整備されている最中であり、港湾設備も近代化が進んでいくと思われます。また悪評の高い通関のため、輸入通関のリードタイムが読めず、なかなかサプライチェーンに組み入れにくいのですが、通関業務のシステム化もODA支援で進みつつあるので、着実に改善していくことは間違いありません。高速道路と港湾設備が改善されると、物流面で有利な進出先を選定するオプションが広がることになります。 昨今では、ハノイ、ホーチミンの隣接の地方政府による外資誘致の活動が活発化しています。今まで空港や港から4時間、5時間かかっていたため、なかなか進出先として魅力がなかったところが、高速道路が開通して1-2時間でアクセスが可能となることで、外資誘致競争が激しさを増しているところです。

通関手続き面で留意するべきポイント


外資系企業にとって輸入通関に関するトラブルが多い状況ですが、下記の点を留意し事前に準備しておくことで、かなりのリスクを軽減することが可能です。とにかく事後対応が一番コストと時間がかかるということを理解しなければなりません。

① 工場・法人設立時

輸入禁止品や輸入管理品を事前に確認し、法人設立ライセンス取得時に、あらかじめ輸入ライセンスが付与されるようにF/S作成時に確認を行うべきです。特に、中古設備や工具、家具などはそのまま輸入はできません。必ず事前に輸入ライセンスが下りるかどうか確認し、無理なら現地調達に切り替えるなどの検討が必要です。また建設材や生産設備を固定資産として免税輸入する際には、事前に税関で登録しておく必要がありますし、EPEと非EPEでは手続きが異なりますので注意が必要です。
   
そしてこの輸入手続きにおける事前輸入ライセンスにおけるベトナム語表記と、輸入通関時のインボイスにおける品名の表記を一致させないと後で揉めますし、設備機械などは物流業者だけに任せず、自ら写真入りのカタログなど準備を万端整えておくことがトラブル回避に繋がります。

② 原材料、商品輸入時

EPEは輸入関税とVATについては免税となるメリットがありますが、そうやって入れた原材料が製品の製造に使われて残った材料在庫がほとんどの場合一致しません。これは歩留まり率の変動やどんぶり勘定の材料管理によって起きるのですが、この差は必ず追徴課税の対象となりますので、歩留まり実績データを揃えて、在庫数量と常に連動させるような仕組みを構築しておくのがリスク回避になります。

輸出相手国でFTA減免輸入のメリットを享受する際には、原産地規則に基づく証明手続きを行い、管理しておくことで大きなコスト力強化につながります。

よく税関との間で発生するトラブルはEPEの免税に対する査察追徴と、HSコードの運用の違いによる関税率の差から脱税と見なされるケースの二つです。HSコードによって税率が判定されるのですが、税関の役人の理解不足などから見解の相違がよく発生します。このトラブルを回避するためには、事前に税関に確認を求めるか、証明できる書類を保管することが重要です。通関後も5年間は事後審査で再度査察して追徴課税や罰則を受ける可能性があるため、税関対策のための書類保管、データベースの管理を日ごろから構築しておくのが得策です。

現地法人マネジメントの課題ポイント


ベトナムに限らず現地法人の経営は、日本人の現地出向責任者が様々な課題に対して、幅広く管理監督していかねばなりません。本来は社長自らがマネジメントするべきところでしょうが、実際は工場長や製造部長などの管理職にあった方が、現地の出向責任者として赴任されるケースが多く、赴任初日から様々な問題に直面して、どうしてよいか頭を抱えておらえる方を多く見ます。製造はある程度わかるが、人など採用したことがない、まして外国人など採用、育成したこともない、経理の財務指標も詳しくは読めないし、海外での法律とかリスクとか、まして税務署対応なんかどうしてよいかわからないし、そもそも販路開拓も自らやったことがないうえに、言葉が全くわからない・・・

ベトナムで直面する現地出向責任者の課題を4つの観点に分けてみますと、

【課題1】 責任者は本業以外に時間が取られる
一人で多くの職務(人事、総務、経理、体制づくり、対外交渉、契約など)に時間がかかりすぎるし、日本本社からあれこれ指示ばかりで大変なことが多すぎるということです。これは一刻も早くベトナム人幹部の人材育成を急ぐ必要がありますが、日本からは要求するだけでなく支援体制を組むことや、外部の専門家による支援を仰ぐことが有益です。

【課題2】 税関、税務署は「話が違う」ことが多い
法体系が未整備であり、法律と実施細則の不整合は当然あります。また担当官の個人的解釈によって恣意的な運用がなされ、人によって違うことが山ほどありますが、文句を言っても解決にはつながりません。ここはプロの手を借りて、信頼のできる会計・税務コンサルとの連携を進めるのが必要です。また税務調査は5年に一度は必ずありますので、担当官による調査に対しては、税務コンサルと連携をとりながら慎重に対応することが求められます。(ときには税務当局から嫌らしい要求もありますが、追徴課税があったときは法律に従いきちんと対応するべきで、けっして裏取引で追徴を逃れようとするべきではありません)

【課題3】 会計基準が違い管理が複雑
チーフアカウンタントの制度や、会計監査済の財務諸表提出義務など戸惑うことも多いですが、会計・税務コンサルタントをアウトソーシングパートトナーとしてフルに活用するのが得策です。また同時に親会社が常に現地子会社の経理をモニタリングできる仕組みを構築することが必要です。

【課題4】 ベトナム人気質に戸惑う
ベトナム人のマネジメントについては別途詳しく述べたいと思いますが、まさしく発展中のベトナムでは人の流動性が高く、転職が頻繁であることは覚悟しなければなりません。また同時にルール遵守意識がそう高くない面もありますので、社内での不正行為がある程度発生することもあります。本人に罪の意識がないということも問題なのですが、単なる非難だけでなく、地道な教育訓練と良好な職場風土づくりとともに、不正に対してはモニタリングの仕組みを構築し、リスクマネジメントきっちりと進めていくことに尽きると思います。

こういった日本との違いで悩む現地出向責任者を支え、本業に専念してもらうためにも、会計・税務コンサルタントや
海外事業支援専門家など外部支援をできるだけうまく活用することをお奨めします。





   

  

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