コラム

 公開日: 2017-07-29 

ベトナム人が日本研修で感動すること


JICAのODAプログラムの一環でベトナム人経営者研修の「経営塾」講師を担当して4年になります。私は実際にベトナムで一週間の一つの研修セッションを担当するのですが、「経営塾」そのものは全部で10セッションあって10か月の長期研修です。ベトナムで行う研修は座講が中心ですが、最終発表会の前のセッションで2週間の日本研修が組まれています。

ベトナム企業の経営者が塾生のほとんどですが、全体的に30歳から40歳代と若く、日本に行ったことがないかたも約半分ぐらいおられます。彼らにとっての日本研修は、人生にとっても忘れられないほどの強烈な印象を与えています。彼らが改めて日本企業や日本人、また日本そのものを見て何を感じて帰っているのか、日本人にとっても非常に参考になることが多いように思います。

6月にホーチミンで講義を行ったクラスのメンバーが7月16日から2週間日本研修にやってきました。最初東京に入り、JICAや関東の企業を訪問したあと、生まれて初めて(ほぼ過半数以上)新幹線に乗って京都まできて、その後関西地域の企業や大学などを訪問したり、茶道などの日本文化を学ぶ機会があったり、企業との交流会などのスケジュールをこなし、今日29日にベトナムに戻っていきました。

私はできる限りスケジュールを調整して、日本研修に来たベトナム人塾生に会いにいき、できれば晩飯を一緒に食べに行ったりしています。私がふらっと研修中の部屋に入りますと(もちろん研修の邪魔にならない時間を確認したうえで)、彼らはものすごく喜んでくれます。ベトナム人にとって、異国の地で毎日毎日初めて会う日本人から研修を受けるというのは本当に疲れると思います。単なる一つのセッションの講師と生徒という関係でなく、一週間ずっとベトナムで一緒だった面識のある日本人がわざわざ会いに来てくれたということだけでも、ほっとする瞬間だろうというのは、彼らの表情を見てもよく理解できます。

何に感動して帰国したか


今回のホーチミンからの塾生とは、今週火曜日の企業交流会のときと、昨日の研修成果発表会の2回会う機会がありました。研修成果発表は企業の業種などに分かれて5つのグループでぞれぞれ行ったのですが、夕食時の話や研修成果発表でを聞いてみますと、ほぼだいたい共通したことを言っています。彼らにとって日本企業を実際に訪問して、じっくりと日本経営を現場で目の当たりにしたのは初めての経験です。その若きベトナム人経営者が日本企業を見て何を感じ、何に感動したのでしょうか。

まず全員が一様に口を揃えていったことが、日本企業は訪問したところすべて企業の経営理念が立派に確立されていて、どの日本人もその企業は何のためにこの事業を行っているか全員が当然のことのように説明してくれたことでした。もちろんJICA側も有益な訪問先を選定されているので、立派な企業ばかりを訪問手配したことが背景にあるかも知れませんが、各企業で説明された商品そのものに、経営理念が魂のように入り込んでいると強烈に感じたとのことでした。単なる便利な製品ということではなく、顧客の価値のために、顧客に喜んでいただくために、「商品に理念という魂が溶け込んでいる」という表現をしたのです。こんな日本企業の商品と競争していくには、単に価格が安いとか機能が上とかいうレベルでは無理、ベトナム企業も商品にかける思い、理念をしっかりと確立し、全社員がそれを理解して商品に反映させないと勝ち残ることはできないという感想を言っていました。

さすが若くても経営者だと感心しました。それと、もう一つ共通で感動していたのは、日本企業はどこも人づくりが最大の経営課題であり、一生懸命人を育てようと必死になって努力しているということでした。人材流動性の高い発展途上国では、人は育ててもすぐに転職してしまうこともあり、人材は必要なときに必要なリソースを確保するのが経営という感覚があり、人をじっくり育てて経営を強化するという発想にはなかなか立てません。今回の日本研修では、松下幸之助翁の「モノをつくる前にヒトをつくる」考え方に非常に感銘を受けたようで、会社を成長発展させていくのはすべてヒトという経営資源がカギであり、従業員一人ひとりの心に火をつけるリーダーシップの大切さの話が一番印象に残ったと口を揃えていました。

彼らは今日ベトナムに帰っていきました。まだあと一回経営塾の締めくくりの個人別の成果発表会が残っていますが、おそらく彼らはすぐに経営に生かしていける素晴らしい体験をしてくれたと思います。ある塾生の経営者はこう言っていました。「すぐに自社の経営理念をもう一度振り返り、何を目指してこの事業をやるのか、魂を込めた商品とは何か、じっくり考え、そして従業員全員が同じ思いで共通のゴールに向かって進めるように頑張りたい」

いずれベトナムが日本を追い越す日が来るような気がした一日でした。

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