コラム

 公開日: 2017-01-04 

働き方改革で忘れられている視点


明けましておめでとうございます。
昨年2月よりマイベストプロでコラムを発信を続けております。本年もベトナム事業成功パートナーとして、日本の中小企業がベトナムで成功することで、ベトナムとともに飛躍する架け橋になれるよう頑張っていきたいと思っております。本年もよろしくお願いします。

「働き方改革」に対する違和感


昨今、人口減少への危機感から「一億総活躍社会」の実現に向けて、政府は企業に対しても多様な働き方に向けた改革を求めています。サラリーマンにも副業を認めるというように変わってきています。また、昨年の電通での過労自殺問題が社長の首が飛ぶまでの社会的問題となり、長時間残業の問題を始めとして様々な働き方改革への取り組みに注目が集まっています。

例えば、長時間労働の是正の他にも有給休暇の取得推進、テレワークの推進、介護休暇制度の拡充、女性の復職支援、高齢者雇用支援、脱時間給制度の推進、副業解禁、定年制度の見直しや廃止、保育所待機児童問題への対応、同一労働同一賃金など、さまざまな働き方に関する改革が検討、または実際に進んでいます。

多様な働き方を推奨して働きやすい労働環境を作り、少しでも多くの人が働ける環境を作ることが、国全体の労働不足を補うことにつながると考えられています。しかし、単に「働き方改革」をするだけでは、決してGDPが上がることはありません。忘れられている視点は、「働き方改革」以上に進めなくてはならない「仕事の進め方改革」です。

一人ひとりが今までと同じ仕事のやり方で、労働時間に比例したアウトプットしかできないままであれば確実に労働生産性は落ちます。今まで月100時間もの残業を強いられていた職場で、いきなり残業禁止とかやってしまうと仕事は絶対に回りません。本当は仕事量に見合うだけの社員数が必要なわけですが、そう簡単に人を増やすことはできません。しかし、加重労働による自殺が社会問題となり社長の首が飛ぶことを考えますと、会社存続のためにも残業規制は最優先課題とならざるを得なくなります。おそらく皆さんの会社でも残業時間管理は相当厳しくなっているところが多くなっているのではないでしょうか。

「仕事の進め方改革」なしに「働き方改革」を優先してしまいますと、仕事のアウトプットは質量ともに低下します。もし、何も仕事の進め方にメスを入れることなく残業規制で仕事が回っているとすれば、それはもともと生産性の低い仕事しかしていなかった、100時間もの無駄な残業代に人件費を使っていたことに他ならないのです。今まで100時間の残業で何とかこなしていた仕事を50時間残業でやるには、定時の労働時間を8時間 X 20日(有給を除いて)=160時間として、今まで月に260時間分の仕事を210時間でするわけですから、ほぼ2割の生産性を上げないとこなせないことになります。しかし、おそらく人事部門からの通達では、けっして「残業を半減するために仕事の効率を2割上げよ」というようなことは言いません。生産性革新なしに働き方改革などは絵に描いた餅ではないかと違和感を感じるのです。

日本の生産性が極端に低いのは何故か


日本人の働きは非常に悪い!と言われると反発されるかたがほとんどだろうと思います。これだけ必死になって毎日粉骨砕身頑張っているのに、言っている意味がわからないと憤慨されるでしょう。欧米人などはほとんどが定時で帰宅しているではないか、海外拠点でも毎日遅くまで残業しているのは日本人出向社員ばかりで、責任をもって仕事を一生懸命やっているのに「働きが悪い」というのはけしからんと感じられると思います。しかし、残業時間が長いから頑張っているということにはならないのです。ある意味、残業してまでこなせないほど仕事のやり方が悪いという見方もあるわけです。あくまでアウトプットの質と量が全てです。同じアウトプットであれば残業しないほうが働きが良いのは当然です。

私自身、会社員として現役のとき、いかに短時間で効率よく仕事をやるかということを重視していました。もともと残業はあまりする方ではありませんでした。せいぜい月20~30時間前後だったと思います。残業が多い人の声を聞きますと、夜の方が電話もかかってこなくなるので落ち着いて仕事に取り組めるというものが多かったのですが、少なくとも私自身の経験では、夜に残業をするときにはだいたい効率は落ちていたように思います。昼に集中して1時間でこなせていた資料づくり一つにしても、残業時に同じことを取り組んだ場合は、ほぼその倍近くはかかったのではないかと感じます。会社としてはその残業に対して何割増しかの残業手当を払うわけですから、残業時の生産性は相当悪いと間違いなく言えます。

労働生産性は一人あたりの付加価値額を意味します。付加価値額は、事業を通じて生み出した利益に人件費と不動産賃貸を足したもので、だいたい粗利額に近いものと考えても良いかと思います。2014年のOECD加盟34か国の労働生産性に関するデータがあります。日本の生産性は一人当たり$72,994で、一時間あたりでは$41.3(約4,349円)になります。アルバイトの時給を考えると平均ではそんなものかなとも思えるのですが、なんとOECD34か国中では21位つまり中位以下、しかもG7先進7か国中ではずっと最下位なのです。多くの日本企業は心身を擦り減らして朝から晩遅くまで働いていても、一人あたりが創出する付加価値は先進国の最下位という事実をどう受け止めれば良いのでしょうか。

「働き方改革」も必要なのですが、日本にはそれより先に「仕事の進め方ー生産性改革」が待ったなしと思わざるを得ないのです。ところが、日本企業においても製造業の現場では、日々生産性を上げることに血眼になって取り組み、世界トップレベルの生産性を実現しているのに対し、サービス業や同じ製造業のホワイトカラーと呼ばれる営業や間接部門の生産性が極端に低いのです。やはりそこには社員の努力や労力を空回りさせて経営資源の価値を低下させている組織生産性の体質的問題に原因があると思われます。

仕事の進め方において、日本企業の生産性向上の障害となっていることに日本的な組織風土上の問題があります。以前から日本企業は決定が遅い、アクションが遅いと言われてきました。和を大切にする日本的な経営風土がコンセンサスを重視し、結果的に共同的一体感や人と人のつながりから情報の流れを作り出して新たな知恵を生んできたことが一つの強みでありました。一方、総意がないとなかなか決められない、問題が起きたときにも究明するのではなく、責任をあいまいにして問題を棚上げする傾向が強くなります。本来なら時代と環境の変化に対して、人が本質的に持っている個性や創造性を発揮して問題解決に立ち向かえないと労働生産性を高めることはできないのです。

日本企業の社員の労働生産性は低い! この事実認識から出発しないと「働き方改革」はグローバル競争には勝ち抜くことはできないと年頭にあたり強く感じました。

この記事を書いたプロ

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中小企業診断士 杉浦直樹

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