コラム

 公開日: 2016-08-04 

オリンピックとグローバライゼーションの違和感


リオ・オリンピックがすぐに始まります。海外で十数年勤務していたこともあり、海外からオリンピックを見たときと、日本に戻っているときに見るオリンピック報道の印象の違いを何度も感じていました。日本にいるときにはメディアを通じて入ってくる情報がほとんどのリソースであり、全世界で起きていることもメディアの目を通じた価値観でスクリーニングされています。オリンピックは世界中から集うスポーツの祭典であるという前提で、全世界が熱狂しているかのような観点で取材、放送されるのを見ているわけです。そして日本人選手の活躍は連日これでもかとばかり報道され、いかにも全世界の人も同じ映像を見て夢と感動を与えているかのような報道を意図的に流しています。

当然といえば当然なのですが、海外に滞在しているときには、ほとんど日本選手がTVに映ることはありません。今でこそネットの情報で画像を見ることは容易にできますが、以前80年代や90年代に欧米にいたときなどは、新聞の衛星版もなかったので、何日か遅れて郵送されてきた新聞で何の競技でメダルを取ったのかがわかる程度でした。アメリカにいるときには、当然地元メディアはアメリカ選手団の活躍を報道を多く目にしてはいましたが、日本のように地元の取材だとかメダリストと家族の感動のストーリーなどといったものはあまりなかったように思います。アメリカは多くのメダルを取るので、いちいち銀メダルだ、銅メダルだというようなニュースは見ませんし、新聞の一面から社会面、スポーツ面全てオリンピックに埋め尽くされるようなことはなく、アメフトやプロバスケットボールやアイスホッケーなどいろんなスポーツニュースの一つという感じであったのを覚えています。

前回のロンドンオリンピックでは、地元ということもありイギリスも頑張って多くのメダルを取っていたようですが、基本的にそんなにオリンピックに関心が高い国とは思えません。ロンドンオリンピック以外では金メダルも一ケタだったですし、イギリス人の関心はむしろダントツにサッカーです。また、ベトナムはじめ東南アジア各国では、もともとメダルを取れる選手があまり多く参加していないこともあり、オリンピックといってもいつ始まるのかも知らない人も多く、報道でもほとんど目にしません。欧州サッカーの方が遥かに関心が高いと思います。

つまりオリンピックは世界の祭典ということで全世界が注目しているというのは偏った見方ではないかと思うのです。ドーピングの問題でロシアや中国が問題を起こしていましたが、これもオリンピックを通じて国威発揚を図りたいという極めてナショナリズム的な面から起きた問題であることを示しています。実際、ロシアや中国が何個金メダルを取ったといっても、他の国は特に報道するわけでもありませんし、自国民が直接対戦しない限りまず映像すら目にすることもないわけです。日本の報道を見ている範囲でも、日本人選手の活躍だけを中心に取り上げ、金メダルを取ろうものなら、全世界が感動に打ち震えているかのような報道です。ただ、実際には海外の人々は日本人ほどオリンピックに関心があるわけではないということも理解しておくべき点ではないかと思います。以前、オリンピックのTOPスポンサーシップであることを活用し、全世界でオリンピックキャンペーンを実施していたのですが、一番盛り上がっていたのが日本でした。しかしアジアでは正直オリンピックに関心を持つ人が少なく、スポンサー効果としてはもう一つだったと思います。それよりもサッカーナショナルチームのスポンサーになることの方がインパクトが大きかったようです。

勿論、自国の選手が多く活躍することになれば、オリンピックに関心を持つ国民が増えることは間違いありません。関心の高いスポーツは国によってそれぞれ違うのですが、やはり国の代表として戦う試合には、どこの国民も愛国心を刺激されるもので熱狂的になります。個人種目ではそんなに盛り上がらなくとも、国代表のチームとして戦うサッカーのワールドカップなどは国の威信や国民としてのアイデンティティをかけて必死になるため、ナショナリズムが最も表面化しやすいものだと思います。

世界経済はグローバル化が加速しているわけですが、一方でEUからイギリスが離脱の方向に向かうことや、アメリカの大統領選挙でのトランプ旋風、中国の南シナ海の領有権問題などナショナリズムの台頭が目立ってきています。グローバライゼーションが世界経済の発展のカギであるとして、日本企業の海外展開も後押しされてきたわけですが、昨今の国際関係の激動を見るにつけ、政治・経済ともにグローバリズムからナショナリズムに軸が振れている雰囲気があります。オリンピック開催のこの時期、基本は国の利害関係、政治リスクが企業経営にも決定的な影響を与えるということを改めて強く感じています。

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