コラム

 公開日: 2017-06-16  最終更新日: 2017-06-23

ロンドンの高層マンション火災


 ロンドンの高層マンション「グレンフェルタワー」(築43年・24階建て120戸)で発生した火災ですが、日本では考えられないほどの大惨事となってしまいました。日本のマンションで火災が発生したとしても、1室で済むことが多いそうです。勿論、適切な管理が行われていればの話ですが。
 2015年(2年前)に日本全国で発生した高層マンション火災は477件で、そのうち死亡火災は13件(死亡者14人)ですが、火災の平均焼失面積はたったの3.4平方メートルだそうです。なんと1坪程度で済んでいるのです。今回火災が発生したロンドンのマンションは、1階から3階に公共施設が入り、4階以上が住宅部分となっています。この4階の1室の冷蔵庫からの出火が原因ではないかと、今のところ考えられおり、改装工事でガス管を交換した際に何らかの原因でガスが漏れて引火したのではないかとの見方もされています。
 今回、これほど大惨事となってしまった理由としては、大きく2つあるようです。1つ目は、出火から15分という速さで建物全体に炎が広がってしまったことです。2つ目は、スプリンクラーや火災報知器等の防火設備の不備です。まず、15分という速さで炎が広がってしまったのは、外壁素材に原因があるようです。このマンションでは、昨年までの2年間で約14億円をかけて、内装工事や暖房システムのほか外壁工事を終えたばかりでした。この外壁に使用された素材が燃えやすいウレタンではないかとの専門家の意見があります。ポリウレタン樹脂を主成分とし発泡させたスポンジ状の素材は、高い断熱性がありますが、非常に燃えやすいとのことです。また、この素材をアルミニウム材で覆ったパネルを外壁に張り替えたようで、このパネルは低コストで外観が非常に綺麗になるのですが、アルミニウム自体が低温度で溶けるため、その中のウレタンが素早く燃えてしまったのではないかとのことでした。
 次に防火設備の不備ですが、火災が発生した時に火災報知器が鳴っていなかったようで、またスプリンクラーが設置されていませんでした。住民の話によると、消防設備の点検も1年以上行われていないこともあり、火災発生時の避難方法についても掲示や案内がないそうです。そして、何よりも適切な防火区画がされていなかったようです。日本の防火区画は建築基準法で定められており、火災時に急激に燃え広がるのを防ぎ、タテ・ヨコ方向にも延焼しないように、1住戸で火災が終わるようにしています。イギリスにも、高層マンションのフロアー間や各住戸間で火災が広がらないように防ぐ意図の法規制があるようですが、このマンションはその法規制が施行される前に建てられていましたので、火災の広がりを防ぐ手段を講じていなかったみたいです。
 下の図は、このマンションのイメージ図ですが、建物の中央にある階段が避難階段で、バルコニーがありませんので、避難階段への経路は各住戸の玄関からの1つしかありません。


 日本では、建築基準法施行令121条で、居室から二方向に避難することができる経路を確保しなければならないことになっていますので、住戸の玄関から避難階段に行く経路と、バルコニーの隔て板を破って隣戸の玄関から避難階段に行く経路、若しくはバルコニーにある避難ハッチで階下に降りて、階下の住戸の玄関から避難階段に行く経路の2つ以上の経路を確保するようにしています。

建築基準法施行令 
(二以上の直通階段を設ける場合)
第百二十一条  建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。

 また日本では、15階以上の階に通ずる直通階段は、屋内と階段室との間に附室(階段室に煙が入り込まないようにするための区画室)を設ける特別避難階段としなければなりませんし、スプリンクラーや連結送水管の設置義務、防火区画等の法整備がなされていますので、冒頭に記述しましたように、火災が発生したとしても1住戸で済み、焼失面積も1坪程度です。今回のロンドンでの火災では、改修した外壁素材が非常に燃えやすかったことが原因のひとつでもあるようですが、防火設備の設置と適正な管理が行われていれば、人的被害はもっと少なく済んでいたと思われます。

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