コラム

 公開日: 2016-03-16 

ベトナムの投資先としての魅力


日本企業の投資先として、ベトナムが常に上位に顔を出します。ジェトロの2015年在アジア・オセアニア日系企業実態調査によれば、今後1~2年の事業展開の方向性で、拡大と回答された企業の割合が一番高い国としては、卸・小売事業、および輸送機械業界では、インドが一位でベトナムが二位です。鉄・非鉄金属、化学・医薬、電気機械器具ではベトナムが一位となっており、全体的にベトナムの事業投資拡大の傾向は続くものと考えてよさそうです。
その投資先としての魅力はどのあたりにあるのかについては、いろんな見方がありますし、業界によっても違いがあるのですが、一般的に言われている項目について6点ほど挙げてみます。

投資先としての魅力6項目


① 労働コストが相対的に低いメリットが大きい
給与の低いところはカンボジアやミャンマー、バングラデシュなど他にも多くあります。しかし労働力の質を考えた場合、労働対価の比較優位性は断トツであると思います。近年、賃金が急上昇してはいるのですが、中国やタイ、インドなどと比較するとまだまだメリットが大きい国です。また、ベトナムは休日が少なく、他の周辺国と比べて総労働時間数は相当多い(日本人出向社員にとってはつらいところ)ため、時間当たりの労務費はさらに低いと言えます。

② 労働力が豊富で資質が高い
人口は9000万人、労働人口は5300万人と豊富で、平均年齢が29.2歳と若いため、教育訓練次第では労働生産性は相当高くなる可能性があります。また、ベトナム人の特徴として、勤勉で勉強好き、新知識の獲得に貪欲であり、手先が器用で職人技術に向くといった点があり、モノづくり立国として非常に有望な国であると言えます。

③ 政治、社会が安定、治安が良い
ベトナムは社会主義国であり、何となく中国と比較してどうかということが気になります。同じ共産党一党独裁体制ではありますが、ベトナムは中国ほど独裁的な政治ではなく、社会的にも比較的安定していると思われます。中国では国家主席一人に権力が集中する傾向が日々強くなってきていることで、それがかえって不安定さを増すリスクが高まっているとも言えます。しかし、ベトナムでは共産党書記長、国家主席、首相のトロイカ体制により権力構造が安定しているといえます。もちろん権力闘争はあるようですが、それぞれ権力と機能を分離、分担していることで、一極集中的な政治情勢にはなりにくい状況が、かえって政治的リスクを下げていると言えます。特に、政策決定にはコンセンサスを重視し、トップダウンで全て決まるわけではありません。このことにより社会インフラの整備スピードが遅いというようなデメリットはありますが、国民の不満が極限まで達するというようなことはあまりありません。新たに法律や政策が出されても、問題が多くて国民から(特には外国企業からも)不満が高まってくれば、すぐに法律や通達などの修正が行われる柔軟性はあります。
また、治安が良いというのも大きな魅力です。もちろん、空き巣やスリなど盗難事件はよくあります。しかし、新聞を見ていましても強盗殺人などの凶悪事件で世の中を不安に陥れるということはあまり見ません。(男女間の揉め事による殺人事件は多いですが)

④ アジアでの地理的優位性
インドシナ半島の東海岸で南北に伸びている国ですので、アセアンの中心に位置するため、工業集積地であるタイや南アジアの巨大市場となるインドネシアと中国華南地域を結ぶ中間にあり、特にタイと中国とは陸路でつながることから、部品調達にも便利です。特にホーチミンの位置は、中国、フィリピン、タイ、カンボジア、マレーシア、シンガポール、インドネシア、など各国と航空路、海運ともにメリットが大きいため、アジア全体のハブとなりうるポテンシャルが高いと思います。

⑤ FTAによる関税メリットの享受
2015年末に発足したAEC、そしてTPPの参加国として、成長する産業基盤を持った関税メリットの高いベトナムが注目をあびています。欧州ベトナムFTAも締結され、今後欧米、日本の市場拡大のために、ベトナムを活用するメリットが高まっていきます。特に累積原産地規則を活用して、TPP締結国内市場開拓にはベトナムの労働コストのメリットと最大限に生かすことが可能となり、中国など非締結国からの輸出品と比較して、圧倒的な関税メリットを享受した競争力が高くなると見ています。

⑥ 対日感情が良好
日本はベトナムにとって最大の経済援助国であり、官民ともに投資環境改善に向けた連携、相互努力が継続しています。国民感情も大変良好であり、「日本」というブランド力はベトナムでは絶大です。また若い人が多いベトナムでは、日本文化や社会への関心の高さが顕著です。ベトナムに進出する際にも、日系企業に働きたいという人が多く、まだ人材確保に苦労するというところまでにはなっていません。

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日本企業にとってベトナム投資は魅力的な点が多いことは確かですが、一方でベトナム投資についてのリスクや問題点はたくさんあります。次回のコラムでは、その点についても触れたいと思います。

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