コラム

 公開日: 2016-09-23 

100年持たせる住まい【住まい再好築】コラム

物理的検証

チラシやキャッチフレーズに100年住宅とか200年住宅と云った言葉が氾濫しています。長寿命の根拠はちゃんと示されているのでしょうか。
【地震】
南海東南海地震が100~150年周期で発生しています。今後30年以内の発生確率が70%を超えると云われているのはその為です。それで予想される地震の震度ですが概ね東日本大震災と同程度の規模であるとされています。建物が地震波と共振してしまう、固有振動周期の関係で東日本大震災は熊本地震や阪神大震災に比べて建物倒壊件数は少なかったですが、南海地震もそうであるとは限りません。
熊本地震を見ても分かるように、現行建築基準法を満足するだけでは今後発生が予想される地震に対して万全であるとはとても言えません。住宅の品質の確保に基づく法律(品確法)に規定される耐震等級3の取得が今後の常識になるでしょう。
但し、それだけで100年住宅の称号を得るには不十分です。現在の構造は工法の違いを問わず地震が発生する度に建物はダメージを受けます。一度は震度7に耐えられても二度目に耐えられるとは限りません。建物の弾性限界を超えてしまう衝撃が加わった際にその衝撃を逃がす、車で云うところのバンパーに相当する機構が建物に望まれます。具体的には免震支承がそれに相当します。免震住宅でないと100年間物理的に耐えられる家とは言えないでしょう。
【台風】
台風も家屋に大きな被害を及ぼす災害です。台風をカテゴリー別に分けますと強度を表現するのに①強い②非常に強い③猛烈ながあり、規模を表現するのに①大型②超大型があります。超大型で猛烈な台風はほぼ10年に一度は発生しています。台風は土砂災害や川の氾濫、高潮と云った水災害を伴い、風の強さだけで被害の大きさを予想する事が難しく、建物の構造的な対策だけでは安全とは言えないのが現状です。風だけで台風を表現しますと、過去に上陸した台風では第二室戸台風が最大瞬間風速69.8m/sを記録しています。平均風速は瞬間風速の約半分とされていますので常時35m/s程度の風が吹いていたことになります。建築基準法ではそれぞれの地域により基準風速が設定されており、大阪では殆どの地域が34m/sの風速に耐えられる様に規定されています。この事を考えますと過去に記録されたデータを元に法律が整備されている事がよく分かりますが、今後地球の温暖化に伴いスーパー台風の出現が懸念されている現在に於いて本当に必要且つ十分な安全性であるかと云われれば疑問が残ります。現行基準法の1.25倍程度(台風等級2)程度の強度を確保しなければ、100年間物理的に耐えられる家とは言えないでしょう。
【津波・竜巻】
この二つは建築基準法による規定がなく、各メーカーとも対策を取っておりません。東日本大震災の動画をよく見ていますと、津波が押し寄せた衝撃で建物が破壊されるのではなく建物の回りを水が取り囲み、建物自体がその浮力で基礎から切り離され、浮き上がって流されています。建物が浮き上がっても水が引けば元の位置に戻るような機構はまだ開発されていません。津波被害が懸念される地域では100年住宅は不可能だと云うのがわかります。

竜巻も最近は大気の不安定な梅雨前頃に広い平野を中心に多発しています。強度は藤田スケールと云う単位で表され、F0=風速17m~32m、F1=同33~49m、F2=同50~69m、F3=同70~92m、F4=同93~116m、F5同117~142mと云う段階が設定されています。日本で観測された竜巻は2012年につくば市でF3クラスの竜巻が発生しています。建築基準法で設定されている基準風速を数倍上回る風が吹きますので、建物は竜巻に対してはまったく無抵抗です。竜巻が予想される平野部での100年住宅も竜巻対策をしない限り不可能です。

人生80年と想定しても、人は色々な災害に見舞われます。100年を見据えた場合法律で規定されていない予想されうる災害に対しても検討を重ねないと安易に100年住宅とは言えない事が良く分かります。

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一級建築士 福味健治

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