コラム

 公開日: 2016-03-27  最終更新日: 2016-03-28

日本人出向駐在社員の研修の必要性 ~最大の経営リスクは日本人そのものが原因~


海外事業法人を立ち上げますと、経営責任者は当然、管理部門や営業など何人かの日本人出向・駐在社員が現地に赴任します。海外勤務を何度か経験している大手企業の社員は別にして、おそらく過半数は海外勤務が初めてというのではないかと思います。

ある規模以上の企業では、海外赴任させるときには語学研修に加え、海外生活セミナーや異文化コミュニーションの研修を受けさせる会社が多いところが多いと思いますし、海外赴任しない社員に対してもグローバル研修を実施されているところも相当あります。しかし、中堅規模の企業で数人以上の社員を赴任させている企業でも、海外経営を体系的に学ばせる研修ノウハウを持っているところはかなり少ないと思います。

日本人海外赴任者の研修の重要性


今までのコラムでは現地社員のマネジメントに関する課題を中心に述べてきましたが、実は海外経営のリスクの多くが日本人出向社員に起因しています。赴任前に行う研修もある程度有益ですが、実際は大手企業であったとしても海外赴任者に赴任後も継続して研修の機会を与えているとは言えません。全て海外勤務の実務で経営を勉強することで放任しているのが現状ではないでしょうか。

ところが海外赴任者が起こす問題が、会社全体の経営危機に影響する事例には枚挙に暇がありません。その意味からも海外赴任者の経営理念の実践からマインド革新や組織マネジメント、リーダーシップ、経営管理、ビジネスモデルやマーケティング理論、コンプライアンス・リスクマネジメント、企業ビジョン、競争戦略構築と実践、そして財務・ファイナンスなどの経営基礎知識や語学まで、広範な領域で深い経営ノウハウを身につけなければなりません。しかし、日々の実務だけでは到底身につけられるものではなく、海外赴任者に対する体系的な研修プログラムを構築する必要があります。特に赴任後、本人の自己研修や昇格時研修などで適当に済ませていては経営能力の向上に繋がらないばかりか、海外法人の経営問題のリスクが高まったり不祥事が起きる要因にもなります。日本人社員研修を実施して恒常的に能力開発を求めていくことは、将来の会社全体のグローバル経営の成否を握るといっても過言ではないと思います。

海外赴任前の研修の実際


海外展開の歴史があり、海外要員を計画的に育成していかねばならない企業では、階層別に組まれている研修で、経営理念の実践や組織・ヒトづくり、リーダーシップなどマインドセット、財務やマーケティングや経営分析などの経営スキル開発、そして経営革新や戦略構築など構想力や洞察力の能力開発などをレベルを合わせて体系化し実践しています。この実践プログラムの中で、グローバルな視点や海外事例を組み込み、語学研修とTOEIC基準を設定して、海外要員の育成と社員のグローバルマインド醸成に繋げています。

しかし、実際には交代要員の都合で、研修が不十分な段階で海外に赴任させられ、現地でも十分な組織マネジメントの能力もなく、知識やノウハウもマインドも学ぶ研修機会を与えられないのは、本人だけでなく海外法人の現地社員にとっても不幸ですし、会社全体にとっても勿体無いことです。大企業だけでなく中堅、中小企業にとっても、海外赴任者の赴任後の研修は大きな経営課題であると認識すべきです。

海外赴任後に現地で行う研修


海外に赴任しますと、ほとんどが日本での職務の内容から一気に責任権限の範囲が広がります。いきなり偉くなるのです。部下の数も比べ物にならないくらい増えます。経営責任者であれば尚更です。今まで製造の課長レベルのポジションで仕事をしていた人が、突然全てを決める立場になるのです。しかし、ここで多くの人が誤解します。その責任者として赴任してきたということと、マネジメント能力を備えているということは違うのです。能力があるからそのポジションに抜擢されて赴任してきたというのは大きな誤解であり、少なくとも海外勤務ではそういうケースはほとんどないでしょう。

つまり新たに海外に責任者として赴任してきた人は、自分の実力はまだまだそのポジションに相応しい力を備えていないと認識し、自らもっと自己研鑽に励み、日本のトップからの期待や現地スタッフの信頼に応えていく必要があります。自分は製造出身だから営業がわからないし言葉ができないというのは甘えに過ぎません。経営責任者として失格です。語学が不得意なら、寸暇を惜しんで家庭教師を雇ってでも勉強するべきなのです。営業出身だから販売計画達成にしか関心がなく、収支や資金繰りは経理に任せっぱなしでヒトの育成も人事の担当者任せ、このような会社は早晩経営が行き詰まります。

少なくとも日本人の出向責任者は、経営の全てに精通できるオールマイティの経営管理スキルと経営革新マインドを身につけてなければ職責を全うできません。ただ中途半端なスキルで海外赴任させた親元本社としては、海外赴任者の教育をきちんと実施して海外経営に通用する人材に育成する責任があります。日本に出張させた時に研修するのも方法の一つですが、現地を留守にしている期間なので、大概仕事に追いまくられて研修どころではないのが実態かと思います。極力現地で日本人出向社員を集めて、ファシリテーターと人事社員による出前研修が効果的な感じがします。

海外では「経営理念の実践」「組織・人事マネジメント/リーダーシップ」「コンプライアンス/リスクマネジメント」「中長期戦略ビジョン」「マーケティング/営業開発」「財務会計」などを優先的にテーマ設定することが求められます。

海外赴任者研修の留意点


相当幅広い経営ノウハウを研修するプログラムを作るときに留意する点があります。ここで人事部門が冒す間違いが、テーマごとに有名な専門家の講師を個別に選定してレクチャーさせて満足していることです。受講者は全てのテーマの専門分野に精通しているわけではありません。いくら専門知識ばかり説明されても頭に入りません。特に高い講師料を払い、有名な大学の先生を呼んでマーケティング理論を講義されても効果が少なく、オールラウンドプレーヤーである海外出向責任者の視点で教えられるオールラウンドファシリテーターが講師として望ましいのです。

一番効果的な研修は、各テーマを経営実践の一つのストーリーとして繋げて、具体的に実際の経営課題の位置づけとしてマネジメントのあるべき姿から受講者に気づきを与えられるような、一人のファシリテーターによる一気通貫の進め方にすることです。経営理念、組織人事、マーケティング、財務会計、モノづくり、オペレーション、経営戦略それぞれは個別課題ではなく、経営ストーリーとして一人が全てをカバーできるようなファシリテーターに依頼するのがベストです。

しかも、そのファシリテーターは海外経営の経験があり、大企業だけではなく中小企業の経営にも関与している講師が望ましいと思います。「そんなファシリテーターどこにいるのか?」とお叱りを受けそうですが、海外実務経験のある中小企業診断士であれば、十分スキルとノウハウを持っています。「安心してください、ここにいますよ」…と言うことで、最後に私自身についてステマさせていただきます。某企業のグローバル社員研修やベトナムのODAの案件として経営人材育成の経営塾講師もさせていただいております。企業様の海外経営人材育成プログラムの構築の提案から海外拠点での研修講師としての研修ファシリテートまでカスタマイズした研修を一気通貫で請け負わせていただくことが可能です。

ご興味おありの企業様はお気軽にお問い合わせ下さいませ。

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