コラム

 公開日: 2015-06-12 

無暖房・無冷房住宅についての考察

無暖房・無冷房住宅についての考察
-高齢者の住環境を考える-
先日、住宅設計の相談にお見えになられた方から「無暖房・無冷房・無結露 究極断熱の家をつくる」と題した本を紹介されました。
断熱材にセルロ-スファイバ-を使った「Z工法」を提唱する、自称断熱屋の山本順三氏の著作です。
内容については疑問に思う点が多々あるのですが、それは次の機会に譲るとして、そもそも年々気候の変化が激しくなる日常において、室内の空気環境を積極的に調節しなくても快適な生活が成立するのか?特に高齢者や幼児など体力的弱者に対してのリスクはないのだろうか?といった疑問がわいてきました。
私の母は3年前に要介護2の認定を受け、ほとんど自宅内での生活となっています。
認定を受けた時に、エアコンは嫌いだという母を何とか説得して個室に設置しました。
さて、近年夏場になると話題になるのが、室内での高齢者の熱中症です。
高齢者は年齢を重ねるにつれ体温調節機能が低下し体に溜まった熱を下げる事が出来にくくなります。また、頻繁にトイレに行くのを嫌い、水分をあまり摂ろうとしません。
そして、昔よりはるかに厳しい気候になっているにもかかわらず「これぐらい我慢できる」と無理をしてしまうようです。
熱中症になると脱水状態になり、体内の熱を外に出す事が出来ず熱がこもって、体に様々な変調を来します。重症化すると命の危険にも及びます。
「熱中症ガイドライン2015」(日本救急医学会)によると発症のピ-クは梅雨明け後の7月中旬~8月上旬、気温31℃で患者が急増し、35℃で搬送者が大量発生するとのことです。
また同じ気温でも湿度が高くなるほど発症しやすくなるため、強い暑さを感じていない日でも注意が必要としています。
また、東京消防庁のデ-タによると時間帯発症状況は12時台が最も多く、ついで13時台、
11時台とお昼に集中しています。
では、高断熱・高気密住宅でよく提唱される「無暖房・無冷房の家」について高齢者の住環境の観点から考えて見ましょう。
気象庁の観測デ-タ-から年間平均気温 大坂の7・8月の最高、最低気温を見てみると
7月が31.6℃、24.3℃、8月が33.4℃、25.4℃です。(統計期間1981~2010年)
夜、外気温と室温が同じ場合、朝、屋根に太陽が照らし始めると表面温度がどんどん上昇しますが、高断熱施工の屋根及び天井の住宅はすぐには室温が上がりません。しかし徐々に室温は上がり外気温と同じになります。
つまり高断熱の家は、外部からの熱を取り入れ難くする性能に優れているのであって、快適な室温を継続して保ってくれるわけではないのです。
ちなみに前出の山本氏の著作では「外気温35℃が冷房の目安だ」と書かれています。
高断熱の家であっても最高気温に近い室温になるのであれば、高齢者や幼児にとってのリスクはないのでしょうか。
厚生労働省が作成した「熱中症を防ぐために ~みなさまに取組んでいただきたいこと~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002btf0-att/2r9852000002btgh.pdf
というパンフレットの中に、熱中症になりにくい室内環境が示されています。
・扇風機やエアコンを使った温度調整
・室温が上がりにくい環境の確保
・こまめな室温確認、WBGT値(※)の把握
※WBGT:暑さ指数で、熱中症予防のために運動や作業の強度に応じた基準値が定められています。http://www.wbgt.env.go.jp/
熱中症予防には「水分補給」と「暑さを避けること」が大切だと指摘されています。
節電対策など省エネ住宅も今後大切な取り組みなのですが、家が主人では有りません。住んでいる人が健康で長く暮らせることが大切なのです。
高機能な住宅のイメ-ジとして高気密・高断熱住宅が提唱され、あたかも無暖房・無冷房の住宅が最高であるかのごとくに評されていますが、ケ-スバイケ-ス、其々住まう人々の年齢や健康状況などによって柔軟に対応してゆかなければならないと思います。
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