コラム

 公開日: 2016-05-11  最終更新日: 2016-08-03

多くの人が知らない・・・在庫の科学 【商人舎magazine・5月号】

営業利益を向上させるためには、生産性を向上させる必要があります。

在庫は、経営資源である人、物、金、そして、情報、その全てに関わり、生産性に大きく影響を及ぼす重要事項です。
今回は、“手法”ではなく、“視点および思想”について、述べていきます。そして、次回にその具体的改善手法について述べていきたいと思います。

在庫管理には、処理作業のための人時投入。保管のためのバックヤードや倉庫。要冷対応品の保管のための冷蔵設備など、多くの投資を必要とします。
そして、物流システムやPOSシステムなどの仕組みづくりとも関係し、その管理の良し悪しは、粗利益や人件費、そして、営業利益に大きく影響を及ぼします。

また、店舗運営の基本四原則である、鮮度(品質)、欠品(品揃え)、接客(接遇)、クリンリネス(安全)のうち、特に鮮度と欠品の二項目に深く関係する重要要素でも有ります。
そして、言うまでもなく、鮮度や品揃えなどは、顧客満足度にも大きく関係する重要管理項目です。

事実、私の過去のクライアントの9割以上の企業が、在庫管理に何らかの問題を抱えていました。
特に営業利益率の低い企業では、“例外なく・・・”、その“質”と“量”共に、問題を抱えているのが、在庫管理です。
逆に言えば、在庫のムダやムラをなくすために、徹底して現場を観察して、科学し、問題を抽出して顕在化出来れば、間違いなく大きな改善に近付けることになります。

しかし、これらのことを「正しく理解していない」。
そして、意外に「問題に気付いていない」企業は少なくありません。
生産性が低い企業が、真っ先に取り組まなければならない重要課題の一つが在庫なのです。


在庫をデータだけで判断してはいけない


私は、数字の持つ本質的な意味を正しく理解していない、多くの企業を見てきました。
数字に弱く、数字の示す本質的な意味を、正しく理解していない中小零細企業が多いと思います。

この在庫に関しては、経営上、そして、現場の管理上、特に正しい理解が必要です。

過去にあった、生産性が低く、営業利益が低迷している、ある訪問先企業での話しです。
在庫管理の会話の中で、
「生鮮部門は、毎月の在庫金額を把握するように、店長に指示しています」と、本部の部長からのお話がありました。
私は、「棚卸の金額で、問題が解りますか?」と切り返したら、
部長は、「・・・・・?」明確な返事がありません。

私は、
「棚卸の数字(金額)は、ほとんど意味を持たないと思いますよ」
「在庫は、現場で、現物とその状態を視て、一つひとつの内容を確認することが重要です」
と伝えました。

データは、現場の本質を良く熟知した人が見ると、一つの仮説を設定する要素になることは確かです。
しかし、あくまでも推測の範囲内であって、その中身を理解することは出来ないのです。

商品管理上の良いか悪いかを、数字だけで判断してはいけません。本質を見誤ってしまいます。
商品自体やその管理状況、陳列状況など、現場の状態を直接視ないで、在庫金額や商品回転率、回転日数などのデータを見ても、全く何の役に立たちません。そのこと自体の行動自体がムダな時間です。
誤った判断をしてしまい、現場に不適切な指示をしてしまう結果になりかねません。

例えば、土曜日に棚卸をしたら二日分の在庫が有るし、土日の売上が高い店舗の場合は、在庫は更に増えて二日分では済みません。
在庫は、金額ではなく、品質や鮮度など、その中身が問題なのです。これは、生鮮品だけでなくグロサリーの商品にも言えることです。不良在庫は、売上を生まないロスでしか有りません。


不良在庫の意味を理解する


鮮度感のない店や、目新しさを感じない売り場の殆どは、店内在庫の内、売れ筋が少なく、逆に、お客からの支持が低く回転率の低いC~Dランクの在庫が多い状態である場合が多いのです。
この様な店舗の場合、平常から全体として在庫過多で、品質の低下(日付が古い)した商品が多く、必然的に商品ロスも多くなります。

また、理念(コンセプト)を正しく理解していない店は、棚卸し前になったら発注を控え、在庫金額を減らして、期末の在庫金額の数値を低くすることに努力します。
結果として、売れ筋商品の欠品が起こることも少なくありません。
この場合、お客にも迷惑をかけますし、会社も大きな損出を被ります。

「お客に高鮮度の商品を届ける」「欠品を起こさない」という、本質(コンセプト)を良く理解している店の在庫は、平常から(量的に)適正に保たれていて、棚卸だからといって発注を抑えるような馬鹿なことはしません。
欠品には罪悪感を持ち、「お客様にご迷惑をお掛けしないこと」を、行動として徹底することが重要です。


鮮度と生産性で勝負


スーパーマーケットという業態が、今後厳しい競争の中で勝ち残るためには、競合店に対して、生鮮品の鮮度と品質(商品とヒービス)が勝負の分かれ目となります。
この場合、日々取り扱っている商品が、「どれくらい高い鮮度をお客に提供できているか?」ということが重要です。
葉物野菜や刺身、そして、揚げ物など、高い鮮度を要求されるアイテムは、時間管理で、プロの目利きも要求されることになります。
DS鮮魚

商品を「如何に良い状態で、お客に届けるか」という考え方が、結果的に現場の多くのムダを減らして、お客の高い支持と信用を生み、生産性を飛躍的に向上させることになるのです。


現場を視て、あるべき標準を設定する


店舗や部門(カテゴリー)によって、在庫予算を設定することは大切なことです。

しかし、最も重要なことは、金額ではなく、数量管理を全員が把握して、ことに当たることが重要です。
「野菜の相場が高騰し、結果的に金額ベースで在庫金額が高くなった」という様なことは、何の問題もないことです。
そして、部門の売上規模にもよりますが、
⇒B~Cランク品は、開店後、(売り場に出し切って)バックルームには在庫がない。
⇒商品毎に、在庫日数(販売期限)が設定されている。
⇒商品特性毎に、売り場の陳列量が大方決められている。
などの『仕組み』と『基準設定』が、鮮度と生産性を高めることになります。

これらが数値(単品)管理の基本です。
そして、その総和が、あるべき在庫金額予算(基準)ということになるのです。
再度申し上げますが、在庫金額の設定は、回転率などで割り出して決めるべきものではありません。


機会ロス、商品ロス、人時ロスに大きく関わる在庫


不適切な在庫管理は、機会ロス、商品ロスというような、商品に関わる多くのロスを発生させ、粗利益の低下を招く要因となります。

そして、意外に問題視されていないことが、ムダな作業を生み出し、人時ロスを発生させるという事実です。
過剰であれば、(遣らなくてもよい)商品移動、作り過ぎ、出し過ぎ、手直し加工、疲労など、多くのムダな人時投入を行うことになります。
確実に、生産性が低下して、人件費効率を落とし、営業利益の低下に繋がります。

このように、ムダな在庫、不適切な在庫は、競争力を確実に低下させてしまう原因になります。

もう一度現場で、それぞれの在庫を、“量”と“質”の両面から、深く検証し業務改善に繋げていただきたいと思います。
改善が進めば、多くの成果を実感できると思います。


戦略的に管理する


それでは、より戦略的な検知から考えてみましょう。

想像してください。
もし、グロサリーのバックルームに在庫が全くなかったら・・・?

店舗で納品されてきた商品が、全て2~3時間の内に、荷捌き場から売り場に補充されてしまう。
そして、納品ロットが適量で、バックルームへの補充残品の戻しがない。
特売品などは、納品された後すぐに、陳列できるようにダンボールカットされ、専用カートに積み込まれる。
商品によっては、陳列用の専用カート(キャスター付催事台)に積み込まれ(陳列され)、移動の時を待つ。
当然、ダンボールなどのゴミは、バックルームで処理され片付けられる。
そして、担当者の移動も少ない。

「そんな夢のようなことは、うちでは考えられません」と言う声が聞こえてきそうです。
しかし、本来、「戦略を考える」ということは、あるべき形(思い、高い基準)に対して、どう現場現実を形作っていくかということです。

あるべき形の要求レベルの高さで、計画や方法、達成期間などが変わってきます。
在庫管理とは、鮮度管理のほかに、数量管理の側面から、物流を科学して、全体の管理工数を減らし、管理コストを減らすことなのです。
特に、店内作業のコスト削減が、競争優位性の確立に繋がる重要課題なのです。

コストが高いから、高く売らなければ儲からない・・・。これでは、競合店に対して初めから劣勢に立つことになってしまいます。


「君の売場には、バックルームが有るじゃないか!」


私が、業務改善チームのリーダーをしていた時のことです。
ペガサスクラブの東京青山でのセミナー中、特別に個別質問のチャンスを頂いた時のことです。

私は、新店の店舗図面を持っていき、レイアウトについて、渥美先生に質問しました。
「先生、弊社のレイアウトは・・・(中略)、如何でしょうか?」
渥美先生は、
「君のレイアウトには、多くのバックルームが有るじゃないか!」
という、予期せぬ一撃を喰らいました。

私は、「バックルームを減らしたら、もっと売場を広くできる」という意味だったと理解しました。
私は、「このオッサン、えらい事言うな・・・」と、正直その時は思いました。
しかし、すぐに我に返り考えました。言われてみればその通りなのです。
売上は売り場から生まれるのですから、売場を広くするという事は、非常に重要であるし、当たり前のことです。
要は、「だから、どうする!・・・ということを考えろ」ということなのです。

勉強不足で、物事を狭い視野しか見ることが出来ていなかった自分に、目からウロコの大きな発見をさせて頂きました。

この様に、どこに目標(視点)を持つかが非常に重要でありますし、それが、高いものになればなるほど、脳みそに汗をかく事になります。
しかし、時間の経過とともに、確実に基準レベルはアップします。

だからどうする・・・?


在庫が、少なくなれば、最低限のバックヤード面積で済みます。管理作業量も少なくてすみます。
その分、売場を広くできます。

そう考えると、ベンダーから入荷する時点で、それらの商品に、必要以上に余分な数が有ってはいけません。
納品ロットが適正であれば、バックルームの在庫がなくなり、補充のために、在庫をバックルームで探すという作業自体が無くなります。その分、投入人時数が減ります。
担当者は余った時間で、売り場管理の作業やお客の対応に専念できます。
だから、
センターからの納品ロットの改善(適正化)が求められるのです。
また、発注量と必要補充量のギャップを少なくすためには、発注から納品までのリードタイムも短いことが理想でしょう。
極端に言えば、お客様の少ない夜間や閉店後に発注して、次の日、担当者が出勤する前に店舗へ納品されることが理想でしょう。
発注制度も大きく向上し、店舗全体の在庫も適正量に保たれます。

そして、一連の仕組みが、例外なく、定時定例で行われることが条件付けられます。
作業は日々平準化され、従業員の出退勤計画も組みやすくなります。
曜日毎に大きく変わる納品量によって、作業が思うように進まないというような、現場のストレスも大幅に改善できると思います。
仮に深夜や早朝の作業が必要になって、作業員の時給がアップしたとしても、作業の処理スピードの速さで、十分に補うことが出来るでしょう。仮に人件費がトータルでアップしても、その他で十分なメリットを得ることが可能であると思います。

全てのことが改善可能でなくても、一つでも改善できれば、確実に生産性はアップすることになります。


どこに目標を設定するか


上述の事を「理想だ」の一言で終わらないでください。

先程も言いましたように、目標をどこのレベルに設定するかということが、重要なポイントなのです。
その要求レベルによって、遣らなければならない事が変わってくるだけなのです。
決して、難しいことではありません。

目標を高いレベルに設定すれば、売場在庫の“量(金額)”から、その“質(中身)”に焦点を当てることになります。

例えば、グロサリーでは、日々の販売量の多いものは、定番の棚のフェイシングを拡大し、在庫量を増やします。
回転日数を下げて、発注回数と補充回数を低減し、投入人時数を低減する努力をすることになります。
逆に、販売ランクが低い物については、フェイシング、在庫量共に削減の対象となります。
YK定番

そして、重点商品の販売量の拡大に努めます。
陳列位置の変更や関連販売。陳列演出やプロモーションなど差別化をはかります。
結果として、視認率や立寄り率、そとて、買上げ率のアップに繋げるという、直接的な行動に人時を戦略的に投入します。

これらのことも在庫管理なのです。
“作業の質”が変わってきます。
視点を変えれば結果は大きく変わります。


現場最適化が基本


在庫に関わる一連のことで、絶対外してはいけないことは、“現場最適化”です。

「現場(店舗)の作業工数を減らす」という考えが重要です。決して、本部やセンターの最適化ではいけません。

「現場の負担を如何に減らしてあげることが出来るか・・・」
「単純作業の工数を如何に減らしてあげることが出来るか・・・」
それが、本部の仕事の基本なのです。

そのことによって、現場では時間の余裕が生まれます。
情報発信のためのPOPや試食販売など、付加価値業務の遂行時間を確実に増やすことが可能になります。
お客様に対するサービスレベルの向上によって、客単価を伸ばす可能性が高まります。
競合店に対して、確実に競争優位性を高めることが可能になっていきます。
それが、成果を出す戦略です。

本部やバイヤーは、目先の物流費や商品原価などという、狭く表面的な見識だけではいけません。


顧客満足と従業員満足を考える


1.品質が良く、高鮮度の商品をお客様にお届けすること。
そして、
2.現場の単純作業の工程(数)を削減する。

この2点が、在庫管理の重要な視点であり、今後、競争をする上での『差別化戦略』と『生産性の向上』に、大きな関わりを持つことになります。


次回からは、より具体的な事例を紹介しながら、改善のヒントをお伝えしたいと思います。


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商人舎Magazine・5月号

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