コラム

 公開日: 2012-12-20  最終更新日: 2014-05-23

免震の考え方は新しく斬新なものではありません。

実績のない新しい製品には未完成の部分が多く、後からもっと良い製品が出るので完成形を手に入れた方が賢明と云う考え方があります。確かに未知の分野にはその傾向が顕著です。例えばスマートフォン。出始めに飛びついて買いましたが、電話としては使い勝手の悪い事この上ありません。
携帯パソコンに電話機能が付いたと云う印象です。電話に使うだけであれば普通の携帯電話の方が遥かに便利です。今後スマートフォンに大きな改良がなされない限り、私は普通の携帯に戻してパソコン機能はもう少しディスプレイの大きなタブレットを新たに買う事を考えています。

話し変わって、免震と云う分野は未知の分野なのでしょうか。免震と云う言葉そのものは阪神大震災以降の言葉ですが、基本的な発想は、明治期以前から日本にありました。
不思議に思われるでしょうが、地震大国日本に明治以前は耐震構造の発想がなかったのです。それは、地震大国であるにも関わらず、工学が発達していない為、大地震が起きれば潰れるに任せていた、と云う訳ではありません。先祖から代々伝えられた伝承を元に地震力を受け流す「柔構造」と云う、現代工学がやっと辿り着いた発想で建物を建てていたのです。大きく揺れるが倒壊に至らない構造にすると云う発想です。

耐震構造の様な構造を「剛構造」と呼びます。剛構造は建物の一部分に地震に抵抗する部位を造り、その部分にのみ抵抗を依存しようとする発想です。解析が明快で扱いやすい為、明治期以降大きく発達しました。しかし想定外の力が加わり抵抗する部位が損傷を受ければ、その構造物は簡単に倒壊します。

柔構造は地震に大きく抵抗する部位を持ちません。全体が柔らかく建物全体で地震力を受け流します。その為一部が損傷しても建物全体が倒壊するという事はありません。建物全体で支え切れなくなると、柱の下にある礎石と柱脚の間で免震作用を起こし、そこで建物の倒壊を食い止めていました。ただ応力解析が複雑で数字として明快に割り出せない為、この技術は普及せず剛構造が主体の現代の耐震構造隆盛の時代に至ったのです。ようやくコンピューターの助けを借りて、最近になって柔構造が見直されつつあります。

柔構造の最後の抵抗手段が、免震の発想なのです。
剛構造は基礎を造り土台とアンカーボルトでしっかりと緊結します。その為地震の力全てが建物に伝わってしまいます。
柔構造は基礎を造らず、礎石を置いて、その上に柱をポンと載せるだけです。建物が揺れても抵抗できる間は建物で抵抗し、抵抗出来ないくらい大きな力になると、礎石と柱脚がずれる事により地震力を建物全体に伝えなくしていました。
その方が建物の倒壊を防げるからです。阪神大震災でも明治初期の基礎が用いられていない民家が、損傷こそしましたが、倒壊に至らず残っています。

この最後の手段の、礎石と柱脚の間で「ずれる」と云う発想を、工学的に解析して出来た装置が免震装置です。免震装置は土台の下に鋼製の架台を設け、その架台の下に砲丸投げの球の様な球体を10コ前後置いて、地面が動いても、その力を建物に伝えない「柔構造」です。

発想自体は古くからある方法ですので、未知の分野と云う訳ではありません。費用が高いと云う問題がありますが、工法そのものは完成された工法です。

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