コラム

 公開日: 2012-07-09  最終更新日: 2014-07-01

「建築って何?(21)」市場の信頼回復

 青木茂さんの著書「長寿命建築へ リファイニングのポイント」の中に次のコメントがあります。
【建築が市場の信頼を回復するためには?:再生建築では、その設計内容によっては確認申請書を提出しなければならない場合があり、その条件に当てはまるような設計を行う場合は必然的に確認申請書の提出を求められるが、リファイニング建築においては、新築時に確認申請を行うように、改めて確認申請を提出している。確認申請書、そして検査済証は、現在の法制度の中で市場の最大の信頼を得るものであり、それ以上でも以下でもないが、私は建築基準法に則った設計や工事を行うことにより、完成した建物が市場の信頼を得られると確信している。
 これまで行ってきたリファイニング建築では、既存建物をいったんスケルトンにし、現行の耐震基準を満たさないものに対しては耐震工事を行い、またクラック等、経年変化や新築時の欠損部分もすべて修復し、その調査と工事過程を「家歴書」として記録している。つまり、リファイニング建築を行うにあたり、過去に行われたすべての工事や、経年変化をチェックし、それを丁重に補修することにより、現在の法に定められた強度と品質を取り戻そうとしているのである。そのことにより、内と外から建築に対する信頼を回復することができると考えている。「家歴書」を作成することは、市場の信頼を回復するためだけでなく、その建物の建設当時の技術や工法を学ぶ良い機会でもあり、スタッフにはこれを義務づけている。
 このようにリファイニング建築の施工監理を行っていると、果たして日本の建築技術の水準はどうであろうかという疑問にいつも突き当たる。単純に、新耐震後の建物だからといってすべてが大丈夫というわけにはいかないだろう。私の経験からいえば、建物がつくられた場所、年代、施工会社、そしてその地域のプラント等が影響を及ぼし、上質な施工が施さされたものから、目を覆いたくなるようなものまで、まちまちである。今再び建築が市場の信頼を得ようとするならば、それにどう対処するかを抜きにしては語れないのではなかろうか。
 姉歯事件後、確認申請の審査が民間に開放され、特定行政庁の審査能力が格段に落ちたことは誰しもが認めるところであろう。トレーニングし続けていない技術や肉体はすぐに弱体化する。民間審査会社が増え、これまで審査される側にいた技術者が審査する側にまわったことも、審査技術の低下につながっているのであろう。早急に審査する側、審査される側相互の技術交流を立ち上げ、確認申請全般の判断基準の見直しと技術の伝承を行わなければ、混乱は増すばかりである。
 ストックの再生という仕事においては、あらゆる判断において、「いつ」「誰が」「何を」「どう決めたか」を明らかにする必要がある。仕上げを剥いでみれば躯体の状況は一目瞭然で判断できる。それをどのように補修補強するかは、コストをどのようにコントロールするかとのせめぎ合いとなり、いつも自問自答するところである。それを「誰が」「どう決めたか」を明らかにしなければ、リファイニング建築に対する信頼性は得られないと考えている。つまり、決定プロセスの透明化である。このことは、判断する人間にはかなりの重責がのしかかることになる。それなりの社会的地位とそれなりの対
価が保証され、権威を持った資格試験等も検討されるべきである。それによって市場の信頼を得ることができ、また技術レベルが上がり、ひいては、われわれ建築家の地位向上につながると考えている。これは容易いことではないが、実行しなければならないことだと思う。】
 真摯に受け止めたい内容です。

調査鑑定/設計監理/建築再生/CM
タウ・プロジェクトマネジメンツ

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建築家 高塚哲治

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