コラム

 公開日: 2017-05-24 

近大マグロは何故メジャーになったのか ~16~

<オークジェイ戦略モデル3つの習慣 Branding Customs>
さて、今回はブランディングを進めていくうえでの3つの習慣についてお話ししたい。
近畿大学水産研究所には昔から伝わる「教訓」がある。それは、第2代研究所長だった故原田輝雄先生が口癖のようにスタッフたちに教えていた「わからないことは魚に聞け!」という言葉である。
この言葉を技術スタッフから初めて聞いたときの私の印象は「えっ!?」だった。
「魚がしゃべるはずないじゃないか・・・。」 みなさんも多分同じように思ったのではないだろうか。
問いただすと、彼は当然のように言葉を続けた。
「そうなんです。もちろん魚はしゃべることはできない。だから彼らは自らの死をもって訴えているんです。そして我々は彼らの死を1尾たりとも無駄にしないように、常に現場に行って観察し、考え、良いと思ったことは何でもやってみる。・・・この繰り返しがあったからこそクロマグロをはじめ、多くの世界初の偉業を成し遂げることができたんですよ」。
彼の言葉には説得力があった。水産増養殖の世界で常にトップを走り続けてきた近大水産研究所の秘密はここにあったのだと教えられた。同時に、当時私が悩んでいた販売戦略についても大きなヒントとなった。これを自分の立場に置き換えれば、「わからないことはお客に聞け!」だったのだ。
顧客ニーズという言葉は営業担当者に限らず、だれでも頻繁に使う言葉だ。しかしこの言葉を本当の意味で理解している営業マンはいったいどれくらいいるのだろうか。私も顧客のもとを頻繁に訪ねることもなく、「美味しければ売れる。美味しくないから売れないんだ」と、勝手に決めつけて迷宮に入り込んで悩んでいたのだ。
その話を聞いて以来、しつこいくらいに顧客である卸売市場の荷受業者とコンタクトを取りながら養殖魚のブランド化をお願いしていった。しかし、結論から言うとこの戦略は失敗に終わってしまった。魚のプロである荷受業者を相手になかなか商品力で説得することができなかったのだ。
こうして数か月が過ぎたころ、知らず知らずのうちに荷受業者のもとを訪ねることも、新しく試みようとすることも少なくなり、ブランド戦略はいつしか停滞してしまっていた。
そしてあるとき、外部のコンサルタントに意見を聞こうと訪ねたところ、そこで得た言葉が「客は一種類だけではない。流通の川上から川下まですべてが顧客なのだ。そのすべての意見を聞いているか。」というヒントだった。
そのコンサルタントの言葉は新鮮だった。さっそく全国の流通先を自らの足で訪ね、意見を聞いて回っていたところ、数か月たったある時に、ひとりの消費者から「そう、近大のマグロは大学が生産しているの。だったら安心できるわね。」という意見をもらったのである。信用と信頼をもっとも必要とするブランディング戦略にとってこれほど心強い言葉はなかった。それ以来、この安心を「見える化」するための方法を考えるために常に頭の中はいっぱいになった。そして友人からのあるエピソードがヒントとなって、「マグロの卒業証書」が誕生したのだった。
この「卒業証書」をきっかけに大きくメディアで取り上げられた近大マグロは、店頭で販売されるとすぐに売り切れ状態になるほどに消費者の間でも話題となり、ブランド魚としての地位は大きく跳ね上がっていった。
振り返ってみると、私の近大マグロブランディング戦略は、行動し、深く考え、挑戦していた時に大きく進んだ反面、これらのことが実践できていなかった時には全く前に進んでいなかったのである。
これらの教訓から、ブランディングを効率よく進めていくためには無意識のうちに、行動し、深く考え、やってみることを日常生活の中に習慣というレベルにまで落とし込んでいくことが求められる。 (つづく)

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