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コラム
公開日: 2016-07-29 最終更新日: 2016-09-02
海外から見た日本人の強みと弱み
海外事業で一番苦労するのは人事労務管理です。中小企業では外国人とのコミュニケーション能力に長けた人が少なく、必ずしも海外経営能力の高い方が現地法人の責任者として赴任するわけではありません。必然的に現地法人のマネージメントでは人事関連のトラブルが多く発生します。今まで製造の責任者だったレベルの方がいきなり現地法人の社長として赴任されると、組織管理の基本もよく理解できず、財務諸表も読めない人が珍しくありません。また英語能力も高くなく、もちろん現地の言葉で意思疎通などできません。人を実際に採用して育てた経験もない状態で、いきなり現地に行って人を採用して、労務管理のしくみから就業規則を整備し、育成計画を立てて実践していかなければならないわけですから大変です。日本の本社からトップを始め全面的なバックアップ体制がないと、それこそ出向社員は孤立無援になってしまいます。海外での経営は日本の常識が通用しないことが非常に多いため思うように事が進まず、本社からは何をやっているんだという批判を一身に受けることもあります。強いてはうまくいかない原因を現地人の資質や能力が問題だと責任転嫁してしまうことになってしまいます。
海外事業を軌道に乗せるためには、優秀な現地人材を採用、育成して、経営の現地化を加速させることです。現地人がすぐに辞めるとか、いつまでたっても重要な仕事を任せられない状態ですと、ずっと細かい仕事に日本人が関わり続ける必要が残りますし、その分生産性が上がらず競争力が低下したままになります。思い切って権限移譲して現地人材で経営を力強く進められる体制づくりが求められます。その第一歩は、日本人そのものの特性を十分に認識し、決してオールマイティではないことを理解したうえで、海外人材の強みとうまく組み合わせることです。現地人材に対して不平不満ばかり言っているといつまでたっても経営は良くなりません。そのためにもまずは己を知るという点から、日本人の強み、弱みとは何かを考えてみたいと思います。
日本人の一般的特性
日本人とはどういう特性を持っているかについては、通常日本で仕事や生活をしている人にとってはあまり考えることすらないと思います。しかしこの特性を知っておかないと、海外で事業を行ううえで障害となっていることの本質を見誤ることにつながるのです。またこの特性は外から見て初めてわかることも多いですし、外国人が日本人の長所や短所をどう見ているかという声を聞くことが有益です。いろいろな見方がありますが、一般的な特性としては次の4つが一番外国人とは異なっている、つまり外国人からは理解しにくいものと思います。
① 同質性
島国で農耕民族という必然的な特徴とも言えますが、いわゆるムラ意識が強く、和を以て貴しとなすという価値観が私たちの行動や発想の基準となっているということを気づくことがあります。組織面においても気の合う人で固まりやすく、その他の世界に対しては排他的な言動をとる傾向が強いと言えます。そのため一般的に人見知りする人が多く、あまり知らない人に積極的に声をかける人はあまりいません。国によっては差はありますが、概してベトナムを始め多くの国では結構旅行先などでもざっくばらんに声を掛け合って雑談をしている人が多いという印象があります。
②協調性
集団主義の傾向が強く、会社や組織のルールを優先する意識が高いので、チームワークで物事を進めるのに秀でています。約束を守ることが何よりも優先するため、結果として高い信頼性を獲得しているともいえます。が、昨今はだんだんと諸外国のように個人主義の考え方を持つ日本人が増えているように思います。協調性があるということは強みの面がある一方、没個性で多様性にうまく対応できないという弱みがあるということにもつながります。
③恥の文化
世間に顔向けできない、お天道様が見ている、という道徳性は恥の文化や宗教観から培われたものです。そんな恥ずかしいことできないという思いを持って行動しているのはほぼ日本人のみと言っても良いでしょう。日本の恥の文化に対して、海外では罪の文化、つまり人間は罪を背負ってこの世に生まれてきたという宗教観を大事にしています。日本人は、ややもすれば自己主張をして言い争いをする行為自体がはしたない意識が先に立つことから、人が良すぎることで騙されやすいことも多いのが日本人ではないかと思います。罪の文化は神に対する原罪であって、海外では人を騙すより騙される方が悪いとの考えを持っている人が多いということも理解しなければなりません。
④察しと遠慮
相手に対する気遣いやおもてなしの心は日本人の素晴らしさの一つとして賞賛されます。相手を慮る意識の高さは、常に顧客や社会貢献の企業姿勢にも直結していますし、顧客視点で常に高い品質を追求していく姿勢が強みになっています。しかし、海外の人の多くは、相手の気持ちを空気を読んで察して一歩遠慮するのは、単に自己主張を避けているだけで意思が弱く自分の考えが希薄、いったい何を考えているのかわからないと感じているのです。
日本では当たり前と思っていることが、実は不思議な民族だと思われていることの原因にもなっている場合が多くあります。ただこれを完全に否定するということではありません。海外に出ると日本人の常識とのずれが実に多いことを理解する異文化コミュニケーションがいかに重要かが経営の現地化には欠かせないと思っています。
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