コラム

 公開日: 2016-03-22 

現地企業間での情報交流のメリットと注意点


ベトナムに限らず新興国進出においては、法律の運用の曖昧さや頻繁な法改正によるトラブルはよく発生します。トラブルを事前に回避するために、アドバイザーの支援に加え、企業自ら積極的に公式、非公式の企業間交流を通じて事前情報を得ることにより、リスク低減につながる場合が多いと思います。

海外での企業間交流が新たなビジネスチャンスに


自社で起きたトラブルは、大抵他の日系企業でも発生しているケースが多いのが実態です。その解決方法やマネジメントノウハウについて、他社の事例を学び、経験を生かすためにも、日系企業間での人的つながりは特に新興国では重要です。多くの企業が各新興国に進出しているとはいえ数も限られていますので、日本よりも企業間の距離は極めて近く、企業間の交流は濃密であると思います。

日本の場合は、経済関連団体や商工会議所などが交流の場になりますが、参加企業数も多く、新たな販路開拓や新規事業への展開には結び付きにくい面があろうかと思いますし、いきなり今までお付き合いのない新規顧客にアプローチしても、門前払いされることが多いと思います。

しかし、海外では進出企業間での交流が密であるだけに、全くお付き合いしたことのない企業であったとしても、何らかのルートでつながりが出てくる場合があり、調達そのものでも他企業からの情報を求めているところが多いので、新たな事業提案を持ってアプローチするアポイントは比較的取りやすいと言えます。過去、どんなに日本の親元からアプローチしても会ってももらえなかった大手企業に対して、現地法人間での情報交流をきっかけに、新たな商売が日本で始まるということも実際ありますので、海外事業をきっかけに販路拡大につながる可能性も高まります。

現地での情報交流チャネルを生かす


海外では公式、非公式の企業間交流の機会が多くあります。特に、大企業と中小企業との交流、また政府関係機関との情報交換を通じての最新情報の入手や、政府への要望などへの展開など、幅広い活動につなげることが可能です。中でも小規模の企業であるほど、情報ネットワークの活用メリットは非常に大きいものがあります。その近さを生かした活用できるネットワークとそのメリットについては下記のようなものがあげられます。

① 工業団地内情報交換会

多くの製造メーカーはどこかの工業団地に入居されておられますが、それぞれの工業団地では、テナント企業へのサービスの一環として毎月定例の情報交換会があり、だいたい昇給や福利厚生などについての情報交換が主要議題となります。そこで政府の最低賃金引き上げの状況についての情報提供や、採用状況、賃金相場状況についての情報を入手できることで、突出した賃金の提示や、退職が増えるような待遇、管理などについて避けることが可能となります。これらはストライキを避けるためにも重要であり、一か所でストライキが起こると工業団地内の他の企業に飛び火したり、近隣工業団地にも迷惑がかかります。日系の工業団地に展開されておられるところは、近隣の工業団地で、中国や韓国、台湾などの外資系企業がどのような動きをしているのかという情報も入ってきますので、人事管理面でのリスクを避ける意味でも大変重要かと思います。

② 日本人商工会

ベトナムではホーチミン、ダナン、ハノイそれぞれで日本人商工会があり、幅広く多くの企業が会員となっています。タイやマレーシア、インドネシアなどアジアの各国でも日本人商工会がありますので、情報交流の場として活用できるだけでなく、日本企業全体に対する課題を政府に要望する場合など、一社ではどうにもならないことも、日本企業がまとまって意見を上げていくという意義があります。基本は会員企業による業界別の部会活動であり、ゴルフなど交流の場も提供されています。企業規模にもよりますが、だいたい年間2000ドルぐらいの会費は必要ですし、一方的に情報を受けるだけでなく、自ら積極的な活動関与が求められますので、時間が取れないということで参加に躊躇されるところもありますが、会員企業数は着実に右肩上がりで増加しています。企業間の距離が近いだけに、日本での商工会議所や地元商工会よりも遥かに経営的メリットが大きいと感じますので、積極的な加入と活動をお奨めしたいと思います。

③ ジェトロ・JICA・日本大使館

新興国進出にあたって公的機関との連携を密にすることのメリットは大きいです。現地の公的機関と一般企業との距離は、皆さんが日本で想像しているよりはかなり短いと思います。つまり国の行政と非常に近いところで事業ができるのです。もちろん、日本人商工会とも連携が深く、商工会活動を通じて公的機関と情報交流することもありますが、実際現地の公的機関に企業が直接相談や提言を持ちかけても大丈夫です。一部人にもよりますが、公的機関に出向されておられる方は、全般的に丁寧かつ親切な対応ですし、企業にとって有益な情報を提供していただけます。しかもほとんど費用がかかりません。一方、公的機関にとりましても、一般企業と情報交流することによって新規の政策に生かすことができますし、政府プロジェクトへの企業参画、また政府関係者や支援制度よる企業訪問受け入れなどの協力関係構築が相互によって非常に有益であるため、良好な関係を築くことが可能です。日本企業の支援や日本人擁護、国の政策実現のために公的機関が存在していますので、むしろ企業側から積極的に情報提供することが歓迎され、企業としてもフルに活用する価値が十分あると思います。

④ 県人会・同窓会他

海外では公的な情報交換だけでなく、非公式な交流の場が数多くあります。典型的なものとしては、県人会や大学の同窓会がありますし、その他に様々な趣味、サークル、勉強会、プロ野球ファンの集いなどが山のようにあります。中小企業の現地法人出向者は、人数も限られているだけに、こういった集まりに積極的に参加されることで人的ネットワークが広がり、思いがけないことから新たな販路開拓のパートナーが見つかったりすることもまれではありません。一番よくあるのが、こういった公式、非公式なグループが行う懇親会、つまり飲み会とか、ゴルフコンペが最も活用されているケースかと思います。ゴルフは絶対にしないという方もおられますが、ゴルフは日本以上に人的ネットワークに活用される要素が大きいので、私のような下手なものでも仲間に入れてもらって楽しく過ごせるだけでなく、仕事の幅を広げることにも有効であると思います。

情報交流での注意点


現地での情報交流は重要ではありますし、企業自ら積極的な参画が求められますが、一点だけ注意を要することがあります。それは同業他社との情報交換です。基本的に同業他社とだけの会合での情報交換は避けるべきです。典型的なカルテルの問題で疑いをかけられる恐れがあります。もちろん、情報交換の場で、販売価格や数量、顧客に関する情報をやり取りした時点でカルテル行為となります。商工会の場で業界別部会で同業他社と同じテーブルにつくこともありますが、あくまでも商工会での課題に関するものに限定されるべきで、直接同業他社と話をすることは避けるに越したことはありません。また、国の新しい法律に対して、業界としてどう対応するかということの意見を集約する必要が出る場合がありますが、現地では日本機械工業会のような業界団体の現地組織がありませんので、ややもすれば直接メーカー間で連絡を取り合う必要性も考えられます。しかし、ここは要注意です。もし海外でのカルテル行為が発覚した場合、日本の法律で罰せられるだけでなく、欧米市場からペナルティを受ける危険性も出てきます。ただ、カルテル行為をしていなくても、同業他社と会合を持てば疑いをかけられる恐れがありますので、国の法律対応という特定課題に絞っては、商工会主催で説明会で行うというような形にする工夫が必要です。

このように情報入手の努力は各企業が自発的にかつ積極的に行うべきですが、一方でコンプライアンス上のリスクも出てきますので、外部アドバイザーの意見も十分に踏まえられた方が良いと思います。

この記事を書いたプロ

リープブリッジVJ中小企業診断士事務所 [ホームページ]

中小企業診断士 杉浦直樹

大阪府大阪市中央区久太郎町4-2-15 星和CITY BLD御堂ビル6階 御堂筋センターオフィス内 [地図]
TEL:06-7878-6531

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
海外赴任者研修

海外事業の成功には、海外要員、特に海外出向責任者に対する徹底した経営研修が必要です。経営スキルが不足している日本人社員を海外拠点の責任者として赴任させる...

 
このプロの紹介記事
リープブリッジVJ・杉浦直樹さん

海外進出を図る企業を総合的に支援(1/3)

 中小企業診断士の資格を持つ人は、国内に大勢います。しかし、海外に目を向けて、中小企業の立場に立って機動的に一緒に現地へ赴き、全般的に海外展開支援できる独立診断士は、それほどいないでしょう。リープブリッジVJ中小企業診断士事務所代表の杉浦直...

杉浦直樹プロに相談してみよう!

読売新聞 マイベストプロ

みなさまの海外での事業展開を全力で応援します

会社名 : リープブリッジVJ中小企業診断士事務所
住所 : 大阪府大阪市中央区久太郎町4-2-15 星和CITY BLD御堂ビル6階 御堂筋センターオフィス内 [地図]
TEL : 06-7878-6531

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

06-7878-6531

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

杉浦直樹(すぎうらなおき)

リープブリッジVJ中小企業診断士事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
新興国展開での人材育成の注意点
イメージ

中小企業が新興国に事業展開して一番苦労されるのがヒトのマネジメントです。特に人をどう採用し、育てて事業経...

[ 海外事業の人事労務管理 ]

外国人技能実習制度の問題に思う
イメージ

外国人技能実習制度が導入されて約20年になります。しかし、近年では本来の目的とは違った運用、つまり日本で...

[ 雑感 ]

人を大事にする経営は企業の社会的責任
イメージ

先日、「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者で有名な坂本光司先生の講演を聞く機会がありました。以前より...

[ 経営戦略 ]

ベトナム進出後の課題に寄り添う
イメージ

中小企業のベトナム進出を検討するにあたっては、ジェトロなどの公的機関の支援制度や大手コンサルタント、会計...

[ ベトナム投資 ]

ベトナムサッカーの歴史的快挙に拍手
イメージ

日本ではあまりニュースになっていませんが、U19のサッカーAFC選手権がバーレーンで行われ、日本は決...

[ ベトナム人との付き合い方 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ