コラム

 公開日: 2014-03-07  最終更新日: 2014-07-11

離婚事件簿その10~未成年子との面会交流調停(中編)

(前編はコチラ)
 未成年子との面会交流は、法律ではどう規律されているのか。
 実は、参考となる根拠条文は、民法766条ただ一つしかない。

  民法第766条
   1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交
    流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。
    この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
   2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を
    定める。
   3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護に
    ついて相当な処分を命ずることができる。

 このように、面会交流については、①父母間の協議、②協議が整わないときは調停、③調停がまとまらないときには家庭裁判所が審判で決めることとされ、その際には、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と抽象的に定められているに過ぎないのである(この条文は離婚前の夫婦についても類推適用される)。

 今回はこの内、②調停の実務の現場がどうなっているのかについて詳述しよう。

 非監護親(子供と離れて暮らしている方の親)が子供への面会を求めたが、監護親(手元で子供を養育監護している親)がこれに応じないなど、面会交流について協議がまとまらない、協議ができない場合には、まず、非監護親は監護親を相手方として、面会交流を求める調停を家庭裁判所に申し立てることになる。
 管轄裁判所(当該紛争を取り扱う裁判所)は、相手方である監護親の住所を管轄する家庭裁判所または、当事者間で合意をした家庭裁判所である。

 家庭裁判所では、調停委員(男女各1名ずつの場合がほとんど)に加えて、必要に応じて、家庭裁判所調査官、裁判官が立ち会って、申立人(面会交流を求める非監護親)と相手方(面会交流を求められている監護親)が、交互に、調停室に入って話をしながら、調停手続(話し合い)が進められていくことになる。

 裁判所のウェブサイトでは、「子どもとの面会交流は、子どもの健全な成長を助けるようなものである必要があるので、調停手続では、子どもの年齢、性別、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境等を考えて、子どもに精神的な負担をかけることのないように十分配慮して、子どもの意向を尊重した取決めができるように、話合いが進められます。
 また、面会交流の取決めに際しては、面会等を行う際に父母が注意する必要のある事項について裁判所側から助言したりします。なお、話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が、一切の事情を考慮して、審判をすることになります」と説明されている。

 当事者間で、調停による話し合いがすぐにまとまればそれでいいのだが、そう簡単にはまとまらないケースが増えてきている。
 こういったケースでは、裁判所は児童心理学等についての専門家でもある家庭裁判所調査官に命じて、監護親・非監護親への事情聴取、概ね10歳以上の子供の場合は子供からの直接の意向聴取、それぞれの家庭への訪問、保育園や幼稚園、小学校など子供が通っている施設の職員への事情聴取などを行い、子供の養育監護状況や発育状況、子供が面会交流についてどう考えているのか、面会交流を認めるべきか、認めないべきか、認めるとした場合にはどのような条件のもと認めるべきかの判断材料を調査収集させることになる。
 こうした調査が行われるのは、当事者への助言や説得のためでもあるが、当事者間で話し合いに折り合いが付かず、調停がまとまらなかった場合には、自動的に「審判」手続に移行し、家庭裁判所は、面会交流を認めるかどうか、認めるとした場合の条件について、審判という名の判断(裁判)を行わなければならないからだ。

 近時、日本の家庭裁判所は、親の間で高度の葛藤(いがみ合い)状態があっても、監護親は我慢して積極的に子供の面会交流を認めるべきだという価値観が強いような印象を受ける。
 DVや児童虐待など、よほどのことがない限り、監護親に対して、子供の面会交流、それも監護親の同伴・立ち会いのない状態における面会交流を認めるよう、強く監護親を説得することが多いというのが私の実感だ。

 ところが、相手(非監護親)と高度の葛藤状態にあり、全く信用していない監護親は、こうした裁判所の価値観を受け容れることなどできるはずもなく、裁判所サイドがいくら説得しても応じない。
 逆に、調停委員や裁判官に「どうして会わせたくないか」「いかに会わせることが嫌なのか」を必死に訴えるわけだが、これは、なかなか裁判所には理解してもらえないのだ。
 このような次第であるから、「家庭裁判所は面会交流を求める非監護親の味方をして、強引に面会交流を実現しようとしている」などと、調停委員や裁判官に対して、強い不信感や不公平感を持っている監護親も多いのではないだろうか。

 いずれにせよ、調停の段階では、当事者間の話し合いに、調停委員や裁判官、調査官の意見を織り込みつつ、当事者間で妥協点を探っていくことになる。
 調停委員や裁判官、調査官は、助言や意見を述べることもあるが、これらに強制力はなく、あくまでも当事者双方が、子供の面会交流についての条件について同意承諾しなければ、調停は成立しないのである。

 調停がどれくらいの期間行われるのかについては、明文の定めはなく、ケースバイケースとしかいいようがない。
 調停期日については、だいたい1ヶ月から1ヶ月半に1回くらいのペースで開かれるが、これは、裁判所の事件処理能力(事件が多い裁判所ほど忙しく、なかなか調停の日が入らない)や当事者の都合(調停期日に出てこられるかどうか)などにより左右される。
 そして、当事者の強い葛藤状況を解きほぐすために、当事者間で面会交流について折り合いが付くまで、少しずつ、何回も調停期日を重ね、長い場合は1年以上にわたって調停が続くこともあれば、逆に、同じ葛藤状況が強い場合でも、当事者間で折り合いが付かないことが早期の段階ではっきりしてしまえば、調停をいくら継続しても無駄であるから、短期間(数回程度)で終わってしまったりする。(後編へつづく)

                                                        弁護士 松尾善紀

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