コラム

 公開日: 2016-06-16 

ベトナムで経営シミュレーション研修を実施


今週はベトナムのハノイに来ています。今回は毎年JICAを通じたODAにおける人材育成支援の一環で、外務省が設置しておりますベトナム日本人材協力センターでの「経営塾」研修プログラムでの日本人講師として、今週は5日間をハノイで、そして来週5日間をホーチミンに派遣されています。「経営塾」はベトナム企業の経営者層を対象に実践経営を学ぶプログラムで、足掛け10か月ほどかけて各5日間を1セッションとして合計8セッションの研修と、最後に日本研修を含む非常に中身の濃い研修として定着しています。私はここ3年連続で派遣され、「ビジネスプラン」のセッションで経営計画の立案、実践に関する講義を担当しています。

もちろん一方的な講義では身につかないので、自ら会社を創業するプランを策定するワークショップに時間を割いていますが、本年の新たな取り組みとして、より経営の本質を体験するために、初めて経営シミュレーションのプログラムを組み入れました。日本ではいろんな経営シミュレーション研修というのが紹介されていますが、海外で実施するにはあまり複雑なものは難しく、シミュレーション研修のツールも日本語版しかないのがほとんどで、また実施費用も大変高額です。そこで中小企業診断士の方が創業され経営シミュレーションゲームを開発されて事業展開されている「ビズストーム㈱」の全面的なご協力をいただき、ツールの英語版製作を共同で行い、今回ベトナムで初めてビズストームの経営シミュレーション研修を実施することができました。

ビズストーム㈱ URL http://bizstorm.jp/

試行錯誤のハノイでの初の実施

初めての海外実施であるため、当初からいろいろトラブル可能性はあるだろうと予想していました。また私自身がインストラクターとして行う研修は今回が初めてで、それがいきなり海外、しかもベトナムで行うということですから、実際どうなることかと心配しておりました。

相手はベトナム人ですので、全て英語での研修というわけにもいかないため、経営カードなどのツール類は英語版を用意し、ゲームルールの説明や振り返り解説については、プレゼン資料をベトナム語に翻訳し、実際ゲームで日本語とベトナム語の逐次通訳で実施する方法をとりました。そのため時間が相当かかるということを予想し、フルバージョンではなく、短縮版で朝10時半から昼食をはさんで4時半まで続けるプランを準備して臨みました。

今週は連日猛暑が続き当日の最高気温が40度に達している中、それこそ熱い研修が始まりました。当初、ルールの説明を10時半ぐらいから始めて12時までにトライアルの3年分を終了するつもりでおりましたが、やはり日本語からベトナム語に逐次通訳するときに、意味が完全に伝わらないことが多く、また初めて目にするカードを使って市場ボードや商品カードとの関係など、それこそ一つひとつで質問が百出し、参加者が24名と大人数であったために、理解度にばらつきがあることからなかなか前に進みません。日本人であれば感覚的に掴める内容でも、ベトナム人にとっては初めて聞くこともあったり、メンバー間であれやこれや仲間うちで解説をしたりして、全然聞いていなかったりすることも多く、相当大変な実施のスタートになりました。ルールの確認を行うだけで、12時半までつまり2時間近くかかってしまいまして、海外でしかも大人数に対して通訳を通じて行うことの難しさを感じました。

そして昼食をはさんで午後からトライアルの残り2年目、3年目と行い、時間の関係で振り返りなしに、続いて本番の中級1年目から再スタートしました。そうしますと中級の3年目ぐらいになるとだんだんと呑み込めてきたようで、どんどん進んでいくのですが、むしろあまり経営戦略を考えずに行き当たりばったりで商品カードを作って投入する人が多くなりました。関心は市場ボードを開いて顧客ゲットすることの楽しさに移り、どちらかといえば賭け事に近いような面白さに異様な興奮を覚える参加者が多くなりました。

結局本番の中級5年目を終わった時点で午後一杯の時間を使ってしまい、振り返りを一切行うことなしにその日のシミュレーションゲームは終了しました。そして、研修の次の日のセッションで、この経営シミュレーションゲームの振り返りを改めて行い、その時点でようやく参加者それぞれが経営要素が詰まった当ゲームの意義について腹落ちしたようです。参加者の感想を聞いてみますと、最初はルールを理解することが難しかったが、経営カードを使って商品力や販売力を長期的視点から強くしていくことが経営結果につながることを、このゲームから体験でき大変有意義であったという声が多くありました。そして来年以降もこのシミュレーションを研修プログラムとして継続して組み入れることについては、ほとんどの人が賛成をしてくれていました。

またベトナム人の面白いところですが、そういった解説説明を聞いて、もしもう一回同じシミュレーションゲームを行ったらトップを取れる自信があるかと尋ねると、全員が手を挙げたのには驚きました。暗中模索の中での経営シミュレーション研修の海外実施でしたが、来週21日にもホーチミンで別のメンバーを対象に「経営塾」でもう一度実施する予定です。今回うまく行かなかった点を少し工夫してみたいと思います。

経営シミュレーション研修の面白さ

私が経営シミュレーション研修を是非実施したいと思ったのは、会社勤務時代に受けてさまざまな研修の中で、経営シミュレーション研修が一番印象に残ったのを覚えており、その後の会社での経営実践において大きな影響を与えたものであったからです。ちょうど25歳ぐらいのころだったと思います。いろいろな海外要員専門研修のプログラムがあり、その中で受けた一泊二日の経営シミュレーション研修で、初めて経営実践とはこういうことかと学ぶ機会に出会ったことが非常に衝撃的でした。その時までは経営とは無借金経営が正しいんだという思い込み(研修で刷り込まれた部分もあります)があり、経営シミュレーションで借金をして積極的に成長戦略の布石を打っていくことなど思いもよらなかった意識がありました。とにかく堅実経営で毎年きちんと利益を上げるために慎重に経営判断をしたつもりでした。しかし、その結果投資しなかったつけが効きはじめ、3年目ぐらいから競合他社に全て市場を押さえられてしまい、売上が確保できなくなる事態か続いて坂道を転げるように赤字が膨らんでいった怖さを体験しました。生きたカネを使わないと経営は悪化するという体験は強烈で、今までの常識を根底から叩きのめされた研修で、その後の会社人生を通じての仕事の視点に大きな影響を与えてくれました。

今回はベトナム人向けの研修でしたが、日本企業の若手人材育成のためにも、是非経営シミュレーション研修を受けていただきたいと思います。シミュレーション研修なので失敗してもクビになることはありません。むしろ経営実践の学びを行っていない人材が無謀にもいきなり海外現地法人の責任者になったり、本体の幹部職ポジションについていくことが大きな経営リスクとなります。海外で初めて経営シミュレーション研修を行った機会に改めて経営実践研修の有効性を強く感じました。

この記事を書いたプロ

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