コラム

 公開日: 2016-06-28 

海外進出にあたっては確かな物流パートナーを


製造業の海外展開では「物流」をどううまくコントロールできるかが事業の成功要因の一つです。製品あたりの製造コストを継続的に下げることで顧客からの値下げ要望に対応し、価格競争力を高めて競争環境の変化に備えていかなくてはなりません。新興国進出にあたっては、日本や先進諸国と比較しますと、人件費では圧倒的に優位であることが大きなメリットですが、発展過程においては人件費の上昇は避けられず、製造コストの圧迫要因のリスクとしてある程度織り込んでいます。生産性の向上や原材料・部品の現地化などによる変動費の削減にも積極的に取り組むことが現地法人経営のポイントです。

しかし、物流コストは変動費の中でも極めて大きなコストとして影響を与えます。特に国内流通の輸送コストや保管倉庫コスト、資材・製品の国際間輸送に関する輸出入手続きなどのコスト、設備導入時の輸送や据え付けコスト、そして一連の業務プロセスのノウハウ不足やトラブルによるムダコストなどの発生など、結果的に予算よりも多くのコスト圧迫により収益が確保できなくなっている企業が多くあります。通常日本企業はコスト削減の取り組みとして、物流コストの削減や業務プロセス改革などに積極的に取り組むのですが、海外拠点では日本と同じ感覚でコスト削減に取り組んでも成功しないケースが多くなると感じます。

新興国の物流には外的要因の課題が多い


物流には自らロジスティクス部門を持って、自社で倉庫運営や自社のトラック配送システムでコスト削減と効率的物流を追求するやり方と、3PLといわれる物流専業の事業者とパートナーシップを組んで行うやり方があります。以前は効率的な物流体制を自社で構築することでコストダウンを図ろうとする経営が主流であった時期には、どちらかというと大量の物量を低コストでどうハンドリングするかという観点から、主に日本国内や欧米市場への輸出物流で進んでいきました。しかし、小口配送がニーズの主体になり、きめ細かい物流による顧客価値提供が求められるようになる一方、アジアなどの新興国では物流が未成熟なところでは、より専門性の高い物流業者のノウハウを活用することが有利になってきました。今や3PL戦略、しかもきめ細かく物流ニーズに合わせて組み替えていくことが一般的重要になっています。

新興国では道路など物流インフラがまだまだ不十分であり、実際の荷捌きも人手に頼るところが多く、その結果物流品質も低くコストも高いというのが現状です。そのため輸送中のダメージも頻発しますし、荒っぽい荷扱いによる損傷も発生します。また国土全体での物流ネットワークが出来上がっていないため、物流自体非常に効率が悪く、結果として物流コストは結構高くつきます。また国際輸送における通関業務にもトラブルが多く発生します。いくら国際コンテナ輸送で安いレートで確保できたとしても、港での手続き面で課題があり、膨大な書類を用意したり輸入手続きにおけるさまざまな規制やライセンスなどで何日も通関が止まったりするうえに、余計な「お金」や保管コストがかかることは日常茶飯事です。しかも通関後の物流品質やコストにも問題があるため、なかなか国際間のサプライチェーンに組み込みにくいという状況があります。

最適な物流パートナーを選ぶ


物流事業自体、まだまだ規制業種となっている国が多いため、なかなか外資の物流会社が単独で事業展開することは難しい状況です。特に外資に対しては保有トラックの台数などの規制もあったりするので、現地の物流会社と何らかの形で合弁か協業で展開しているところが多いです。日系製造会社にとっては、まず自社で資材や製品の物流をハンドリングはできませんので、それぞれのニーズに合わせて物流会社を活用しないと事業が成り立ちませんが、ローカルの物流会社は確かにコスト面では有利なものの、品質や手配ミスなどトラブルが多く発生します。よってコストはある程度高めにはなりますが、結局のところ日系の物流会社とパートナーシップを組むことがベストの選択になるのではないでしょうか。

日系物流会社もさまざまな特徴を武器にサービスを提供されています。大型・多機能倉庫の建設による保管から輸送まで一貫サービスの提供や、冷凍・冷蔵輸送のニーズに対応する優位性を打ち出しているところ、工業団地の出資系列の物流会社として通関当局と深い連携で工業団地入居企業に一貫した物流サービスを提供しているところ、またアジア全体のクロスボーダー輸送でグローバルネットワークを活用したサービスを提供しているところ、設備の搬入から据え付けまでの「機工」分野では追随を許さない物流会社、多彩に小口宅配ネットワークを着々を構築しているところなど様々です。こういった高サービスの分野は、ローカル物流会社の追随を許さないので、今後ますます物流事業が拡大していくものと思います。

日系の製造会社としては、規制や手続き面で課題が多く、またコスト削減でも自社では取り組みに限界がある新興国の物流を考える際には、いかに物流会社の協力を得てコストダウンや業務効率化に参画してもらうかという姿勢が重要かと思います。物流会社を単なる外注業者と見るのか、それとも事業パートナーとして見るのかで大きく結果が違ってきます。ややもすれば物流に限らず外部協業先を下請けと見なすところが少なからずありますが、事業全体のバリューチェーン戦略を考えた場合には、とりわけ新興国での物流戦略は極めて重要ですし、日本とは違った視点からマネジメントをとらえる必要があるように思います。

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