コラム

 公開日: 2016-09-23 

松下幸之助名言集から「私の経営観、販売観」


松下幸之助翁は経営の神様と称されていますが、同時に商売の神様と言われたように、松下電器は強固な販売網を作り上げて卓越した販売力があると評価されています。松下電器の創業者である松下幸之助翁は、販売に対してどういう経営観を持っていたのでしょうか。モノづくりと販売との関係について、今から約50年前の昭和37年に行った久保田鉄工㈱での研修会に招かれた講演での非常に興味ある発言をご紹介したいと思います。中小企業が発展していくには、販売力を強化して販路を開拓していくことが重要です。松下幸之助翁がいかに販売を重視したか、どういった人を育てなければならないかということの経営観は今でも斬新です。

松下幸之助 商売は真剣勝負 「私の経営観、販売観」より


製造と販売は二本の柱

本日は販売とか、そういう方面の研修会と承りましたが、会社の経営というものは、製造し、販売する、この二つの面しかないと私は思うんです。この二つが柱となっている。まずよりよき製造をするためには、どういうことが必要であるかということから、付設の仕事が生まれてくる。また、それをよりよく販売するためには、どういうような方法が必要であるかということが、いろいろ考えられる。だから会社の業務というものはたくさんできてきますけれども、結局、製造と販売、この二本の柱に尽きてしまう。いかにいい物を製造いたしましても、一方で販売がまずい、うまいところがないとなれば、これはうまくいかないように思うんです。

販売と製造が車の両輪であるということは、私が言わなくても皆さんご承知のとおりでありますが、販売というものをとってみますと、私は考えようによっては非常にむずかしいものであると思います。いい物をつくってくれなくては、というのは当然でありますが、いい物であったら必ず売れるかというと、そうはいかないと思うんです。いい物であっても、売るということにあまり上手でないために行きづまっている会社がいかに多いかということです。

また販売網をもたないために、せっかくいい物をつくりながら、売り広めることができないということもあります。どっちが先ということはいえないと思いますが、見方によると販売の方に重きがあるんやないかといえるほど、今日の販売はむずかしくなってきています。販売網をきちっともっておれば、製造はみずからしなくても他に求めることができるかもしれない。しかし販売だけはそう簡単にはいかない。販売網をかっちりもっている会社はどこかに強みがあると思うんです。

何と申しましても競争は激しくなってくるし、ある一定の段階に来ますと、一流の会社がやや似たものをつくるでしょう。たいへんな発明であるとか、よそにできないようなものをつくることができる場合もありますけれども、しかしまあ一流といわれるところの会社であれば、そう甲乙なく同じものをつくることができると一応考えていいと思うんです。とpころが販売となると、なかなかそうはいかない。同じ物をもっていても、それを販売するにあたって、力強く売りこなす営業部門をもっているところと、そうでないところでは、だいぶん違ってくるわけです。

そういうことで、私は販売というものは高く評価しないといかんと思うんです。最近は技術方面を高く評価しないといかん、技術は何というても大事なものだということを言うております。どちらもいえると思うんですが、私は販売部門に携わる方はやはり販売唯一主義と申しますか、そういう信念をおもちにならないといかんのやないかという感じがいたします。そうすると、販売を中心として工場が展開していくことになるんですね。また、工場のほうに手腕家がいて、いいものをつくり、そしてそれを出すということによって、販売が工場に引きずられて動くという場合もあります。どちらかにそういう立派な指導者、幹部が必要です。

けれども販売にそういう幹部がいると、販売網をみずからつくると同時に、こういう物をつくってくれ、ああいうものをつくってくれと、非常に適切にどんどん工場に要求できるわけです。工場はそう言われると、よしつくろうといことでつくっていく。幸い技術もあるからいい物ができる、ということであれば、鬼に金棒ということになるわけです。

販売部門に傑出した担当者がいれば

私が知っている二、三の会社に、販売部門に非常に傑出した担当者がいるんです。非常に手腕家で積極性があるんでしょうね、その人が販売を担当してからすっかり変わってきたんです。その人は同時に経理も分かる人で、つまり販売も分かるが経理も分かる。まあ会社の経営者としての素質をもってる人でしょうな。その人が販売を担当してから、そこの製品はぐんぐんとよくなったんです。利益もきちっと確保できた。こういう例を私は現実に知っているんです。

今まで販売がもうひとつふるわなくて、いい物をつくるわりにうまくいかないと思っていた会社が、見違えるほどよくなった。それはどこに原因があるかというと、販売部門を担当したその最高首脳者が、非常に卓越した人であり、しかも経理面が分かる。だから販売するにしても、ただ販売量を増したらそれでいいというんやなく、販売量も増すが、同時に収益も併せて考えていく。そうしたら利益もきちっと確保されていくわけです。

販売量が増すだけではいけない。利益も確保しないといけない。販売をある程度確保するということはいいんだけれども、資金が足らんようになっては困る。だから利益も確保しないといかん。しかも集金をうまくやらないとほんとうの意味の利益はあがらない、ほんとうの販売にはならない。この三つが要るわけです。

それを遂行しようと思えば、製品の裏付けがないといけない。販売もうまくやっている、集金についても相当厳しく先方にかけあってもらっている、また利益幅もきちっと取る。そういうことをうまく遂行しつつあるが、しかしそれを維持してくれるものは何かというと製品である。良質の製品の裏づけというものが必要である。

だから製品をもっとよくしろ、これやったらいかんやないか、よそに負けるやないか、ひとつも特徴がないやないか、これでは売れと言われても売れんやないか、と言うて工場を責める。そういうようにしていくと、自然にみんながよくなっていくわけですな。

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