コラム

 公開日: 2016-08-16  最終更新日: 2016-09-02

経営者の高齢化は中小企業「消滅」の危機?


6月の日経新聞に、「中小企業2030年に消滅?社長の年齢、14年後には80歳前後に」という衝撃の記事が載りました。中小企業は日本経済を支えているというのは、技術的にも付加価値のうえでも雇用の面でも疑いのない事実です。その中小企業は経営者の高齢化とともに消滅の危機を迎えているというものです。即ち日本経済にとっても厳しい現実が目の前に迫っているのです。日本の少子化による人口減少の問題は以前より大きく取り上げられており、一億総活躍に向けて保育所の待機児童の問題などが注目を浴びています。しかし、経済を支える企業の老齢化は、単に労働人口の減少面だけでなく、円滑な事業継承が進まないことや、若者の起業が進まないことによって産業基盤が縮小し、経済エネルギーの弱体化が加速する方がより深刻になると思われます。いくら予算を増やして待機児童の問題を解消しても、産業基盤がぐらついて肝心の雇用が縮小しては国全体が立ちいかなくなります。

国も中小企業対策の充実を経済政策の根幹に据え、今回の英国のEU離脱に対応するため新たな補正予算を目玉として、追加でいろんな助成金を増額しようとしています。28兆円を超える政府の経済対策にも中小企業支援が柱の1つとして盛り込まれています。以前のコラムにも書きましたが、政府の中小企業対策というのは、ほとんどが助成金のばらまきや手厚い資金繰り対策の融資、税制の特例措置など、金銭面が中心であり、それも助成金狙いの申請した企業のみに恩恵が行くというようなものです。政策が経済全体にいきわたるような効果があるかどうかについては疑問に感じざるを得ません。中小企業はさぞ喜んでいるだろうと思いきや、ある中小企業団体の幹部からは「もらえるのはありがたいが、いま本当に必要かと言われると……」と微妙な反応があるようです。資金繰り支援や助成金により運転資金の調達を助け、経営が行き詰まるのを防ぐのを目論んでいるのですが、輸出が急減したリーマン・ショックや多数の設備が被災した東日本大震災の際に効果を発揮したものの、現在は差し迫った状況にはないと感じます。

しかも、「認定支援機関」として銀行、税理士を中心とした融資支援、商工会などを中心とした助成金申請支援と双方を推進するための経営革新計画支援を通じて、これら国の支援政策を実施するスキームがあります。しかし、経営支援機能のノウハウを持っている中小企業診断士を「認定支援機関」の中核に組み入れていない制度であるため、十分な政策展開に欠けているのではないかと思います。独立診断士を申請ベースで自動的に「認定支援機関」にすることができれば、もっと幅の広い中小企業政策が実効あるものになると考えます。

経営者高齢化の現実

2015年における経営者の中心年齢は66歳になり、20年前の1995年は47歳と19歳上がっています。つまりほぼ一年に一歳ずつ上がっているのです。このまま経営者の若返りが進まないと2030年には80歳前後に達し、今の男性の平均寿命と並んでしまい、多くの企業が存続の判断を迫られるわけです。日本では企業数の99%超、雇用は70%を中小企業が占めています。全ての中小企業が消えはしませんが、経済の基盤は間違いなくぐらつくと思われます。こうした未来を避けるには、早いうちに世代交代をすることが重要になるのですが、毎年経営者の年齢が一歳ずつ上がっているということは、若い世代への事業承継がほとんど進んでいないことに加え、起業に踏み切る人も少ないうえに、企業OB人材など高齢者が起業する割合が多いということを物語っています。民間調査会社の調べでは、休業や廃業、解散をした企業のうち半数近くの経営者が70代となっています。また積極的に投資していく必要があると答えた経営者は高齢者ほど投資意欲に乏しくなっています。このままでは経営者年齢のピークが80歳に到達する2030年に向けて徐々に経済全体が不活性化になっていくのは間違いないものと思われます。

世代交代による海外展開の加速がカギ

中小企業の売上高はリーマンショック前の水準をなお下回っており、緩やかに持ち直している大企業との違いが鮮明になっています。大企業は為替対応に加え、市場縮小が見込まれる日本に留まるのではなく、新興国需要を取り込むために積極的に海外展開を加速しています。中小企業に残された道は海外に積極的に投資して自ら海外需要を取り込むことは欠かせません。

中小企業庁の調査によれば、「積極的に投資していく必要がある」と考える49歳以下の経営者は32%となっており、70歳以上の経営者の21%を上回っています。経営者の若返りが進めば着実に積極投資が増えていくと思われ、特に海外市場に対しても抵抗感が少なく将来への種まきにつながるものと思います。特に若い世代は発想の柔軟性が高齢者に比べてあるため、M&Aなどもアグレッシブに取り組むパワーがあります。07年から08年に経営者が交代した企業の14年度の経常利益率は1.88ポイント上昇し5.50%、交代しなかった企業は3.37%と1.16ポイントの改善に留まるなど、明らかに経営者の若返りが企業発展に求められています。

事業承継を待つだけではなく、若者の起業とくに海外へ打ってでる事業を促すことも早急に取り組まねばなりません。ただ、日本の開業率は非常に低い状況です。若い世代はリスクとリターンの両面で二の足を踏む傾向が強く、会社を自ら経営して苦労するより会社員として働いている方がずっとメリットがあり、また海外志向もあまりなく日本で楽して生活できれば十分だと考える人が多いように思います。政府の中小企業政策においては、確かに事業承継の支援や開業率上昇に向けて税制や投資助成金など起業しやすい環境整備に動いていることは違いありませんが、「認定支援機関」といった融資と助成金を中心としてた支援制度では甘いと言わざるを得ません。小手先の支援メニューを拡大させるだけでなく、経営戦略とくに海外展開ノウハウを外部コンサルや企業OBから導入した企業や事業承継を実施した企業に対して法人税の減免を行ったり、新規の起業に対しても思い切った免税期間なども検討することにや、より多くの若い世代が海外経営に携わる支援を充実させることなどが必要です。助成金の枠を経営支援人材の活用に使うことなども進めていくべきではないでしょうか。

経営者の若返りと海外展開の加速が日本経済にとって待ったなしの状況です。

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