コラム

 公開日: 2016-10-18 

働き方のくふうを求める働き方改革の動き


同一労働同一賃金、週休3日、副業OKなど、今、従来考えられなかった変化が起きています。多くの企業が二の足を踏む「働き方改革」が着々と進む労働環境の変化に気づかない企業は時代から取り残されつつあります。最近の出来事として、電通の東大卒の新入女性社員が月100時間を超える残業が引き金となって自殺し、労働基準監督局が電通本社に立ち入り調査に入るということがありました。日本の企業は慣習的に残業が非常に多く、早く定時に帰宅することが勤勉でないとみられるような職場風土があるところが多いように思います。ところが、昨今日本企業は残業が多くて実労働時間が長いにもかかわらず、企業が生み出す付加価値は世界的に見ても非常に低いと問題視されるようになってきました。つまり一人あたりの生産性は低く、身をすり減らすような長時間労働時間で一生懸命働いても結果が伴っていないのです。仕事の実績は決して労働時間に比例したものではなく、たとえが労働時間が短くとも、高い生産性で働ける人材は実績を出せるし、企業側としても残業削減でコストダウンを図るニーズは高いのです。しかし残業はなかなか減りません。無理やりノー残業デーとか制度を作ったとしても減らないのは、一つは残業手当が生活費の一部になっている給与システムがありますし、あとは仕事の量に見合った労働管理を管理職がきちっとやっていない、また一人ひとりが根本的に働き方のくふうを進めるような仕掛けがないことがあると思います。

さて、ここに松下幸之助によるPHP裏表紙に書かれていた短文集であるベストセラー「道をひらく」に「働き方のくふう」というコラムがあります。まさに今起きている「働き方改革」につながる考え方を示唆するようなことが書かれてあります。今から50年以上前にこのようなことを松下幸之助翁が語っていたということは改めて驚きです。

「働き方のくふう」~松下幸之助~


額に汗して働く姿は尊い。だがいつまでも額に汗して働くのは知恵のない話である。それは東海道を、汽車も乗らず、やはり昔と同じようにテクテク歩いている姿に等しい。東海道五十三次も徒歩から駕籠へ、駕籠から汽車へ、そして汽車から飛行機へと、日を追って進みつつある。それは、人ともに、人の額の汗が少なくなる姿である。そしてそこに、人間生活の進歩の跡が見られるのではあるまいか。
人より一時間、よけいに働くことは尊い。努力である。勤勉である。だが、今までよりも一時間少なく働いて、今まで以上の成果をあげることも、また尊い。そこに人間の働き方の進歩があるのではなかろうか。
それは創意がなくてはできない。くふうがなくてはできない。働くことは尊いが、その働きにくふうがほしいのである。創意がほしいのである。額に汗することを称えるのもいいが、額に汗のない涼しい姿も称えるべきであろう。怠けろというのではない。楽をするくふうをしろというのである。楽々と働いて、なおすばらしい成果があげられる働き方を、おたがいにもっとくふうしたいというのである。それから社会の繁栄も生まれてくるであろう。

残業せずに成果をあげるためには


あらためてこのコラムを見てすごいと思いました。私は、パナソニックで勤務時代、あまり残業をしていたほうではありませんでした。生来ずぼらな性格のせいか、何時間も一生懸命仕事に時間を割くのが好きではありませんでした。むしろ他の人が一日8時間かけて行う資料づくりの仕事なども、締め切りから逆算して、常にどうやったら早く片付けられるかを先に考えてから取りかかるので、だいたい半分以下の時間で処理できていました。とにかくスピードを重視して、全体の骨格を固めてから全体の質を上げていくための詰めを行うというやり方をしていました。その結果、働きかたには無意識にくふうをしてたいように思いますし、残業も少しはありましたが、若いときから退職間際までの期間、心身ともに疲れ果てるような残業はやった記憶がありません。もちろん、仕事もいい加減なのに早く帰るということは言われないようにしていましたので、仕事の結果にはそれなりの自信がありました。パナソニック在勤中は、このコラムを熟読したことはなかったのですが、より少ない労働時間で今まで以上の成果を上げることも尊く、働き方にくふうをすることが大事で、額に汗のない涼しい姿も称えられるべきだという経営者の言葉は目から鱗でした。

日経新聞からの引用になりますが、2009年、住友商事副社長からSCSKの前身である住商情報システム社長に転じた中井戸信英・相談役の信条は残業はしない、休日はしっかり休むというものでした。ところが新天地の社員は当たり前のように長時間労働をしていたのです。 「残業を減らせ」と言うと、「生活が成り立たない」と言う。そこで2013年度から「年間有休取得20日、月間平均残業時間20時間未満」を目指す「スマートワーク・チャレンジ20」を実施。ポイントは「削減できた残業代を社員に返した」(中井戸相談役)とのこと。部門ごとの残業時間削減の達成度合いに応じて、賞与などの形で上積みする運用としたのです。これをきっかけに、社員は効率的に仕事をこなす習慣が身に付いたのです。裁量労働制を拡大しても残業が増えないのは、生産性の低い長時間労働には意味がないというDNAが定着したからで、「経営者が覚悟すれば働き方はいくらでも変わる」と中井戸相談役は語っています。

日本企業の残業実態は異常


実際海外で仕事をしていた経験では、朝から晩遅くまで会社に残って残業している現地社員はほとんどいません。日本人だけが異様なのです。では海外の人は皆日本人より働きが悪いのでしょうか。それならば何故日本の労働生産性は海外より低いのでしょうか。どういった働き方のくふうが足らないのでしょうか。1日8時間労働でこなすべき仕事量に対して、夜遅くまで毎日4時間残業し、12時間もかけないとこなせられない状況がもし続いているとすれば、皆さんの働き効率が半分以下ということになります。いや、毎日人の1.5倍働いているというのであれば、結果も1.5倍以上でなければ効率は相対的に低いということの証明になります。だいたい1.5倍以上のアウトプットが量、質ともに確保されているというのはほとんどないと思います。本当にそれだけのアウトプットが必要であるならば、50%の増員をすればよいだけのことであって、残業手当の割増率を考えたら、そのほうが遥かに生産効率を上げることに繋がります。無論、生活費を稼ぐために会社に長くいるなどはもっての他です。それ故に、今、働き方改革として週休三日制だとか、副業を認めるという動きが出ているのです。だらだらと残業させるよりは、効率よく短時間で労働生産性を上げていくこと方が、会社にとっても社員にとってもメリットが大きいという考え方が広がりつつあるのです。

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