コラム

 公開日: 2014-07-11 

男女間トラブル事件簿その8~婚外子と認知

 最近、当事務所では、婚外子を巡るご相談が増えています。
 そこで今回は、婚外子について生じる法律問題について、ご説明したいと思います。

 婚外子とは、戸籍上、婚姻していない男女の間に生まれた子供のことで、法律上は、婚姻している夫婦間の子である「嫡出子」に非ざる子ということで、「非嫡出子」といいます。
 婚外子に関する実務上の問題は、ほぼ「認知」、「養育費」、「相続」に絞られるのですが、中でも重要なのが「認知」です。
 そもそも、認知がなされなければ、父親に対して、養育費を請求することもできませんし、父親の相続人となることもできないからです。
 では、以下、婚外子と認知を中心に、婚外子に関する問題をみていきましょう。

 婚外子は、出生届により、母親の戸籍に記載されますが、後述の「胎児認知」をしている場合を除いて、その子供の父親欄は空欄となります。
 これは、母子関係が分娩の事実によって当然に発生するのに対して、父子間には、当然にその関係が認められるような事実は存在しないためです。

 婚外子は、父親との関係においては、父親に、婚外子を自分の血縁上の子として認める手続である「認知」をしてもらってはじめて法律上の親子関係が認められ、戸籍上の父親欄が埋められるのです。
 
 この認知をしてもらう手続については、任意認知と強制認知の2つがあります。

任意認知

 任意認知とは、文字通り、父親が、任意、自らの意思で認知の手続をすることをいい、父親自身が戸籍法の定めるところにより届け出ることによって行います。
 一般的に「認知をする」というのは、この任意認知を指します。
 任意認知は、遺言によってすることもできますが、遺言による認知の場合、その届出は、遺言執行者でなければできません。

 認知は、未成年者であってもすることができ、親の同意も必要ありません。
 ただし、以下の場合には、父親が単独で認知をすることはできません。

 ○ 子供が生まれる前に胎児を認知する胎児認知 (母親の承諾が必要)
 ○ 成人している子を認知する場合 (その子本人の承諾が必要)
 ○ 死亡した子を認知する場合 (死亡した子に、子や孫がいる場合にのみ認知することができ、
   その子や孫が成人している場合には、その子・孫の承諾が必要)

 また、一旦認知をすると、取り消すことはできません。

強制認知

 父親が任意に認知することを拒む場合、母親(子供が未成年の場合)あるいは子供本人(成人している場合)がとるべき手段が、強制認知です。
 強制認知とは、これも文字通りで、家庭裁判所において、父親に対して、認知を求める訴訟を起こし、勝訴判決をもって、強制的に認知をさせる手続です。

 父親が死亡していても、死亡後3年以内であれば、認知請求の訴訟を起こすことは可能です(死後認知)。
 死後認知においては、死亡した父親の代わりに検察官が相手方となって、訴訟が進められます。
 また、その訴訟が起こされたことは、父親の妻や他の子供たちなどの利害関係人にも通知がされますので、「そんな婚外子はいないはずだから死後認知がされるのはおかしい」と考える利害関係人が、「補助参加」という形で訴訟に加わり、検察官の味方をして、問題となっている父子関係を実質的に争ってくることもあります。

 ただ、実際の強制認知の手続は、いきなり訴訟を起こすことはできず、まずは認知を求める調停から始めなければなりません(調停前置主義)。
 調停の中で、認知を拒んでいた父親が、やはり認知請求に応じるとして、当事者双方で合意が成立し、さらに、家庭裁判所による必要な事実調査等によっても、その合意が正当であると認められた場合、家庭裁判所において「合意に相当する審判」というものがなされ、この審判をもって母親が届出をすることによって、認知がされます。

 一方、調停でもなお合意ができない場合、ここで初めて、認知を求める訴訟を起こすことになります。
 この訴訟においては、認知を求める側(母親や子供本人)が、父親との血縁関係を証明していく必要があります。
 この証明において、最も有効な手段が、DNA鑑定です。
 現在のDNA鑑定は、科学的に極めて高い精度で、父子関係の存否についての結論が出ますから、事実上反論の余地はなく、当事者間でも納得が得られやすいといいますか、納得せざるをえないわけです。

 DNA鑑定は、裁判外でも、民間の鑑定業者が私的に依頼を受けて行っており、費用は、業者によって異なりますが、現在では10万円前後で可能です。
 かつては30万円ほど要していたことを考えれば、ずいぶんと利用しやすくなりました。
 鑑定試料の採取も、思いの外、簡単です。
 鑑定業者の立会のもと、綿棒のような物で口腔内の頬部分の細胞を採るだけです(血液を採取したりはしません)。

 相手方の男性がDNA鑑定にも応じないという場合は、母親と子供だけでは鑑定が成立しませんから、手続的には、前記の強制認知の訴訟において、決着をつけるということになります。
 訴訟上、裁判所もDNA鑑定をするよう勧告してくれますが、それでも父親側が拒否した場合は、裁判所といえども強制的に鑑定を実施することはできないため、母親及び子供側は、鑑定以外の方法で、父子の血縁関係の存在を立証しなければならないのです。

 ただ最近では、携帯電話やパソコンでの、メールやSNSによる当事者間の妊娠を巡るやりとりが残っていることが多いため、これらのやりとりによる父子関係の立証が十分可能です。
 自分が父親であることを認めていることを前提とした内容のメールなどが、重要な証拠となるのです。

認知の効果

 認知がされると、法律上の親子関係が成立しますから、子供が未成年の場合は、父親に対して養育費の請求が可能になりますし(その請求方法や額の決め方は、離婚の場合の養育費請求と同様です)、父親が死去した場合には、父親の相続人として遺産相続をする権利が生じます。

 相続の場面では、民法の規定上、これまで長く、婚外子(非嫡出子)の相続分が嫡出子の半分とされていましたが、これは不当な差別にあたるという最高裁判決を受けて、平成25年12月5日に、民法の一部を改正する法律が成立し、非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分と同等になっています(同月11日公布・施行)。

                                                        弁護士 中村正彦

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