コラム

 公開日: 2017-03-16 

海外販路開拓ではコミュニティを活用した口コミマーケティングが有効



前回のコラムで、中小企業の海外展開においては、共通項目として「展示会活用マーケティング」と「コミュニティ活用口コミマーケティング」の二つが有効なマーケティング手法であるとお伝えしました。今回はコミュニティへのアプローチによる口コミマーケティングの有効性について述べたいと思います。

中小企業ならではの口コミマーケティング


大企業は蓄積されたマーケティングノウハウを有しており、ブランド価値高揚と商品広告に多額の広告宣伝費をかけることができます。ブランド価値を高めることにより、企業に対するイメージや商品の信頼度アップにつながり大量販売が可能となります。一方、中小企業はもともと企業や商品の認知度は低いため、特定分野・商品に集中専門特化することで、大企業には追随できない競争優位性を確保するマーケティングが重要です。

そのための手段の一つが、展示会を活用して尖がったコンセプトで提供できるソリューションを訴求することです。もう一つ有効なのがものとして、中小企業ならではの「コミュニティにターゲットを置いた口コミマーケティング」です。一般的にターゲットマーケティングの常とう手段としてまず市場のセグメンテーションから始めます。大別して4つのセグメンテーション変数があり、年齢や性別、職業など属性的区分によるデモグラフィック変数、居住地など地理的要因で区分するジオグラフィック変数、趣味やライフスタイル等の要因で区分するサイコグラフィック変数、そして購買パターンや使用頻度、購買動機で区分するビヘイビア変数があります。

今回お伝えしたい「コミュニティにターゲットを置いた口コミマーケティング」はそれぞれをさらに掛け合わせて絞り込んだターゲティングとなります。特定地域のコミュニティでしかも特定属性の区分、しかも特定の業種や特定のライフスタイルなどのグループに焦点を当てます。それだけ絞り込むと市場規模を確保できないので採算に乗らない心配があります。大企業による通常のマーケティングの常識ではそうなります。しかし、中小企業の商品はもともと尖がることで大企業に引けをとらない優位性を発揮しなければ勝負になりません。小規模の市場で少数の新規顧客さえ開拓できれば十分採算に乗ります。むしろ大企業では個別コミュニティにマーケティングを仕掛ける余裕も小回りもなく、生産性の低いムダな販促政策を打ってくる場合が多いので、中小企業ならではのブルーオーシャン戦略の実践となる可能性が高いのです。

狙うべきコミュニティーとは


具体的に説明します。日本の中小企業が海外展開するにあたって、一番身近なコミュニティは日系社会のコミュニティであり、日本企業のコミュニティです。例えば、入居している工業団地であり、日本人商工会です。それらでは日々各企業が経営を行っていくうえで有益な情報交流が頻繁に行われており、企業間の親睦活動も盛んです。問題が起きたときにはお互いノウハウも共有できますし、解決に向けてネットワークから人脈が広がり支援してもらえることが多くなります。いわば海外の狭い地域での町内会のような存在です。

企業によっては会費がもったいないと商工会に入らないところもありますが非常にもったいない話です。また大企業の中には、自社で何でもできるからと、多忙で役員活動に関わっていては経営に専念できる時間が取れないとか、他社と付き合うのが面倒といった理由で、一応会員には名を連ねるものの参加活動には積極的でないところもあるのは事実です。単に会員になるだけにとどまらず、積極的に自ら手を挙げて商工会活動や工業団地内の交流に参加することで、顔を売ることができるだけでなく、自社では得られない微妙な情報を入手することが可能になります。日本企業全体を代表して政府へのロビー活動にもかかわることができ、現地企業との交流や政府関係機関との関係づくりにもつながります。

この日本企業間、対現地企業、対政府の関係性強化を通じて、ピンポイントで会社や事業紹介することも可能ですし、全くつながりのなかった展開企業から引き合いが来ること可能性が出てくるのです。日々自社の経営課題に対応することで精一杯であろうと思いますが、海外ほど企業間連携に注力し、顔を売っておくことで口コミが発生するため紹介活動も活発になり、PR効果は中小企業ほど顕著に出てくるものです。

先日、ある方から聞いた話です。ベトナムには北部のベトナム日本人商工会と南部のホーチミン日本人商工会の他に、中部のダナンにダナン日本人商工会の3つがあります。ベトナム日本人商工会とホーチミン日本人商工会はそれぞれ数百社の会員企業を有する大きなコミュニティになっていますが、ダナンはまだまだ数十社程度と小規模です。その分非常に相互連携が密で、懇親会などの会合を行うとほとんどの企業が集まるとのことです。そこへ、ある南部に進出した日系企業向けサービス関連事業を手掛けている企業が、ダナン日本人商工会での懇親会に顔を出して事業紹介を行うとともに、一晩でダナン地域の日系企業全社と名刺交換でコンタクト先の情報を入手できたとのことです。一社ずつ細かく関係性を作る労力を考えますと遥かに効率性が高いのです。ただ、ハノイはホーチミンではこういうわけにはいきませんがね・・・

日本人商工会や同じ工業団地内は重要なコミュニティですが、BtoCビジネスまで含めて考えますと、まず日系企業が着目するコミュニティとしては、日本人学校、県人会、同窓会、スポーツ同好会(テニスやゴルフ)、趣味(料理や猛虎会などプロ野球ファングループ)などに狙い撃ちのマーケティングを仕掛ける価値があります。まず日本人コミュニティで根を張るところからビジネスを確立するのが中小企業にとって有効です。具体的には、地域の日本人向けのフリーコミュニティ誌に記事を提供したり広告宣伝を行うことです。現地の新聞は読めなくても、ほとんどの日本人駐在員とその家族はフリーコミュニティ誌を読んでいます。広告出稿料は比較的安価ですので、これを活用するのはお薦めです。単に日本人向けレストランなどサービス企業にのみ有効なのではなく、BtoB企業であったとしても結構宣伝広告を継続的に出しているところがあり、何か現地調達で困ったときにすぐに思い浮かぶ効果がありますので、日系社会にターゲットを置く企業としては、BtoB、BtoC双方とも活用する価値が十分にあるのです。

特定のコミュニティをターゲットにする一番の目的は口コミの誘発です。ターゲットを絞れば絞るほど特徴が際立ちますので、ターゲットコミュニティにアプローチすることによりメンバー内で話題に上りやすく、いったん活用した人は他の人にしゃべりたいという心理的要因から口コミを誘発する効果があります。これはもちろんプラス面とマイナス面があります。もしネガティブな口コミが拡散してしまいますと、その地域ではやっていけなくなるリスクも覚悟しなければならないのは要注意です。

ターゲットを日系コミュニティにおくだけでなく、現地ローカルコミュニティで口コミを誘発するマーケティングを実践するには、違った手法が必要となります。特にベトナムではベトナム語でのコミュニケーションが必須となりますので、フェイスブックなどを活用したSNSコミュニティへのアプローチを図ることや、継続的なCSR活動による国、社会、国民への貢献を広報戦略と一体化して取り組むことが求められます。この手法は中小企業にとってはかなりハードルが高くなりますが、現地社員を育成しマーケティング活動や社会貢献活動を現地化する過程で実践を図っていけるものですので、当面は規模の大きい企業向けに有効かと思います。

中小企業にとって単に販売や利益拡大の手段として海外展開を考えておられるのであれば早晩行き詰るのは確かであると思います。やはり出発点は自社の存在意義である経営理念の実践を通し、社会の発展、従業員、顧客の幸せのためにいかに貢献していくかです。そのためには、社会のステークホルダーにあまねく自社の考え方や提供する価値を凝縮した商品、サービスを知っていただくコミュニケーション戦略を実践するブランディングは欠かせません。広告宣伝やブランディング費用はコストと考えるのではなく、投資であり無形資産をいかに形成していくかという発想が求められます。次回はBtoB企業にとってのブランド戦略についてお伝えしたいと思います。

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