コラム

 公開日: 2014-03-28  最終更新日: 2014-07-11

離婚事件簿その14~離婚に伴う財産分与(後編)

(前編はコチラ)
 財産分与の対象となるのは、「共有財産」といって、預貯金、株式、生命保険の解約返戻金、不動産など、「婚姻期間中に」「夫婦が共同して」築いた財産に限られます。
 したがって、共有財産であるとして財産分与の対象となるのは、別居時に存在している財産ということになります。
 別居後に取得した財産は、離婚が未成立で婚姻期間中であったとしても、「夫婦が共同して」築いたとはいえないからです。

 ただし、退職金については、賃金の後払いとしての性格が強いことから、夫婦が共同して築いた財産と考えられているため、支給予定日が別居時より後であっても、財産分与の対象となるケースもあります(将来、退職金が支給されることが確実な場合や、その可能性が高いと判断される場合)。

 なお、マイナスの財産である債務(借金)についても、「夫婦共同生活のために負った」債務であれば、財産分与における清算の対象となり、プラスの財産から差し引くことになります。

 これに対して、独身時代から持っている財産、相続で取得した財産や、別居後に築いた財産などは、夫婦共同生活によって築かれたものではありませんから、「特有財産」(または「固有財産」)といって、財産分与の対象にはなりません。

 また、婚姻期間中に夫婦が家を購入する際、購入代金の一部を親から援助してもらうというのは、よくあることですが、この親からの援助部分についても、特有財産として財産分与の対象となりません。
 たとえば、マンション購入代金の2000万円のうち、400万円が妻の親からの援助で、残りの1600万円が夫名義の住宅ローンである場合、財産分与の対象となるのは援助部分である400万円を差し引いた1600万円(購入代金全体の8割)になります。
 離婚の際、住宅ローンを完済していて、マンションの時価が1000万円になっていたとすると、財産分与の対象となるのは、時価の8割の800万円となり、この部分を夫婦で分けることになります。他方、妻の親からの援助部分は、妻の特有財産になります。

 しかし現実には、夫婦共有財産と特有財産とを明確に区別することなく、ない交ぜに一体管理していることは決して珍しくないため、ある財産が、夫婦共有財産なのか、特有財産なのかが、争いとなりがちです。
 この場合、特有財産であると主張する側が、証明しなければなりません。
 たとえば、結婚前から持っていた財産であると主張するためには、古い通帳を見つけてきたり、銀行から取引履歴を取り寄せるなどして、これを証明する必要があるわけです。
 相続や贈与で財産を取得した場合も同様で、遺産分割協議書や贈与契約書、預金通帳の記載(日付や振込名義など)等によって、相続や贈与で取得したものであることを証明していきます。

 「共有財産」と「特有財産」の切り分けができたなら、次に、財産分与の対象である「共有財産」の価値がいくらであるかを評価していくことになります。
 共有財産であるか否かは、「別居時」が基準になりましたが、共有財産の価値を評価する時期については、基本的には「審理終結時」を基準とするとされています。

 不動産や株式は、市場動向により価格が変動するため、いつの時点を基準とするかにより大いに評価が異なるわけですが、購入時でも別居時でもなく、審理終結時の価格で評価されるわけです(もっとも、すでに不動産や株式が売却されている場合には、その売却額が基準になります)。

 ただし、最も身近な財産である預貯金や、生命保険の解約返戻金については、取り扱いが異なり、「別居時」の残高・金額で評価します。
 また、将来の退職金についても、多くの場合には、「別居時」に自己都合退職したと仮定して算出された退職金額が基準となりますので、これらの財産が対象となっている場合には注意が必要です。

 財産分与については、民法において、「家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」(第768条3項)とあるのみで、「その他一切の事情を考慮して」、さらに「分与をさせるべきかどうか」としており、そもそも財産分与をするかどうかまで含めて、家庭裁判所に広い裁量が認められています。
 したがって、実務上の基準はあくまでも目安であり、最後は家庭裁判所の裁量判断に委ねられているということを留意しておいてください。

                                                        弁護士 上 将倫

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