コラム

 公開日: 2017-05-16  最終更新日: 2017-05-18

企業の成長発展には海外展開は欠かせない



昨今、企業経営で一番の課題は人の確保です。特に若年層の人材採用が大変厳しく、コストダウンの必要性からも、外国人技能実習生を活用しようとする企業は相当増加しています。しかし、以前からコラムで申し上げていますが、人が足らないから技能実習生を求める企業の多くでは、本来の実習制度の主旨を捻じ曲げ、単なる体のいい代替労働力としてしか扱っていないことが実態です。実習を通じて発展途上国の人材育成に貢献し、出身国の産業、経済発展に寄与するための制度がいつの間にか建前になってしまっているケースが多いのです。研修の機会もろくに与えず、過酷な労働環境でこき使い、違法な最低賃金以下の給料で残業代もまともに払っていないことなど、悪質な労基法違反が広がり、残念ながら実習生が行方不明になることが多く発生しています。国連の機関や米国も日本の技能実習制度を批判しています。国も対策に乗り出し、実習生の労働条件の是正や送り出し機関や受け入れ団体の管理などが法改正されています。そのため、実習生を受け入れる企業や農林水産業者などにとっては、相当大変な管理業務が増えています。現地に出張しての人選もかなり負担なようです。実習生が増えてくると、それなりにいろんな問題も増えてくるわけで、受け入れ側にとってはだんだん使いづらくなってきている制度になっていることも確かです。

成長発展には海外の市場と人材を活用することが鍵


企業にとっては、経営資源の一番重要な人材をいかに確保するかが、成長発展には欠かせないのですが、それは日本に留まって事業を行う限りはずっとついて回る問題です。しかも、少子化が加速し人口が減少する日本では、市場規模が縮小するうえに労働力を確保できない経営環境は、ますます深刻化することを考えなければなりません。

企業が持続的に成長発展を目指すのであれば、やはり海外での事業展開に挑戦していくことが条件にならざるを得ません。海外の市場は日本より成長性が高く、企業にとっては大変魅力的です。それでは、その海外市場に挑戦するには、輸出から始めようというのが第一段階で考えることです。しかし、海外市場は日本に座っていては見えません。最初は自社で販路がないわけですから、専門商社なり現地での販売代理店を探すことから始めます。とはいえ、そう簡単に売れることはありません。また輸出にはコストがかかります。中間マージンにかなり取られ、しかも国際物流コストも高く、輸送リードタイムが長くなることによる資金負担や在庫リスク、売れ残り返品リスクなど、大きな壁が幾重にも立ちはだかります。

それでも海外市場に出ていかないと、日本での成長性は望めないことを理解するならば、思い切って自ら生産拠点、販売拠点を投資して進出することで、ブレークスルーする可能性が飛躍的に高まります。企業が成長発展するためには、第三者の流通網に頼る輸出だけでは困難といえるでしょう。海外への直接投資展開を行うことが成長の条件と言わざるを得ないのです。

人の問題を解決するために、海外技能実習生を活用するというのは、制度的にも受け入れ側の能力の点でも、そろそろ限界に近づいています。わざわざ日本にそういった労働力を輸入して企業経営を行うのではなく、企業が自ら事業を海外に展開し、そこで豊富で優秀な人材を活用するほうが、より成長発展につながるのではないでしょうか。

海外展開すると国内は空洞化するか?


「そうはいっても、そんな簡単に海外展開などできるわけがない。投資資金も必要だし、海外経営をやれる人材がそもそもいないじゃないか」・・・・躊躇される中小企業がほとんどではないでしょうか。しかし発想を変えれば海外に打って出ることは十分可能です。公的機関の支援制度も充実していますし、海外経験の豊富な企業OBはいくらでもいます。私のようにハンズオンで海外展開支援を行い、エンド・ツー・エンドで頼れるコンサルタントも多くいるのです。もっと第三者の知恵を借りれば、海外展開はそんなに困難なことではありません。

もう一つ心配な点が、海外に展開してしまうと、日本で作るものがなくなり空洞化してしまうのではないか、日本で働いてもらっている社員を解雇しなければならなくなるかも知れないという懸念です。過去、大企業が海外に拠点を移していったときには、この問題が大変大きかったと思います。確かに国内に留まっていた下請け企業の多くは受注が激減したところもありました。しかし、産業全体で見たとき、海外展開は日本国内の事業を縮小してしまったのでしょうか。

冒頭に掲げたグラフは2014年の中小企業白書を引用したものです。非常に興味深い事実が読み取れます。2004年を起点とし、2004年度に海外直接投資を行い2011年度まで海外展開を継続している企業と、2011年まで海外展開していない企業を比較したときの、国内従業員数の推移を表しています。海外展開したことで国内事業に空洞化が起こるのであれば従業員数は減少するはずです。しかし、海外展開している企業の方が国内の従業員数が増えているのです。むしろ、海外展開していない企業は横ばい、または減少傾向を読み取れます。従業員数の増加は事業規模の拡大と同義であるといっても良いでしょう。

これはいったい何を意味しているのでしょうか。海外展開することによって、国内の支援業務が増えることも考えられます。しかし、一貫して国内従業員数が伸びているということは、確実に海外展開が企業全体の成長発展に寄与していることを意味しています。海外展開することによって、新たな市場に参入できたり、新規顧客を獲得につながり、日本国内での製造販売にもプラスの影響があることが証明されています。つまり、企業が成長していくには海外展開は必須条件であって、様々な理由から海外展開に踏み切れなかった企業は、明らかに成長から取り残されてしまったという厳然たる事実を認識しなければなりません。

海外展開はマネジメントノウハウも日本とは全く異なります。中小企業の多くは、とても海外に出て行って事業をやるほど余裕がないと考えておられます。しかし、企業にとって成長発展を持続していくことが従業員の雇用を守るためにも重要課題と考えるのであれば、経営者としての視野をグローバルに広げ、新たな成長源泉を求めて、自社の強みを生かした海外展開に打ってでることこそが、企業の社会的責任の一つであるように思えてくるのです。

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