コラム

 公開日: 2016-07-14 

中小企業支援事業の公正な評価が必要


中小企業支援に関する仕事をやらさせていただいて既に2年半が経過しております。その間公的機関が打ち出している支援制度を活用することも含め、企業の皆さまには一番メリットのある支援活動を提案、助言をさせていただいています。しかし常に感じることとして、国や地方自治体など公的機関が打ち出す支援制度は、現場をよく知らない人が机上でいろいろと考えてやっているケースが多く、実際に有益なものなのか、また効果があるものなのかという点についての評価が実に甘く、正直公的資金の無駄遣いといえるものも多くあります。

国や自治体の支援制度の原資は公的資金でありますので、単年度予算が基本であり、その予算確保と制度の実績をいかに継続させるかが一番の関心ごとになってしまっており、評価についても、表面的にアンケートをセミナー参加者や支援企業から取って、それこそ良いところどりでいかに有益な事業かということのバックアップデータとして活用しているのが実態のように思います。また支援制度の中身も、縦割りの弊害が顕著で、同じような内容のことを名前を変えていろんな公的機関が実施していることが多く、実施体制の構築や専門家の公募について実際機能しているかどうか、また助成金のメニューを広げることが支援だと勘違いしている公的機関が多いと正直疑問を感じることがあります。

中小企業支援制度で考えてほしいポイント

中小企業支援施策の中心は、「補助金などの助成金」、「融資支援」、「税制」、そして「活動支援」を組み合わせながら、中小企業のリソースを最大限に生かして国全体の成長戦略につなげていく組み立てになっています。ただ、どの分野にどのような支援が最も効果的かという点は、現場の声を活かして決めているというよりも、いわゆる声の大きいところの意見を聞いて制度を作っているという印象があります。以前、私が現役時代に霞が関の省庁の役人の方々からヒアリングに呼ばれて話させていただいたことがありますが、資料とか議論を通じてでは非常に頭が切れる方が多いというのは覚えていますが、何か腹落ちしないというか、上滑りして効果がないと思われるようなことまで理屈をつけて理論武装されているように感じたものでした。 「助成金」「融資支援」「税制」はお金に直結しているだけに、予算をどれだけ確保したかが大事ですが、その結果どれだけ成長に繋がったかということを立証するのは極めて難しく、一年で効果が出ることは少ないので、結果的には費用対効果を見極めるには期間も評価方法も現状では無理があると思います。本来は、公的資金を支援制度で投入した限りは、渡しきりにするのではなく、最終的には企業が成長戦略の成功につなげ、利益を上げて税金として国に還元するというものではないといけないと思うのです。企業支援は社会福祉ではないのですから、国からの企業に対する一種の先行投資であるべきもので、リターンを見極めることができない制度は欠陥であると言わざるを得ません。

中小企業は大企業と違って経営資源も脆弱であり、国からの支援がなくてはグローバル競争に生き残ることができない、だから積極的に支援制度を拡充するべきだ、まして中小企業は地域経済を支えている存在であって、雇用確保の面からも守らなくてはいけない、というロジックはある面正しいのですが、だからといってリターンなしにどんどん中小企業に助成金などの形で給付するというのは間違っていますし、それでは企業そのものが勝ち残っていく実力がつきません。助成金や税制軽減が単に企業にとって赤字補てんの原資になっているような制度運用は基本的におかしいと感じます。もちろん助成金交付には実施報告書に基づく後払いが基本で単年度処理でお仕舞いです。国の政策の方向性に合致した助成金のあり方を検証するには、少なくとも3年ぐらいのフォローアップの制度を組み込んで評価してもらうことが必要ではないでしょうか。

価格交渉サポート事業って

公的機関による支援制度には首をかしげるようなものが多くありますが、中でも私自身がどうしても納得できない制度の一つに「下請け駆け込み寺」という支援事業があります。いわゆる大企業による不当な値下げ要求や代金支払いの遅延といった下請け虐めにあった企業の相談窓口としての事業です。こういった大企業による行為は下請法や独禁法に抵触するものであり、国の立場から大企業に対する啓蒙活動や情報提供は非常に意味のあることだと思います。

ただ、納得できないのは国が価格交渉の専門家を登録して、企業からの相談に対してそれら専門家を派遣するという事業が組み込まれていることです。何でもかんでも専門家支援をすれば良いというものではないと思います。このような事業を拡充していくと、企業にとっての経営の根幹であります価格政策や顧客との交渉事に国が関与するということになり、ややこしい交渉は全部国からの専門家に任せてしまえば良いというようなモラルハザードが起きかねないと思います。確かに大企業の中には理不尽な理屈で納入業者に圧力をかけるところはいます。これは相手は中小企業、大企業関係なしです。しかし、事業の基本は商品、サービスという顧客価値を提供してその対価をいただいて成立するものであって、事業の取引関係を大企業対中小企業といった構図だけで考えて、中小企業の立場は弱いという先入観で専門家の交渉支援サービスを国が事業として考えるという制度には疑問を持たざるを得ません。

もちろんセミナーの実施などで取引関連の法律面の情報を提供を行うのは意義深い事業ですが、取引条件を交渉する機能は企業の中核機能そのものです。もし国で登録された価格交渉専門家が企業と一緒に価格交渉に来たならば、私が購買担当者であれば、その企業の理念そのものを疑いますし、正直信頼関係を損なった取引関係は終結させることでしょう。けっして大企業の横暴を許すという意味ではありません。申し上げたいのは、そこは支援を受ける仕事ではないでしょうということです。不当に買いたたかれたり、代金の支払いを遅延されたりするのは、必ずしも一方的なものではないと思います。ビジネスはお互いのメリットがなければ基本的に成立しないものです。単なる製品価格の問題だけではく、総合的な顧客価値をどう提供してどう顧客のお役に立てるかという視点をもって事業を行えば、まずそのような制度を活用することもあり得ないはずです。むしろ価値を正当に評価してくれる顧客を求めて販路開拓していく戦略をどう構築、実践していくかということでの専門家派遣であれば十分納得ができます。最近、中小企業庁が価格交渉サポートの専門家の追加登録を求めているようですが、そのような専門家ではなく販路開拓専門家をもっと活用されるべきかと思います。

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