コラム

 公開日: 2015-06-19 

建築家との家づくり

□建築家との家づくり
「建築家」という呼び名をよく聞くようになりました。
「建築家」というのは俗称であり、正式な資格の名称ではありません。
法律では、建築物の設計又は工事監理を行うには国家資格である「建築士」の免許が必要と定められています。
必然として住宅の設計・監理を専業とする建築家のほとんどは同時に建築士の資格を持っていると言えます。
「建築家」という呼称は建築の設計・監理において、意匠・構造・設備の全ての分野の主導的に指揮が取れる能力があり、プロジェクト及び遂行する組織を代表する責任能力を持っている建築士で、自称ではなく周囲から呼称されるものだと思います。
「建築家の家」と聞けば、ほとんどの方がまず「おしゃれな家」というイメージを頭に浮かべる思いますが、むしろ他のところに工務店やハウスメーカーの住宅との根本的な違いがあります。
工務店やハウスメーカーは設計と同時に施工(工事)も請け負いますが、価格に占める割合としては施工のほうが圧倒的に大きくなりますので、設計と施工のどちらが「主」でどちらが「従」かといえば、程度の差こそあれ施工が主にならざるを得ません。
あらかじめ規格が決められているハウスメーカーの住宅はもちろんのこと、工務店における設計も、その工務店のいつもの材料、得意な作り方に多かれ少なかれ左右され、純粋に設計を突き詰めることには限界があります。
一方、建築家は施工を請け負わない純粋な設計者として、規格や施工の都合と切り離して、設計を推し進めることだけに専念することができます。
この違いは、本質的に大きな結果をもたらします。
時間を掛け、ご家族のライフスタイルや人生設計に合わせてゼロから設計した家は、そのご家族にとってこれ以上住み易く、何代にもわたり住み続けることが可能なものとなるでしょう。
また、もうひとつ建築家の役割として工事監理があります。
工事監理とは、建て主に承諾を得た設計図面どおりに工事がされているかを確認することや工事予算のコントロ-ルです。
工事監理者は法律で決められた役割ですので、ハウスメーカーや工務店で建てる場合にも必ず任命されますが、ハウスメーカーや工務店の場合は社内で工事監理者を任命する場合がほとんどですので、自社で自社を監理することになり、どうしてもチェック機能が甘いものとなる傾向があるようです。
あくまでもその会社の良心の範囲において監理する、ということになります。
一方、建築家は建て主に代わって、施工に対しての第三者として監理を行います。
職能として建築家が工事監理に手心を加えることはありませんので、工事に対する客観的なチェック機能が働き、工事のミスや手抜きを未然に防ぐことが可能になります。
建築家で住宅を建てる場合の契約形態は、建築家と設計監理契約を、工務店と工事請負契約を別々に結ぶことになります。
□工事金額
建築家の住宅の工事金額の高い低いをお話しすることは難しいことです。
なぜなら、建築家の住宅は一つ一つ建て主の価値観に合わせて設計するため、お金のかけどころが建て主によって大きく異なり、一般的に「あの程度の住宅ならこの位の値段」ということが言えないからです。
ひとつの基準として、床面積30坪ほどの木造在来住宅を大阪で建てる場合を考えてみます。
まず、住宅にはどのような住宅でも等しくかかる費用があります。
基礎や構造、断熱といった住宅の最も基本的な性能にかかわる費用で、これがおおよそ1坪当たり50万円前後というところでしょう。
これが基本ベ-スとなり、建て主の要望を基にした造作や設備などの費用がプラスされるわけですが、その価格に上限はありません。
太陽光発電や24時間空調設備、エレベーターなどの設備機器やプール、オーディオル-ム、防音室などの設備や、大理石の洗面、浴室や茶室などの特殊な仕様が加われば、工事金額は上昇します。
特殊なご要望を除けば、常識的なプラスの工事金額は、1坪当たり10万円~70万円という範囲の中に納まるものとお考えください。
つまり、基本性能と合わせて、1坪当たり60万円~120万円、30坪の床面積ですと、1800万円~3600万円というのが建築家で建てる場合の工事費になります。
また、鉄骨造の場合は基本性能部分を坪60万円~70万円、鉄筋コンクリート造の場合は70万円~80万円としておおよその目安と考える事が出来ます。
なお、住宅の価格に最も影響を与える要素は床面積ですので、当然床面積の大小によって価格は変わりますが、どんなに小さな床面積でも一定の金額がかかる費用項目がありますので、床面積が小さくなればなるほど1坪当たりは割高になり、大きくなればなるほど割安になります。
工事予算総額だけ見ると、ハウスメーカーや工務店と比較してかなり高く感じこともありますが、設計図面の内容と詳細な見積書を比較するとハウスメーカーや一部の工務店の価格表示が「本体価格」のみであるのに対して、建築家の場合は建物と外回りの工事費、建物に固定された照明器具や空調などを含む金額であったりするので、単純な比較はできません
□スケジュール
建築家と住宅をつくる場合の計画期間は建築家によって異なりますが、工務店やハウスメーカーと比較すると、同じ工法であれば最も計画期間の長い依頼先といえます。
一般的な計画期間は、計画の開始から入居まで、約14ヶ月と考えていいでしょう。 以下は一般的なタイムテーブルです。
1基本設計<約2ヶ月>
建築家によって、まず初めに設計監理契約をする人、簡単なヒアリングの後に無料あるいは有料で最初のプランを示し、その後に設計監理契約をする人に分かれます。
最初のプランを示す場合は、その作成に1ヶ月ほどかかる人もいますが、最初のプレゼン案は基本設計の一部ですので、契約のタイミングが違うだけで、基本設計期間には影響しません。
基本設計の期間は平均すると1~2ヶ月ほどですが、完全注文住宅である建築家の住宅は、基本設計が最も重要な工程ですので、建築家あるいは建て主によっては、この期間を1年以上取る人もいます。
幸いに最初のプラン案で希望とピッタリあってしまえば1ヶ月で終わることもあります。
2実施設計<約2ヶ月>
基本設計を元に見積り用および工事用の設計図面を制作します。また、その間に細かい造作や素材、設備、色などを打合せます。
3見積り調整・請負契約<約2ヶ月>
複数の施工会社に見積りを依頼し、提出された見積りが予算内に収まるよう調整を行います。予算調整が終わると建築家のアドバイスの下に施工する会社を決め、工事請負契約を結びます。
4工事期間<約7ヶ月>
工法や面積によって工事期間は異なりますが、一般的な木造住宅ではおおよそ7ヶ月前後です
□建築家の保証
設計内容に関する保障は建築家個人が建築士賠償責任保障制度「けんばい」に加入しておれば保険金の支払いを受けることができます。まずは加入しているかをお尋ねください。
工事内容に対しては、ハウスメーカーでは保証があるけれど、建築家の場合は保証がないと思われている方も多いようです。
2000年4月から施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)によって、すべての新築住宅に瑕疵担保保証が義務づけられました。
品確法による保証は施工者に義務付けられますので、建築家に設計監理を依頼する場合でも、施工を担当した工務店が、引き渡しから10年間、雨漏りや基本構造部分に問題が発生した場合には無償で修復を行わなくてはなりません。
つまり、建築家で住宅を建てた場合にも、法律によってハウスメーカーや工務店で建てた場合と同様の保証がつきますのでご安心ください。
では具体的にどのような流れで仕事を進めてゆくのか見てみましょう。
□建築家の仕事
1:基本設計
設計契約を結ぶと、まず基本設計を行います。
この基本設計の段階は、住宅をつくる中でも最も大切なプロセスといえます。
基本設計では建て主のご要望や土地の条件を踏まえて、コンセプトや間取り、イメージなどの住宅の概要(プラン)を提案します。
もちろん、そのプランで住宅を建てるわけではなく、これをたたき台に、建築家は時間をかけて建て主と話し合い、少しずつプランを修正しながら、建て主にピッタリ合う住宅に仕上げていきます。
最終的に建て主が、プランを了解すれば、基本設計は完了です
2:実施設計
基本設計で完成したプランを基に、見積もりや工事が行える詳細な図面にしていきます。
ハウスメーカーや工務店が書く図面は10枚程度ですが、建築家の場合、50枚以上の図面を書くことも珍しくありません。
3:確認申請
建設予定地の役所に、その住宅が法律に適合しているかどうかを審査してもらい、建築の許可を得ます。
4:施工会社選定のお手伝い
最終的にどの施工会社に工事を依頼するかは建て主が決めますが、建築知識をあまりお持ちでない建て主に代わり、建築家が活躍します。
実施設計が終わり複数の施工会社に見積もりを依頼する場合、建築家は各施工会社から提出された見積書を詳細に検討し、その中から建て主にこれと思われる施工会社を推薦します。
建築家は見積書を見れば、図面の意味を本当に理解しているか、建築家の設計で工事をしたことがあるか、どのくらいの技術を持っているかなど、建て主にはわからない多くの情報を読みとることができます。
金額の安さだけで施工会社を決めることは大変危険ですので、このようないろいろな要素を総合的に判断して、建て主に最終候補を推薦します。
5:予算の調整
施工会社から見積書が上がるまでは、その住宅の本当の値段はわからないわけですから、建築家は今までの経験からおおよそのコストを計算して、建て主の予算内に収まるように設計を進めていました。
実際に見積もりを取ると、経験が豊富な建築家の場合は建て主の予算から1割増くらいの金額が施工会社から提示されることが多いようです。
建築家は建て主に現実の見積もりを見てもらい、本当に必要なものとそうでないものを話し合いながら整理し、超過した分を予算内に収める作業を行います。
6:監理
設計と同じくらい大切な仕事が監理です。
監理とは、建て主が了解した図面通りに工事が行われているかをチェックしたり、図面に表せない細かい部分の仕上げ方などを施工会社に指示する仕事です。
せっかくいい設計ができたとしても、マメで適切な監理をしないと、思っていたものと違う住宅ができてしまうことになります。
監理は、建築家やその所員が実際に現場に足を運んで行い、完成・引渡しまで続きます。

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