コラム

 公開日: 2017-09-27 

大規模修繕工事の工事契約について


 海外では工事の契約条件が変わると必ず交渉が行われて、施工者は工期を延ばしてもらったり、コストを上げてもらうようです。契約の考え方が日本と欧米では違い、日本の場合ですと、工事全体の完成を請け負うことが契約の前提で、途中で想定外の変更があっても何とか完成させようと考えて工事を進めますが、欧米では、契約した条件に合わせて業務を遂行することが目標で、工事を完成させるかどうかはその変更に関わる条件次第です。条件が合わなければ完成しないということです。
 また、数量変更を伴う単価設定も条件によって動くのが前提で、どれぐらい数量が変更したら単価を見直すかを契約条件の中に盛り込まれています。しかし日本の場合は、お互いの信頼関係を重んじ、あまり責任範囲を明確にしすぎてギスギスした関係になることを嫌います。コストについては、欧米では単価と数量で毎月精算する仕組みですが、日本では工事着手時払いと中間払い、そして引渡し時払いというのが一般的で、基本的にコスト管理は施工者主導で行われています。またスケジュール管理も完成期日が明確に決まっているだけで、納期さえ守れば期中のスケジュールは施工者任せです。このことは、マンションの大規模修繕工事でも言えることです。
 幾つかの工事の契約方式のなかに、一式総価定額方式と実数精算方式とがあり、日本では、従来は新築工事も改修工事も一式総価定額方式でしたが、今は実数精算方式に移行しています。マンションの大規模修繕工事の場合には、足場をかけてみないと分からないという不確実性の高い要素も含んでいますので、すべて実数精算方式が良いのではないかと考えらますが、大きな問題が一つあります。それは発注者が多数の区分所有者で構成されている管理組合ということです。大規模修繕工事の費用は、区分所有者の皆様から毎月徴収している修繕積立金が財源です。この修繕積立金の取崩しには総会の承認が必要となり、大抵のマンションでは管理規約で定められています。実数精算により、承認いただいた額よりも増額が発生した場合には、再度総会の承認が必要となってしまいます。ですから、マンションの大規模修繕工事においては、一式総価定額方式と実数精算方式の中間方式がとられていることが多いようです。実数精算は外壁や下地補修等のみを対象とし、その他は一式総価定額で実施します。実数精算の結果で増額になることをできる限り避けるために、設計者は実数精算項目の暫定数量を高めに設定しているようで、数量が減ったのであれば管理組合に費用を戻せば良いようにしています。暫定数量の決め方については、設計事務所によって違い、次のような方法で決めているみたいです。①実際の現場を詳細に調査しないで1㎡当りあるいは1住戸当りという経験値に基づいて算出する方法、②ある程度のエリアをサンプリングして調べる方法、③具体的に打診したりゴンドラを掛けたりして丁寧に調べた結果を係数により何倍かしていくような方法、の3つです。私の経験上では、①はほとんどなく、②と③を併用した方法が多くとられているように思います。
 実数精算の暫定数量を多めに設定し、万が一増額になった場合を考慮して、契約金額にいくらかの予備費を計上して総会で承認をとっている管理組合が殆どだと思います。この予備費は、実数精算の増額だけはなく、工事中の予期せぬ追加工事にも対応するためのお金でもあります。予備費の設定額を尋ねたアンケートでは、工事費に対して「10%」が半数を占めており、次に「5%」、「5~10%」だそうです。
 最後に、大規模修繕工事の請負契約には約款が付けられますが、この約款は民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款で、基本的に新築工事を想定して作成されたものです。マンションの改修工事に対応して作成されたものではありません。ほとんどの施工者がこの約款を契約書に付けているのが現状です。今年の春にお手伝いさせていただいた大規模修繕工事の際もそうでした。しかし、昨年の4月に民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款委員会によって「マンション修繕工事請負契約約款」が作成されています。同じ委員会が作成したものですので、これから大規模修繕工事の請負契約を締結される管理組合様は、契約の相手である施工者に対して、この「マンション修繕工事請負契約約款」に基づいた約款を付けるように是非指示していただきたいと思います。それと同時に約款も必ず目を通していただけるようお願い致します。

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