コラム

 公開日: 2016-04-22 

テトのお年玉は誰にいくら渡す? Chuc mung nam moi


ベトナムの一年で一番大きなイベントはやはりテト(旧正月)です。祝日がおそらくアジアで一番少ない国ではないかと思いますし、まだまだメーカーでは週休二日制が普及していませんので、土曜日出勤も多く結構実労働日数が多いため、日本人出向社員にとっては少々辛いところです。まとまったお休みは日本人にとってもテト休暇期間ということになります。

ベトナム人にとってテト休暇は最も重要ですので、ほとんどの人は帰省して家族親戚と一緒に過ごすことが普通です。この期間は、ハノイやホーチミン市など都会ではほとんどの店が閉まっていますし、タクシーも掴まらないので、この期間に残っていると結構食事をするにも不便です。テト前に食材を買い込んで、じっと家に閉じこもっていることが多く、日本人にとってはあまり楽しい期間ではありません。しかし、ベトナムでも観光客相手の商売やホテルなどはテトでも稼働していますし、最近開業したイオンではテト期間でもオープンしており結構にぎわっていました。だんだんとライフスタイルも変わってくるのではないかと感じます。

テトのお年玉


ベトナムだけに限らずお正月には目上が目下にお年玉を渡す習慣があります。日本でも子供たちは正月に貰えるお年玉を楽しみにしています。しかし子供たちが貰えるのは両親や親戚が中心でしょうし、大人になると当然貰えません。一方、ベトナムの習慣では、子供、大人関係なく、幅広く目上が目下にお年玉を渡すのが一般的です。目上の立場にいる人が目下の人に一年の感謝を伝えるという意味があり、新年もよろしくお願いしますという気持ちを形にしてお年玉を渡す習慣です。日本と同じようにポチ袋に現金を入れて渡します。その意味で家族親戚だけではなく、職場においても幅広く行われており、もちろんポケットマネーから渡します。

日本人はどう対応するか


日本の職場では上司が部下にお年玉を渡すなんてことは考えられませんので、最初は戸惑うのですが、この習慣をうまく職場でのコミュニケーションに使うこともできるのではと思います。

まずサービスアパートに入っておられる方や部屋のクリーニングをお手伝いさんに頼んでおられる方は、そのお手伝いさんが長く担当してくれているのであれば、テト前に少し多めに渡してあげると非常に喜ばれます。金額は気持ち次第ですが、まあ多くても20万ドン(1000円)ぐらいで十分でしょう。これは後々サービスが良くなるということもありますし、部屋から物がなくなるということを防ぐ意味もあります。

日本人にとって一番多く渡した方が良いと思うのは、通勤に使っている社用車の運転手です。通勤にタクシーを使っている方は別ですが、日系企業の日本人出向社員は社用車で通勤されておられる方が結構多いと思います。一般的に社用車はレンタカー会社との契約で提供されていて、運転手も決まった人が担当します。運転手はだいたい給料も低く、朝早くからアパートの前で待機し、夜遅くまでの接待や会合の食事が終わって帰宅するまでの長い勤務時間になるので、昼間は時間を持て余してしまうのですが、時間的には結構きつい仕事です。運転手は業務サービスを提供している側なので、残業代さえ払えばいくらこき使っても構わないと考えている日本人出向社員もいるようですが、たとえ会社の社員でなくても、人と人との付き合いですから、ちゃんと配慮してくれる人には運転手としても少々の無理を聞いてくれますし、敬意をもって接してくれます。また運転手は担当している日本人出向社員の日常行動がほぼわかっていますので、もし毎晩飲み屋に入り浸っているなど良からぬ振舞いも見ているわけです。少し大きい会社で複数の社用車を使っている場合には、運転手間でそういった噂はすぐに広まります。テトのお年玉を渡しておくことが口止めになるという意味ではありませんが、日ごろからうまく運転手とコミュニケーションをとって、いつもお世話になっている気持ちをテトのお年玉に込める意味は大きいと思います。運転手から嫌われる日本人は、だいたい職場でも信頼されていない存在というのが一般的な法則といえます。運転手には多めにお年玉を渡しますが、それでも1百万ドン(5000円)ぐらいだったと思います。社長さんでしたらその倍ぐらいは渡しても良いのではと思います。

職場では、守衛の方とか、食堂の業者さんとか、掃除サービスの方とか様々な外部支援サービス提供者がおられます。会社として決まった額を渡すことをルール化することもありですが、お年玉の基本は個人と個人ですので、社長自身が自分のポケットマネーで感謝の気持ちを伝えてテトを祝うことが良いのではと思います。金額は多くても5万ドン(250円)か10万ドン札一枚で十分です。「社長自身が業者のワーカーの立場である自分たちにお年玉をくれた」という意味は重く、ワーカーそれぞれの家族、親戚間でも、「ここの会社は素晴らしい、ベトナム人従業員や外部業者まで気にかけてくれている」という口コミが広がり、結局会社への信頼感向上に繋がるのです。職場風土はこういった些細なことから出来上がっていくものだと強く感じたものです。

あと職場では部下に対してお年玉を渡すのかということがあります。日本人の受け止め方にはいろいろとあると思いますし、日本人出向社員はそのようなことをするべきではないと信念を持っておられる方は、それはそれで結構だと思います。お年玉とはいえ、お金で部下の信頼を得るというような行為そのものは良くないと考えられるのも理解できます。また、大規模会社になりますと従業員だけで何千人というところもありますので、社長がポケットマネーでお年玉を渡すことは非現実的です。その場合には、会社の制度として、従業員全員に年末ギフトを配るというやり方が考えられます。ただ、何にもしない会社というのは、あまりベトナムの習慣を大事にしていないと受け止められても仕方がないところですので、テトのときのギフトやお年玉については、それぞれの会社や社長ご自身で検討されるのがよろしいのではないでしょうか。

私自身は会社のトップではなかったので、管轄している部門の人数は限られていました。それでも守衛を含み外部業者のスタッフを入れますと数十名になりましたが、それぞれ5万ドンを一枚ずつポチ袋に入れて、感謝の気持ちとして渡していました。まあそれでも日本円にすれば1万円から1万5千円程度ですので、日本人の給与レベルから考えますと、年に一度のお年玉としては大したことではありませんし、実感として職場でのコミュニケーションにも資するものではなかったかと思います。

現地の習慣を大事にすることの意味


テトにお年玉を渡すのは現地の習慣を大事にしていることの裏返しになります。自分は日本人だからそんなことはやってられないという発想をする人は、海外駐在員としては適格ではないと思います。違法なことはダメですが、極力現地の生活や習慣に溶け込むことから、従業員との信頼感を醸成するだけでなく、社外でも多くの友人を得ることに繋がるのではないでしょうか。海外では、上から目線で従業員や外部業者に命令するだけでは真の人間関係は構築できません。常に相手の立場に立って、人としての尊厳をもって接することが大事です。これは日本でも同じことなのですが、運転手だからとか、掃除スタッフとかということで相手を見下すのではなく、日ごろお世話になっている同じ職場のパートナーという気持ちがあれば、相手にも感謝の気持ちが伝わり全てうまくいくような気がするのです。ベトナムでのお年玉の習慣は小さなことかも知れませんが、コミュニケーションの重要性を教えてくれる習慣として大事にしたいものです。

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