コラム

 公開日: 2016-03-19 

ベトナムでの人の採用と育成


海外投資が成功するか否かは、全て人にかかっていると言っても過言ではありません。しかも海外展開は一から始めるわけですから、日本人出向社員の人選一つで会社が立ちいかなくなることもありますし、いかに優秀で権限移譲できる人材を採用し育成できるかにかかっています。その人材採用・確保と人材育成について述べたいと思います。

現地会社責任者の人選


まず進出する第一歩は、日本人出向責任者の選択です。現地会社の責任者に求めらえる資質としてはどのようなものがあるでしょうか。海外の文化や考え方を理解し適応力のある人が一番であり、もちろん事業の専門家であることは最低条件であろうと思います。どんなに日本で優秀と言われる人であったとしても、海外では全然使い物いならないことも数多くあります。不思議なことに、日本で全然役に立たないと評価されている人でも、海外事業場では生き生きと働き、現地スタッフを育て業績を上げている責任者の方も多く見ます。

やはり一番の要因は、本人のリーダーシップとエネルギッシュなやる気と行動、ローカル社員から尊敬と信頼を受ける人間力ではないでしょうか。いくら専門知識があっても、常に上から目線で仕事をしている人には、ローカル社員がついてきませんし、結果として人が育ちません。組織もバラバラになって実績が上がらないのです。そうなるとマイナス思考のスパイラルに陥り、最後はメンタルに支障をきたすことにもなりかねません。海外責任者に適した人の条件は下記のようなものだと思います。

① 専門知識が豊富なベテラン社員より経営感覚がある社員
② 人をやる気にさせ育てる能力がある社員
③ トラブルを自ら先頭に立って解決する能力のある社員

以上なのです。けっして営業成績トップの人とか、頭の回転の良い人とか、技術や製造に精通している人とか、言葉ができる人などではないのです。

人材採用のポイント


日本人の責任者がまず行うのはローカル人材の採用からです。最初は、総務・人事系の責任者の採用です。この人が法人立ち上げ時に獅子奮迅で頑張っていただくキーパーソンになりますので、慎重な人選が求められます。この人材は単なる社長補佐ではありません、会社の組織構築や制度設計、新たな人材採用の要となります。通常、現地の人材紹介会社に登録されている方を面談して採用するというプロセスになりますが、最近では日本で働いている外国人の方を日本で採用して、立ち上げ前から日本での業務に精通してもらって現地に帰国してもらい、幹部として頑張っていただくというチャネルも広がってきているようです。

① 人材の募集方法

最初のスタッフやオペレーションのキーパーソンは人材紹介会社を通じて採用するのが一般的で、採用費用としては紹介料として年間給与総額の2か月分です。事業が立ち上がって順調に拡大したときには、自社のホームページでのリクルート情報から応募を受け付けて採用することもあります。また、ワーカーについては、人材紹介会社ではなく、新聞広告または工業団地の掲示板での募集や、地方や大学を訪問しても採用説明会などを通じて行います。

② 採用面談と賃金動向

採用面談は、一次は人事・総務担当者が行い、ある程度スクリーニングを行います。いくら優秀であったとしても、募集業務内容とのずれや、能力と要望給料のレベル、出せる給料とのずれがあるため、絞り込みをまず行います。そのうえで、二次面談として直接上司となる人が試験官となって採用するべきかどうかを判断します。特に気を使う必要があるのが給与相場です。給与は職務内容や専門分野、地域などで差が大きいため、常に外部から相場情報を入手しておかなければなりません。ずれたままにしますといつまでたっても必要な人材が集まってこないばかりでなく、能力の割に高い給料を出してしまって相場を崩してしまったり、逆にいつまでたっても欲しい人材を採用できないことが起こります。

賃金相場が上昇しているときに起きやすい現象として、新しく採用する人の方が、同じレベルの仕事で長年頑張って働いてくれている現在の社員より給料が高くなってしまうことがあります。ベア、つまり賃金表の書き換えが年度途中でも起こりうるので、既存社員の差をどこかの時点で調整しなければバランスが取れません。理想的には年一回の昇給時期に調整するのですが、定昇とベアのカーブが大きいだけに、最低賃金の上昇率と連動するベア率が10%であったとしても、定昇カーブを考えたとき、実際には10数%の人件費上昇を見込む必要がります。

③ 本採用・雇用契約

面談後、採用となりますと、雇用契約を結ぶわけですが、ベトナムでは法定の試用期間があります。スタッフは通常2か月、ワーカーは1週間で見極めて、雇用契約を締結することになります。もちろん試用期間に問題があれば雇用契約を結ぶ必要はありません。試用期間後の本採用では、雇用契約書に労使双方の権利、義務、解雇条件などに留意し、罰則規定などは明確かつ具体的に書く必要があります。

また最初から無期雇用契約ではなく、当初2年間は1年の有期雇用契約と繰り返し、問題がなければ3回目の雇用契約更新後に無期雇用契約となります。この2年間で問題がある社員に対しては、雇用契約更新時に更新しないということで対応することが無難です。無期雇用契約の社員を解雇するには相当難易度が高くなることを留意するべきです。

具体的人材育成(訓練・教育・育成)のポイント


ベトナム投資のメリットとして労働コストが安価であるとよく言われます。しかし、これには落とし穴があり、「労働コストは低いが教育コストがかかる」という理解をした方が良いと思います。

① ワーカーに対しては【訓練】を主体に

特に、地方から出てきたワーカーにとっては、大都市近郊の工業団地のしかも日本企業で働くということは、異次元の世界に飛び込むことと同じと理解し、根気よく教育訓練する必要があります。身だしなみから時間管理、報連相の基本からゴミを床に捨てないなど社会人としての常識レベルから始めることが求められます。まさしく就業規則の遵守を徹底することや、生活習慣を社会人一般レベルまで引き上げるため身体で繰り返し覚える訓練を主体に進めます。

② スタッフに対しては【教育】の考え方で

管理部門のスタッフは、教育することでどんどんレベルが上がりますので、自主性を重んじるよりOJTを主体に実践指導していくことを中心にし、課題解決に挑戦する姿勢を高めるための経験の場を与え続けること、そのうえでチームワーク、相互信頼感を構築していくために自主的に考えさせるという指導方針が有効です。

③ マネージャーに対しては【育成】する

ベトナム人自身も日本人という異文化の考え方に慣れていませんので、日本人と一緒になって経営を推進していくための相互信頼関係の構築や日本マネジメントノウハウの取得などに焦点を当て、思い切った権限移譲で育てていくという取組みが必要です。人事管理や現地販売マネジメントなどは日本人責任者より有能で適しているところもありますので、適材適所の考え方で育成し、究極的には経営の現地化の実現を目指します。

この記事を書いたプロ

リープブリッジVJ中小企業診断士事務所 [ホームページ]

中小企業診断士 杉浦直樹

大阪府大阪市中央区久太郎町4-2-15 星和CITY BLD御堂ビル6階 御堂筋センターオフィス内 [地図]
TEL:06-7878-6531

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
海外赴任者研修

海外事業の成功には、海外要員、特に海外出向責任者に対する徹底した経営研修が必要です。経営スキルが不足している日本人社員を海外拠点の責任者として赴任させる...

 
このプロの紹介記事
リープブリッジVJ・杉浦直樹さん

海外進出を図る企業を総合的に支援(1/3)

 中小企業診断士の資格を持つ人は、国内に大勢います。しかし、海外に目を向けて、中小企業の立場に立って機動的に一緒に現地へ赴き、全般的に海外展開支援できる独立診断士は、それほどいないでしょう。リープブリッジVJ中小企業診断士事務所代表の杉浦直...

杉浦直樹プロに相談してみよう!

読売新聞 マイベストプロ

みなさまの海外での事業展開を全力で応援します

会社名 : リープブリッジVJ中小企業診断士事務所
住所 : 大阪府大阪市中央区久太郎町4-2-15 星和CITY BLD御堂ビル6階 御堂筋センターオフィス内 [地図]
TEL : 06-7878-6531

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

06-7878-6531

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

杉浦直樹(すぎうらなおき)

リープブリッジVJ中小企業診断士事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
新興国展開での人材育成の注意点
イメージ

中小企業が新興国に事業展開して一番苦労されるのがヒトのマネジメントです。特に人をどう採用し、育てて事業経...

[ 海外事業の人事労務管理 ]

自責と感謝の念が成功発展の源
イメージ

物事がうまく進まない、次から次への難題が降りかかってくる。会社を経営すると日々問題にぶつかります。一つ...

[ 経営戦略 ]

外国人技能実習制度の問題に思う
イメージ

外国人技能実習制度が導入されて約20年になります。しかし、近年では本来の目的とは違った運用、つまり日本で...

[ 雑感 ]

人を大事にする経営は企業の社会的責任
イメージ

先日、「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者で有名な坂本光司先生の講演を聞く機会がありました。以前より...

[ 経営戦略 ]

ベトナム進出後の課題に寄り添う
イメージ

中小企業のベトナム進出を検討するにあたっては、ジェトロなどの公的機関の支援制度や大手コンサルタント、会計...

[ ベトナム投資 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ